POTENTIAL


ここはツクバサーキット本コース。
今、1ヘアを全開で立ち上がろうとしている。
ここはあまりアウトに膨らむと、カントが変わり、いきなりケツが流れるから踏みすぎは禁物だ!!
7000、7300、7500「ギャァァァッ、グゥォォォーン」軽くホイールスピンしながら、3速へシフトアップする。
すぐにダンロップへのアプローチ体制を整える。
タイムを削るには、ここの進入がポイントだ!!
1ヘア突っ込み
最近サーキットを走ることもあるが、特に「タイムだけ」にこだわっているわけではない。
自分自身の技術向上には、サーキット走行も「アリ」だと思っている程度だ。
世間では、「分切り」を中心に熱くなっているようだが、オレに言わせれば、「相対比較」しても 意味がないと思う。
もちろん、純粋に「凄い」とは思うのだが ・ ・ ・
レースなら同じレギュレーションの中で、同時に競い合って「優劣」を 争うから、明確にタイム差=「速さ」だから理解出来る。
でも改造車(チューニングカー?)なら、極端な話し、「パッド交換車」と「ドンガラ・軽量・ワイドボディ」が「速さ」を競っても 意味が無いと思えるからだ。
つまり、「相対比較」ではなく、自分自身との「絶対比較」であるべきだと思う。
サーキットでは「速い」のが「偉い」と思い込んでいるヒトが多く見受けられるが、一般人が走る、「走行会」では、「?」である。
ここで強調したいのは、タイム(速さ)を否定しているのではない!!
タイムとは、技術の裏づけがあって、初めて意味を持つということだ!!
そして数秒後に、この事を思い知らされることになる!!


「ギュゥゥッー」ブレーキングからリリース、右にステア!
「ギュゥッ」横Gが掛かる!!軽くスライドしながら、頭をクリップへ向ける。
セッティングが出ていれば、ブレーキングを残して、更に突っ込めるのだが ・ ・ ・
現状でトライすれば、おそらくスピンするだろう!!
リアサイドから
アウト側、車体1台分を残し、アクセル全開!!
「ギャオォォォー」タービンが叫ぶ!!5000、5500、5800、タコメーターが上昇する。
一番の難所だが、ここをフラット・アウトで抜ければ ・ ・ ・ 「?」あれは!

「キュイィィィー」Gが抜ける!!いっきに横を向いた!!
「エッ!」反射的にフルカウンターを当てるが、間に合わない!!
「キュィィィー ・ ・ ・ 」さらにアングルがついていく!!
「だめだ!!立て直せない!!」ハーフスピン状態で、コースをなめて行く!!
フルブレーキングに移行するが、愛車は横っ飛びだ!
Rに沿ってかなり滑るが、止まらない!!
真横を向きながら、ガードレールが近づいてくる!!
「だめだ、飛び出す!!」「ザァーッ、ジャジャ、ジャシャーン」
土けむりを上げながら、右フロントをヒット!!衝撃が襲う!
その瞬間、弾かれたように回り、右リアを当ててさらに半回転!!スポンジ・バリアを吹っ飛ばして止まった!!
室内は土けむりが充満している。
「やっちまった!!」しかし、それほどショックは無い。頭はクールだ。疑問ばかりが浮かぶ。
エンジンを切って、ゆっくりと降りながら、振り返って見た。
かなりの飛距離だ!!50mは滑っているだろうか?ブラックマークのスタートはガードレールに隠れて見えない! 2ヘアの進入ポイントまできてしまった!!

退避しながら思い返す。あの「白いライン」を踏んだ途端に流れてしまった!!
あれは、「砂」か「オイル跡」だったのか?!油断した!!
どちらにしても、自分のテク不足を恨んだ。
「いや、 ・ ・ ・ 違う!」自分には、そこまでの「テク」は無い。
おそらく、あの「ライン」を踏んだ時点で結果は同じだったろう。
全開ではあったが、まだ舵は軽く当てている程度での、テールプッシュだったが、これは、油断じゃあない!!

これまでは、ある程度タイムが出てきて、走るたびに短縮していた。
確かに上を見れば、まだまだだが、ノーマルボディや中古タイヤ、不利なファイナルからすれば、なかなかなタイムだと思っていた。
しかし、本当に自分は「速い」と言えたのだろうか?
いや、その「速さ」(タイム)に見合ったテクニックを持ち合わせていたのだろうか?
「自信過剰」と「錯覚」ではないだろうか?
おそらく何回もコースを走ることでライン取りを覚え、スピードに馴れることでクルマの本来の性能を出せるようになっただけでは ないだろうか?
確かに、クルマの本来の性能を引き出すことは、テクニックの一部と言えなくはないが ・ ・ ・
いつの間にか、周りのクルマと比較していなかっただろうか?
失礼な言い方だが、同じテクニックのドライバーが、リッターカーとGT−Rで走れば結果は見えているように、クルマの性能に 「載せられていた」だけだったのではないか?
本当に技術の裏づけのもとで、アクセルを踏んで「制御」していたのなら、こんな結果にはならなかったと思う。
当たり前のことだが、アクセルを踏めばスピードは上がり、ブレーキを踏めば減速する。
しかし、そのスピードを「制御」していたとは言えないだろう。
一度「破綻」すれば、一瞬で自分から解き放たれ、吹っ飛ぶような危うい状況だったのだ!!
例えれば、昨日免許を取った初心者が、C1を飛ばすのと似たようなものだった!!
限界を知るまでは、何事も無いが、超えた途端にキバをむく。その瞬間は、「運を天に任せる」しかないようだ。
こんな不安定な状態で、今まで走っていたとは呆れるかぎりだ!!


気になる愛車の状態だが ・ ・ ・
バンパーの右半分が、カナードごとブチ割れて無くなっている。
右リアフェンダーも、ぼっこりへこんでいる。
この2箇所以外は、まったくの無傷のようだ。
アレだけ回ってヒットしたのに、うまく当たったものだ!!
おそらく、ナナメに擦れるように当たったんで、うまく衝撃が逃げたんだろう!
足回りを直撃していなければいいが ・ ・ ・
なにかを得るためには、必ず代償を払わなければならないが、かなり痛い出費になりそうだ!!
そして、本当の「テクニック」を身に付けるには、まだまだ時間がかかりそうだ。



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