追撃!シルバーアロー


今日は、NEWウイングの効果を試すのが目的だ!
これまでは、標準の角度で使い続けてきたことで、効果はカラダが覚えているだろう。
本来ウイングの効果は、ブレーキング時やコーナーでの安定感を確認すべきであり、このようなテストは「邪道」だと思うが、直線で 踏むのが一番余裕をもって認識できるので、こういうのも「アリ」かな?と自分では思っている。
今回は、数段階ある角度調整機能を使って、どれだけ効果が変わるか試そうと思っている。
もうセットは済んで、2段目に上げてある。
なぜ1段づつ試さないのかというと、2段目で体感した後1段戻すと、違いがはっきり理解出来るからだ。
これは、車高長のセットを出すときに判ったことだ。時間は掛かるが、確実に理想に近づく。

オレは、装着した機械は全て限界まで使って試さないと気がすまない。例えばエンジンはレブまで回すし、スピードならオーバートップ でサージングするまで踏み込む。
それが「機械」(パーツ)に対する「礼儀」だと思っている。

せっかくの潜在能力を、眠らせておくのはもったいないし、第一に変更した意味が無くなるからだ!
結果的に、期待にそぐわないこともあるし、破損するかもしれない。
だからパーツの品質にはこだわるし、些細な異常にも敏感になる。
でも、そこまで「行かなければ」判らないことが多すぎるようだし、判った時には次の ステップに上がっているんだと思う。
チューニングとはこういうもんだと思っている。



入場チケットを受け取り、東京方面に加速する。距離にすれば30キロ強か?これだけあれば、十分だろう!
5速3500回転も回したら、すぐに変化が感じ取れた。
そこからさらに踏み込んでいくと、比例するように押し付けられるのが伝わってくる。
翼端面積が広いこのウイングは、レースで使用されている形状だけあって、思った以上の変化が得られる。
特にFDのようにフェンダーが張り出していると、サイドを流れる空気を捕らえやすいようだ。
これは、走り出せばすぐに確認できるほどだった。

すぐに、最初ののサービスエリアでリセッティングしようと思ったとき、かなりのスピードで近づくクルマがミラーに映った。
パッシングしながら抜いていったテールは、ひと目で判るブリスターフェンダーのシルバーの マシンだった。
「ウオゥン、ギャギャギャー」無意識に、3速までシフトダウン、タコが6500まで跳ね上がる!
タービンは金属音を響かせて、喜んでいるようだ。すぐに4速へ、しかし相手も踏んでいるようだ。距離が詰まらない!!
「これは、無理か!」最初の差が致命的か?いや逆に離されている。数百m先のテールランプに届かない!!
5速へ叩き込んで、さらに加速する!
テールランプが点灯?いっきに縮まる!!
一般車の固まりに追いついたためだ。

いつも不思議に思う。深夜でクルマがバラけているはずが、なぜか1キロ位の「固まり」ができて密度だ高い。そしてその前後に空白ができるのが ・ ・ ・
「ウオゥーーン」軽いブレーキングと同時に4速にシフトダウン!目の前にグラマラスなテール、 993のターボだ!
すると、勘違いしたのか、譲ってきたので前に出ると、後ろにピタリと付かれた。
そこで相手も判ったようで、6000でパーシャル、この速度で固まりから抜けるまでガマンする!!

「ブゥォン、、ブゥォン、、ブゥォン ・ ・ ・ 」かなりの速度差で、一般車を追い抜く。
おそらく、かなりの衝撃が伝わっているだろう。申し訳ない、巻き込まないことを祈るだけだ。
オレは一般車を追い抜くとき、連続している場合は「ハイビーム」で存在を伝える。1台づつなら無灯火で近づき、相手に気づかせない うちに、いっきに抜き去るようにしている。
どちらも一長一短だが ・ ・ ・

視界が開ける。「クリアだ!!」アクセルを踏み抜く!!
タービンの金属音が高まり、マフラーから黒い排気を吐き出す!
一瞬50mほど引き離す。しかし、すぐに後ろに引っぱられる感覚だ!スリップストリーム入られた!!
見る見るうちに接近してくる!ほとんどテールtoノーズだ!
「ギャーン、ウォ、ギャギャーン」7500、5速にシフトアップ、踏み込むが離せない!!
手に汗がにじむ。完全な直線、明らかにパワー負けしている!
ウイングの効果が今は恨めしく思う。普段ならここまで追い込まれないだろう!!
このままでは、振り切るどころか、逆にやられちまう!!
しかし、真後ろに張り付かれるのは他の意味で気分が悪い!
それは、相手は自分のテールしか見えないだろう。やむを得なくブレーキを踏んだり、回避する場合、大丈夫なのだろうか?
相手が「左足ブレーキ」の名手でもあれば、良いのだが ・ ・ ・
それと同時に、うれしくなった。
おそらくあのターボ、オレのリヤタイヤが巻き上げる砂塵をモロに浴びて、フロント回り からバチバチ音をたてているだろう。
愛車を痛めつけても、アクセルを戻さない(せない?)、こんなヤツは久しぶりだからだ!!


