赤井三尋 |
翳りゆく夏 |
翳りゆく夏 2006年11月4日(土) |
東西新聞社人事厚生局長の武藤は、社長の杉野に呼び出された。ライバル週刊誌の「週刊秀峰」が「誘拐犯の娘を記者にする大東西の『公正と良識』」という記事を掲載することになったのだ。抜群の成績で内定した朝倉比呂子は、二十年前横須賀で起こった誘拐事件の犯人で、逃走中に共犯の女と事故死した九十九の娘だった。杉野の命令は、朝倉比呂子を辞退させず入社させることだった。さらに、杉野は社主の命を受け、二年前の不祥事で編集資料室で干されていた梶に事件の再調査を命じる。武藤と梶は当時横須賀支局で事件を取材していた。梶は、当時事件を担当していた元刑事の井上や病院関係者、事件の関係者を探し出して取材していく。そして、いくつかの疑問から共犯者の存在を確信していく。ついに共犯者にたどり着くのだが、最終的な真相は衝撃的なものだった。 犯人が明らかになっている二十年前の事件を、ちょっとした矛盾から隠れた真相を探って行く過程が見事だし、新聞記者の世界とか、登場人物のキャラクターもおもしろい。江戸川乱歩賞受賞作。 |