天野純希 |
桃山ビート・トライブ |
桃山ビート・トライブ 2010年10月28日(木) |
牢人だった父が亡くなった後、掏摸や置き引きを生業としていた藤次郎。歩き巫女の娘で憑巫としての仕事をしていたちほ。増え職人の息子で笛役者にあこがれている小平太。三人は春日大社の勧進興行で、まだ少女の出雲のお国の舞台に魅了されていた。盗んだ三味線の修業をしてきた藤次郎、母に捨てられて女猿楽一座のシテをつとめていたちほ、お国の一座で笛を吹くようになった小平太。そして、アフリカ生まれの黒人で奴隷として日本に連れてこられ、織田信長に仕えた後、堺の貿易商人のもとで働いて、もらった南蛮の太鼓を打つ弥介。この四人が偶然出会い、一座を結成する。見たこともない速さで打つ太鼓、立ったまま奏でる三味線と笛、歌も歌わず踊りだけの踊り手。客も立たせて熱気溢れさせる。 言ってみれば桃山時代のパンクバンド・ストーリー。あっさりと成功してしまうので、物語がどこへ行くんだろうと思ったが、石田三成による弾圧や秀次との確執、阿国歌舞伎の誕生を絡めておもしろかった。小説すばる新人賞受賞作。 |