赤川次郎

東京零年      

東京零年 2018年12月20日(木)
 水沢亜紀は、昼は保険会社の事務、夜は弁当屋で働いていた。身体が不自由で施設に預けられている父の浩介は、かつて反戦運動の中心となるジャーナリストで、検察・警察の弾圧を受け、殺人の容疑をかけられていた。亜紀は、その検察の中心人物だった生田目重治の息子健司が地下鉄のホームから転落したところを救った。施設から浩介が発作を起こしたと連絡があり、駆けつけるとテレビを見ていて興奮していたのだという。ちょうど訪ねてきた元刑事の北村と一緒にその番組のビデオを見ると、そこには父が殺したことになっている、かつての浩介の盟友だった湯浅が映っていた。喜多村は湯浅を探しに出かけるが、検察・警察も喜多村や亜紀をマークしていた。亜紀も健司と一緒に真相を探ろうとする。
 検察や警察がここまでやるかなと思ったが、これは検察・警察が政権のもとで強大な権力をふるう近未来のディストピアを描いた作品だった。若い二人が活躍したり、正義に目覚める人たちが現れたりするのは、赤川次郎らしいのだろうか。楽しく読めた。吉川英治文学賞受賞作。