青……
空のイメージ……
青い空……
私は空を渡る一羽の鳥だった。
緑……
緑のイメージ……
緑の草原……
私は太陽にあこがれる一輪の花だった。
赤……
赤のイメージ……
私は……
私は誰だったのだろう?
何として生まれ、何として生きていたのだろう?
何も思い出せない。
ただ、覚えているのは、真っ赤な炎に包まれ、命を落としたということだけ。
また、イメージは青に戻る。
深く、暗い、限りなく黒に近い青。
私は物言わぬ、一匹の貝だった。
とても静かで、何もない日々。
それはとても安らかで、何もない、無に等しい時間。
何もない……
何もない……
気がつくと私は、ジャングルにいた。
人として、兵士として。
銃声が響き、すぐ隣にいた誰かが頭を吹き飛ばされて倒れた。
また、爆音が響く。
今度は地面がえぐられ、吹き飛んできた土砂や石が体中に突き刺さる。
痛い。
突き刺さった傷口から、血が流れ出した。
血……
赤い、赤い血……
そのとき、突然現れた光が私の目を貫いた。
赤い光。
人の焼ける、嫌な臭いが鼻をつく。
誰かが叫び、火だるまになりながら駆け抜けていく。
炎が撒き散らされ、ジャングルに燃え広がっていく。
炎が、炎が……
空気さえも燃えつくさんと、荒れ狂う。
体が震えた。
魂に刻み込まれた記憶が呼び起こされる。
死。
死の恐怖。
嫌だ! 死にたくない!
恐怖に駆られ、ジャングルの中を逃げ出した。
だが、逃げても逃げても、見えない死の恐怖が追いかけてくる。
ドンッ。
腹に重い衝撃が走った。
……どふっ
喉の奥から血の塊がこみ上げてくる。
倒れて初めて、撃たれたのだと気づいた。
そう気づいた瞬間、意識は闇の中へと落ちる。
白……
白のイメージ……
真っ白な光。
暖かな、柔らかい光。
私は、光になった。
死んで、魂となってG・Sに還ってきた。
私は、今度はなにに生まれ変わるのだろうか?
できれば、私はずっとここいつづけたい。
ここにはたくさんの仲間がいて、とても居心地がいいから……
だが、いつかは生まれ変わらなければならない。
輪廻は繰り返す。
そういう運命だから。
ならば、私はもう一度貝に生まれ変わりたい。
生きることについて、私という存在について静かに考えたいから。
光も、死の恐怖も届かない、深い深い海の底で……