知念実希人

螺旋の手術室 神のダイスを見上げて    

螺旋の手術室 2018年1月13日(土)
 純正会医科大学付属病院での手術中、出血が止まらず、助手を務めていた冴木裕也の父、准教授の冴木真也が亡くなった。マスコミが医療ミスと騒ぎ立て、裕也の妹真奈美や裕也を不審な男が探りに来た。後日、警察がやってきて、連続殺人事件の被害者の一人が馬淵という医師で、大学の時期教授候補で、冴木真也も候補だったことから関連が疑われるとのことだった。一方、医療ミス騒ぎで入院していた執刀医の海老沢も突然亡くなった。裕也は深夜の血液の検査結果から殺人を疑い、真相を探ろうとする。
 医療ハードボイルドという感じの作品。父と息子、兄と妹のわだかまりも絡めたドラマだが、真相は思いがけない方向へ転がっていく。おもしろかったが、ただの医師がスパイもどきの調査をしたり、襲ってきた連中を撃退したりという、ハードボイルド特有のお約束には違和感を 覚える。

神のダイスを見上げて 2021年8月24日( 火)
 『ダイス』と名付けられた巨大小惑星が地球に接近することが明らかになり、各国の政府は否定するものの、人々は激突を信じるようになっていた。その『裁きの刻』が迫る中、漆原亮の姉・圭子が植物公園の花壇で全裸でナイフで刺されて死んだ。暴力をふるう父から逃れ、そして母が亡くなった後、二人で寄り添って生きてきた美しい姉だった。亮は同級生の四元美咲に頼みごとをする。四元の母は反社会勢力の人間で、四元の存在は学校では『禁忌』だった。四元に紹介された男に、亮は銃を要求する。金は家を出ている父から受け取ったものだ。『裁きの刻』まであと五日、その間に姉を殺した犯人を探し出して殺すつもりなのだ。手始めに姉の親友だった小百合に会い、恋人がいなかったかどうか聞く。
 付き合っていたかもしれないと知った男にいきなり銃を突きつける直情径行ぶりは、素人かよという感じ。犯行の背景は途中で目途が付いていたが、犯人は全く別人だった。ほとんど登場していないのに。クラスで孤立している四元だが、逆に人間関係を冷静に把握していて、亮の境遇にも興味を持っている様子。この子が魅力的だった。