古川真人

背高泡立草      

背高泡立草 2024年1月28日( 日)
 大村奈美は、二十年以上も前から使われていない吉川家の納屋の周りの草刈りのため、母の美穂、母の姉の加代子、従姉妹の千香、母の兄の哲夫とともに、長崎の島へ向かう。島の家は、美穂の父の妹内山敬子という老婆が引き受けている。加代子と哲夫は内山敬子の子で、美穂は吉川家の養子になっていた。奈美は使ってもいない納屋の草刈りをするのが不満だ。島には新しい家と古いほうの家があって、古いほうの家にいつ引っ越したのか知りたい。そして、兄妹3人で草刈りをし、娘たちは適当にさぼって帰っていく。
 というだけのストーリーだが、間に吉川家が入る前に住んでいた家族が満州へ行く話、戦争が終わって朝鮮へ帰る途中遭難した人たちを世話する話などが挿入される。家をめぐる歴史が重層的に描かれるわけだが、登場人物たちは何も知らない。何ほどの意味があるのかよくわからない。芥川賞受賞作。