朝井まかて

恋歌      

恋歌 2016年2月19日(金)
 歌人中島歌子が主宰する萩の舎の門下生三宅花圃は、入院した師の書類を整理していて、二百枚以上もある半紙の書きつけを見つけた。そこには、江戸で水戸藩の御定宿を務める宿屋の娘であった登世が水戸藩士林以徳に嫁ぎ、尊王攘夷派の天狗党と諸生党の内乱に巻き込まれ、翻弄されていった半生が綴られていた。
 「恋歌」という題名にあるような恋の物語というよりは、水戸藩と幕末の動乱を描いた時代小説という感じだろうか。中島歌子は樋口一葉の師匠でもあったという。桜田門外の変後の動きも初めて知ったような気がする。興味深い内容の作品だった。直木賞受賞作。