藤原伊織

テロリストのパラソル      

テロリストのパラソル 2003年11月30日(日)
 晴れた日の昼、新宿中央公園へ行って陽に当たって一日の最初のウィスキーを飲むのが、アル中のバーテンダー島村の日課だ。そんなある土曜日、すぐ近くで爆発事件が起こり、直前に会話を交わした幼い女の子を救う。この爆発での死者に、なぜか警察庁の公安部幹部と学生運動時代の仲間が二人含まれていた。島村はウィスキーの壜を忘れたことに気づき、焦りを覚える。彼は二十年以上前学生運動で爆発事件を起こし、時効は過ぎているが指名手配されていたのだ。そんな島村の元にヤクザの浅井が訪れて警告し、次の日には爆発で死んだ昔の恋人の娘塔子が現れる。警察の目を逃れながら、浅井や塔子の協力を得て、島村は事件の真相に迫っていく。新宿西口のホームレス、宗教の勧誘、ヤクザ、そしてある一部上場企業が絡んで、どこで結びつくのかと一気に読めた。
 乱歩賞、直木賞受賞作である。関係ないことだが、逢坂剛は中大出の博報堂勤務だったが、こちらは東大仏文出身で電通勤務だ。