相場英雄

震える牛      

震える牛 2014年10月5日(日)
 警視庁捜査一課継続捜査班の田川信一は、二年前の「中野駅前居酒屋強盗殺人事件」の再捜査を命じられた。外国人窃盗団という筋読みで行われた捜査は成果を上げず、迷宮入りしていた。聞き込みを始めると、重要な目撃証言が見過ごされていた。たまたま店に居合わせて殺された二人は、別々の客だが、同じような時間に待ち合わせとして予約していた。最初からこの二人の殺人が目的だったと読んだ田川は、二人の接点を探す。一方、元経済新聞の記者で今はインターネットメディアに努める鶴田真純は、全国に巨大ショッピングセンターを展開するオックスマートの問題を執拗に追っていた。
 巨大流通企業のスクラップ・アンド・ビルド戦略による地方の地元商店街のシャッター街化を背景に、安価に製造される加工食品の安全性の問題から、二つの追跡が焦点を合わせていく。社会性もあるが、単純にミステリーとして読んでもおもしろかった。