昔の高速バトルは、「追い」ばかりだった。
後ろから相手を伺い、けん制する方が楽だったし、隙を見つけて前に出れば、たいがいのヤツは戦意喪失するからだ。まあ、フロント まわりはボロボロになるが ・ ・ ・
最近は、「逃げ」ばかりだ。
前方は勿論、相手の位置関係を把握するプレッシャーや神経をすり減らすが、自分で「切り開く」感覚や、自分のラインをトレースする だけの相手が楽しくてしょうがないからだ。


いまブーストは1.15キロを指している!!
ロータリーとしてはハイブーストだろうが、まだ上げられる!
しかしセットするタイミングが ・ ・ ・と思案していると、次の「固まり」に追いついてしまった。
ゆっくりとアクセルを抜いて、5000回転まで落とす。同時に「固まり」に突っ込む合図で、「カラ」ブレーキを2回送る。
「運がいい。」あと数秒踏み切っていたら、確実にやられていただろう!!
このタイミングで、ハイモードの1.25キロにセットしてやる!!
掛け値なしの、450馬力をしぼり出すだろう!
オレはグローBOXのブースト・コントローラーを「ハイモード」に切り替えた。
「ハイモード」で踏み込むのは久しぶりだ!
その間に、ターボが前に出ていた。思わずつぶやいた。「今度はこっちの番だ!!」
相手も判っているようで、ここでは全開にはしない。
4速にシフトダウン、5500回転をキープ。これ以上は踏めない。フロントの接地感があまいからだ。
これ以上回すと、もしもの場合回避できないだろう!
しかしトルクバンドに乗っている。いつでも臨戦態勢だ!!
空力的に不利だが少し車軸をずらして、「前の前」をうかがう。
「クリアが近い!!」そう思った瞬間、「ウオン、グォッドドドー」水平対抗独特のサウンドを響かせ、シフトダウンの猛烈な加速 を見せ付けられる。テールを沈ませ、強烈な加速だ!
一瞬遅れたが「これからだ!!」今度は立場は逆転だ!!
アクセルを踏み抜く。スリップとハイブーストのおかげで車速の伸びが違う!!

夜景が飛ぶ!!スピードメーターがまるでタコメーターのように上昇していく!!
「クオーン、ウオゥ、カゥオーン」2台のエキゾーストが重なり合う!!
心地よい響きだ!!気持ちが高ぶる!!
ターボのテールを「つらぬく」、と思わせる加速で迫る!!
ギリギリで左にステア!!ターボのウイングをかすめるように、左へ出る!
「バッ、ブバババァー」空気の壁がぶち当たる!!失速するが、そのまま半車身リード!!
「よし、このままFDの空力の良さを活かせば行ける!!」同時に5速へシフトアップ!!
しかし、そうと思った瞬間、ターボは素晴らしい加速を見せてジリジリと並んでくるではないか!!
「なっ、なんということだ!!」6000回転、最大ブーストを指している。
それでも追いつかれたのだ!!
真横に並んだ!「グオゥーン、ゴゴゥーン」ヤツはここでシフトアップしている?!
6500回転、タコの上昇がもどかしい!「もっと早く回れ!!」思わずオレは叫んでいた!右足に力を込める!!
6800、7000、7200、しかし虚しく離されていく!
「駄目だ!」ヤツは50mほど先にいる!
上での伸びが違いすぎる。愕然とした。もう追いつけない。完敗だ!!
ゴールが近づいてきたが、ヤツは全開のままだ。オレはゆっくりアクセルを戻した。


オレは料金を払いながら考えていた。
993ターボのオリジナルは、KKKタービンで過給された空冷水平対抗3.6リッター、408PSで54キロのトルクを絞り出し、 6速MTで4輪に伝達している。
谷田部では、300キロ近い記録を出したと思う。
オレのFDはトルクは48キロだが、馬力は上だろう。
5速にシフトアップしてからの伸びが違うことから、つながりが悪かったのか、回しきる頃には離されていた。
この辺りが敗因か?
まあ、ポルシェの馬力表示は、「最低保証馬力」というから実際にいくつ出ているか予想つかないが ・ ・ ・


このポルシェの水平対抗エンジンは、最近になって水冷化や、ツインカムが導入されたが、それでもマウント位置やボクサーエンジン にこだわっている。
世界の主流がV型や直列だと考えると、明らかに亜流だろう!
ひとつのことを熟成することや、こだわりにかけてはマツダのロータリーにかける「意地」と同等かもしれない!!
この主流に迎合しない、一本筋が通っているところも、ポルシェの魅力のひとつかも知れないな!


しかしどんなヤツがドライブしていたのだろう?
そんなことを考えながら、下道を流しているとラッキーにも先ほどのターボが信号待ちしているではないか!
クルマをはさんで、斜め後ろで熱視線を送っていたのに気がついてくれたのか、振り返って手を振ってきた。
「おお!」このヒト知っているよ。メガネがチャームポイントで、ドラテク教室を開催してたりするヒトだった。



LIVE OF FICTION

TOPページ

Since 2003.1.18
Copyright (C) 2003 Kyasui,ALL rights reserved.