福井晴敏

Twelve Y.O.　2006年12月17日(日)

　入隊予定の若者を見つけて連れ戻そうとして仲間達の暴行を受けた募集担当の自衛官平は、一人の少女に助けられる。理沙というその少女を連れていたのは、かつて事故にあった自分を助けてくれた東馬だった。後日、募集活動をしていた平は夏生由梨と辻井護という自衛官に拉致される。東馬はコンピュータウィルス・アポトーシスⅡとウルマという武器を持ち出して、トゥエルブという名前で米軍にテロ攻撃を仕掛け、沖縄基地から海兵隊を撤退させたのだという。そして、平をエサに東馬からウルマを取り戻すことが目的だと告げる。
　東馬の目的は何なのか、東馬の安全を保障するＢＢ文書、東馬の行動が織り込まれたキメラ計画、ウルマの正体、最後の攻撃目標ＧＵＳＯＨとは？多くの謎が錯綜し、同じ自衛隊の地下組織同士が対立し、米軍も絡んで、次々と謀略が明らかになっていく過程は、確かにミステリアスだ。そして、理沙にとっての最終命令。ただ、これがミステリーの江戸川乱歩賞受賞作というのは少し違和感がある。軍事サスペンスだ。
　日本の戦後体制とか、防衛問題とかにはあまり興味がないし、ややしつこく繰り返されるのでその部分は流し読み。ただ、登場人物のキャラクター、平らにしても、東馬、彼を手助けする元過激派の坂部と妻の優子、特殊任務のために育成された夏生、辻井、理沙。そして、希望の持てる結末であったのが良かった。