円城塔

オブ・ザ・ベースボール 道化師の蝶    

オブ・ザ・ベースボール 2014年5月25日(日)
 ファウルズという名前のとある町では、ほぼ年に一度空から人が降ってくる。よそから流れ着いたおれは、レスキュー・チームに雇われた。野球チームではないがメンバーは9人で、与えられた装備はユニフォームとバット。年中、バットを持って空を眺めている。そして、ついにその日がやってきた。
 最近芥川賞を受賞し、SFも執筆している話題の作家の、文學界新人賞受賞作。少なくとも、もう一つ掲載されている「つぎの著者につづく」は、全くおもしろくないし、全く興味が持てなかった。

道化師の蝶 2015年4月26日(日)
 実業家エイブラムス氏の配下が家賃未払いの部屋で発見したのは、細工道具の山と現行の山だった。友幸友幸は行く先々の国で手芸の仕事をしながら、その国の言語で作品を書いていた。エイブラムス氏は資金と人員を投入して、この人物を追跡した。
 ある章での「わたし」はエイブラムス氏のエージェントであり、ある章での「わたし」は実は女性である友幸友幸であり、エイブラムス氏もある章では男性、ある章では女性とされている。作品の構造を分析していけばおもしろいかもしれないが、つまらない。芥川賞受賞作。
 「松ノ枝の記」は、ある作家の「Branches of the Pine」という作品を「松ノ枝の記」を置き換えて翻訳して送ったところから、双方で作品を翻訳しあうようになる。彼を訪れると姉だという人物がいて、彼は作品の登場人物なのだという。
 どちらも迷路のように作り上げたメタ小説のような作品。知的なおもしろさはあるかもしれないが、素朴な感想としてはつまらない。