| 朝比奈秋 |
| 植物少女 |
| 植物少女 2025年12月17日(火) |
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「わたしにとって、母は会いに行く人物だった。」美桜の母深雪は、出産の時の脳出血で植物人間になってしまった。美桜は祖母と病院に通い、乳を吸い、胸にもたれて眠り、ご飯を食べさせ、話しかけて、小学、中学、高校と成長してきた。「病室はわたしの庭だった。」 植物人間とはいっても、咀嚼をしたり、顔をいじれば手でよけたりする。美穂にとっての母は、ふつうに生きている時の母を知っている父と祖母とは、おそらく感覚が違う。関西弁ということもあって《不思議ちゃん》に思えて、いかにも女性作家的だなと感じるのだが、作者は現役の医師の男性だ。三島由紀夫賞受賞作。おもしろかった。 |