赤瀬川隼

白球残映      

白球残映 2007年7月15日(日)
 「ほとほと・・・・・・」:雄介は、戦後苦しい家庭を助けるためアルバイトに精を出している中学生。母の年の離れた妹恵子に思いを寄せていた。
 「夜行列車」:<ぼく>は大分から出てきて東京の銀行に勤めているが、東大受験の勉強のため、父が倒れたことにして、会社を休んで駒場寮に寝起きしていた。同じ銀行の野際さんとは、一緒にコンサートに行って食事をする仲になっていた。
 「陽炎球場」:今泉は、春先のローカル球場でのオープン戦を見ることを楽しみにしている。以前同じ会社の実業団チームの選手だった、村沢の活躍を楽しみにしているのだ。しかし、その日村沢はとうとう出場しなかった。
 「春の挽歌」:出歩かなくなった父を神宮のスワローズのオープン戦に連れて行った十日後、修一の父はなくなった。通夜の夜、下関の老人から明日の葬式に駆けつけたいという電話があった。どういう関係の人なのか、どうして父の死を知ったのか、不思議だった。
 「消えたエース」:以前スポーツ記者だった清家は、地方の球場でのオープン戦で、かつて突然引退した投手・春名を見かける。清家は引退の理由を聞こうとするが、春名は不快感を示す。
 最初の2つは、おそらく自伝的な要素のある作品だが、女性への思いが自意識過剰でお下劣な印象。後の3作品は、野球をモチーフに人生模様を描いた作品。まあおもしろく、軽く読める作品集。直木賞受賞作。e-bookoffで入手したもの。