安東能明

撃てない警官      

撃てない警官 2013年8月12日(月)
 柴崎令司は警視庁総務部企画課の係長、三十六歳で警部。課長の中田を装った電話で射撃訓練に参加させた、鬱病から回復途中の巡査部長が拳銃自殺し、その責任を取らされて、綾瀬署警務課課長代理に左遷された。偽電話の真相を突き止めた柴崎は、責任を逃れた中田への復讐と本庁への復帰への思いを胸に、綾瀬署で勤務するが、副所長の助川に事件の現場へ連れ出される。
 警察の管理部門を舞台にした短編小説集。管理部門一筋だった柴崎だが、慣れない捜査と推理で組織内で起こる様々な事件の真相に迫る。ただ、最後の詰めが甘く、いつもどんでん返しにあってしまう。出世欲も強く、ちょっと残念な主人公といえるかもしれないが、おもしろかった。収録作の「随監」は日本推理作家協会賞受賞作。