堂垣園江

グッピー・クッキー      

グッピー・クッキー 2007年7月9日 (月)
 仕事仲間のアルマンドを銃殺した容疑で収監されたイアンと、日本人の車を盗んだ大学生のラウルは、裁判で無罪を言い渡されるが、その代償にフェルナンドという弁護士からアルマンドのセスナ機グッピーで縦穴に眠っている古代の仮面の探索を強要される。フェルナンドに指示していたのは、旧家の跡継ぎで同じ刑務所に収監されながら特別室で自由に過ごしているエドガーだった。操縦士のイアン、ラウル、それにラウルの恋人アンジーと日本人のケンジが加わってグッピーはオリサバを飛び立つが、ラウルは目的地を自分の故郷チアパスに変える。チアパスは解放軍に支配されていて、拘束された4人は森へ逃げ込む。そして、森の中の小屋で一人暮らす老人と出会う。
 なぜイアンとラウルが選ばれたのか、エドガーの目的は何のか、そしてフェルナンドの思惑。読み進むにつれて、登場人物たちの正体とその関係が明らかになり、意外な因果の糸が見えてくる。メキシコを舞台にした、幻想的でミステリアスな冒険小説とでもいえばいいのだろうか。不思議な作品だ。群像新人文学賞や野間文芸新人賞を受賞している作家だが、作品が手に入らず、今回光文社文庫の新刊でやっと読むことができた。