芦沢央 |
罪の余白 | 夜の道標 |
罪の余白 2023年9月16日(土) |
安藤加奈が高校の教室のベランダの手すりから落ちて死んだ。父の聡は妻が亡くなってから、大学での仕事を抑えて加奈を育ててきた。同僚の小沢早苗とともに病院駆けつけると、事故か自殺とのことだった。同級生の木場咲は、名前を偽って安藤の家を訪ねる。安藤は一緒にパソコンのパスワードを探し、日記を見つけた。そこには、木場咲と新海真帆という生徒からいじめを受けていたことが書かれていた。後日、安藤はその生徒に木場咲と新海真帆への復讐計画を打ち明けて、協力を要請する。 学校カーストが事件の発端となるが、何より心理学者であるはずの安藤の異様な行動、咲の手段を選ばない冷酷さがミステリーというよりはホラーという感じがする。早苗のこれまた異常なキャラクターが意外と人間的でほっとできる。野生時代フロンティア文学賞受賞作。 |
夜の道標 2025年5月18日(日) |
暑内で干されている刑事の平良正太郎は、二年前に起こった塾の経営者戸川の殺人事件に専従させられていた。戸川は問題のある児童を個別に指導して、信頼を得ていた。以前指導を受けていた阿久津が塾の前で目撃されて被疑者となったが、その後行方がつかめなくなっていた。惣菜店で働く豊子は、自宅の近くで中学の同級生だった阿久津を見かけて声をかけ、「センセイをころした」と聞くと、家に連れてきて半地下室にかくまった。小学生の桜介は、目の前でバスケ仲間の波留が車にはねられるのを見た。波留は元バスケットボール実業団チームにいた父と二人暮らしで、食事も満足に与えられず当たり屋をさせられていた。波留は猫を追いかけて一軒の家の庭に入り、そこで地下室から顔を出した男と出会う。正太郎はもう一度関係者の聞き込みを始めて、事件の真相に迫ろうとする。 事件が起こったのは一九九六年、そして物語はその二年後。この時代を選んだのは、事件の真相が関係しているからだ。阿久津は逮捕され、波留の事情も明らかになるが、自発的に行動することのない阿久津がどのように殺人を犯したのかは明らかにならないまま。日本推理作家協会賞受賞作。 |