青木淳悟

四十日と四十夜のメルヘン      

四十日と四十夜のメルヘン 2009年10月2日(金)
 主人公は、下井草の公団住宅に住む一人暮らしの女性。新大久保の事務所へ通って、チラシ配りをしている。チラシは配り切れず持ち帰り、部屋の中はチラシだらけになっている。文芸創作教室やフランス語会話講座へ通っているが、小説は書けず、日記をつけているものの、七月四日からつけはじめて七日で力尽き、また四日から始めるということを繰り返している。そのたびに、買い出しに行くスーパーのこと、事務所の人間、チラシ配りのこと、とディテールの焦点が変わっていく。その間に、講師の作家のことや習い事のエピソードや、チラシに書いているメルヘンのストーリーが挿入される。
 「クレーターのほとりで」は、森を出た人間の男たちとネアンデルタール人の女たちの出会いと、その痕跡をめぐって宗教団体と開発会社が繰り広げる珍騒動。
 「四十日と四十夜のメルヘン」は新潮新人賞、「クレーターのほとりで」とともに野間文芸新人賞受賞作。 ユニークではあるが、いまいち物足りない感じで、おもしろいかといえばそれほどでもという感じ。