相沢沙呼

medium 霊媒探偵城塚翡翠 invert 城塚翡翠倒叙集    

medium 霊媒探偵城塚翡翠  2022年1月29日(土)
 推理作家・香月史郎は、悪夢を見るようになった大学の後輩倉持結花の頼みで、一緒に霊媒師に会いに行く。暗幕を張った薄暗い部屋にいたのは、息を呑むほど美しい城塚翡翠という若い女性だった。その場の空気を感じたいという翡翠と一緒に結花の部屋をたずねると、結花は殺害されていた。香月は、翡翠の霊感と自身の推理で事件を解決する。
 翡翠と香月のコンビで二人に降りかかる殺人事件を解決していくが、別の連続殺人事件が並行して進んで行く。一種掟破りの大どんでん返しだが、途中で何となくそんな感じがして最初からパラパラめくってみてもそれらしいほのめかしは見当たらなかった。本格ミステリ大賞受賞作。

invert 城塚翡翠 倒叙集  2024年1月7日(日)
 「運上の晴れ間」:ITベンチャー企業のエンジニア狛木繁人は、社長で小学時代から付き合いのある吉田を殺害した。自分のプロジェクトを他社へ売ろうとしていたからだった。ITを生かしたアリバイは完璧だった。マンションの隣に城塚という女性が越してきて、朝カフェで会うようになる。
 「泡沫の真理」:小学校教師の末崎絵里は学校に盗撮カメラを仕掛けている元校務員の田草を窓から落として殺した。侵入しようとして転落した事故死とされたが、白井奈々子という若い女性がスクールカウンセラーとして常駐するようになり、事件のことを探るようになる。
 「信用ならない目撃者」:元刑事の探偵雲野泰典は、自分の不正を訴えようとしている従業員の曽根本を、自殺に見せかけて殺害した。警察での経験を生かした犯行にほころびはないはずだったが、向かいのマンションの窓に双眼鏡を覗いている女性の姿があった。会社に刑事と一緒に城塚翡翠という霊能力者で警察に協力しているというう噂を聞いたことのある女性がやってきた。雲野は、目撃したという涼見梓という女性に探りを入れる。
 「刑事コロンボ」のように最初に完璧な殺人を見せて、犯人にゆさぶりをかけてアリバイやトリックの隙を探るという倒叙推理小説。城塚翡翠のキャラクターにはまさにふさわしいと言える。最初の作品では神秘的で初々しい女性として描かれていたが、最後に正体がわかってしまったので、この作品では最初から地のままだ。 そして、最後の「信用ならない目撃者」には、読者へのもう一つのトリックが仕掛けられている。おもしろかった。