飴村行

粘膜人間 粘膜蜥蜴    

粘膜人間 2012年4月21日(土)
 利一と祐二は、腹違いの十一歳の弟、雷太を殺すことを決意した。雷太は身長百九十五センチ、体重百五キロ、その絶大な力で父親に一ヶ月の怪我を負わせていた。蛇腹沼に住む河童に頼むため、村で唯一河童達と交流がある流れ者のベカやんに教えてもらうことにする。そして、見返りに村の女を要求する河童のモモ太に、兄が兵役忌避して『非国民』となった同級生の清美の名を告げる。実行の日、モモ太の弟の二匹の河童が現れるが雷太の返り討ちにあい、自分たちも殺される寸前、祐二が手斧で雷太の頭を叩き割って井戸を投げ込んだ。一方、清美は憲兵の幻覚剤を用いた拷問を受け、感情が消え、記憶障害を起こしていた。
 日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。暴行や処刑の描写が強烈で、ミステリアスな要素もあまりないし、ホラーというよりは 、作者自らが書いているように、「おぞましいまでのグロテスク・スプラッター・ホラー」。

粘膜蜥蜴 2014年1月14日(火)
 国民学校初等科の堀川真樹夫は同級生の中沢大吉と一緒に、月の森雪麻呂の家に招待された。雪麻呂の家は町に一つだけの病院で、富豪でもあり、町で絶対的権威を振るっていた。父の大蔵は部屋にこもって脳移植の研究をしており、母はしばらく前から行方不明になっていた。雪麻呂の下男は爬虫人で、病院には死体の入った水槽があり、異常な軍人が隔離されていた。雪麻呂の横暴のせいで大吉が死に、真樹夫は死体をバラバラにするよう命じられる。真樹夫の兄、三樹夫は士官としてナムールに赴任し、麻薬王を護衛する任務の最中ゲリラの攻撃を受け、爬虫人に捕らわれる。そこで長老に助けられ、真樹夫の夢の中に入って、大吉の命を蘇らせてもらう。
 グロテスクだが、ストーリーはおもしろい。どこがミステリーなのかと思いながら読んでいたが、最後に謎解きがあった。日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞作。