阿部夏丸

泣けない魚たち      

泣けない魚たち 2008年7月22日(火)
 「かいぼり」:けんじは、あきらからかいぼりに誘われた。七月の校庭。明日は日曜日。かいぼりというのは、小川を土のうなどで堰き止めて、水をかい出してしまうという魚取りの方法。まさあきとゆうじを誘って、町長の納屋から土のうを作る南京袋を盗みだすことになった。
 「泣けない魚たち」:春休みの終わり、僕は矢作川でフナやウグイを取っているこうすけと出会った。こうすけは転校生で、学校では誰とも口をきかなかったが、放課後は僕と森のかくれがで いろいろ話した。長良川の川漁師のおじいさんと一緒に暮らしていたこうすけは、釣りが得意だった。僕とこうすけは、ザリガニを食べたり、木の上に見張り台を作ったり、金魚を盗んだりという冒険 で夏休みを過ごした。
 「金さんの魚」:「なまず屋」という古ぼけた食堂の、金さんというおじいさんに甘いトマトをもらってから僕たちは友だちになった。金さんがナマズを分けてもらっている植木屋の浦さんが梯子から落ちて魚釣りに行けなくなり、僕がナマズを釣ることにした。お父さんに言うと、お父さんも子供の頃金さんや浦さんにナマズ釣りを教わったという。
 作者が生まれ育った矢作川を舞台に、小学生の子供たちが川で遊び成長する物語。「かいぼり」では開発、「泣けない魚たち」では別れ、「金さんの魚」では戦争という、大人の世界を垣間見ることになる。夏休みに読むには最適な作品だった。坪田譲治文学賞、椋鳩十児童文学賞受賞作。