Confidence


そこは、今まで数え切れないほど周った、オレが一番好きなコーナーだ!
まぁ、実際にはコーナーというより、分岐点でしかないのだが ・ ・ ・
魅かれる理由は、ここは2車線しかないが、4速全開で回れる数少ない高速右コーナーだからだ。
ここで姿勢を崩せば、どんなヤツでも立て直す間も無く、張り付くだろう!それは確実に廃車を意味する。
ここは、それほどスリルに満ちた空間なのだ!!

しかしオレはこれまでの経験値から、このコーナーは誰にも負けない「自信」がある!!
突っ込みで並びかけて、ラインを交差してパスすることもあれば、立ち上がり重視のコーナーリングもある。
バリエーションは他にもあるが、一番やばいのは、アウトやインに関係なくSideバイSideで突っ込んで、出口まで並んでいれば 絶対に前に出る自信がある。
まぁ、これは圧倒的にパワーで負けているか、よっぽど相手のウデを信用していないと使えない手だが ・ ・ ・
ここでパスされたヤツらは、みな戦意喪失するのか、その後に続く長い直線では張ってはこない。

そこに至るまでの2車線の直線、いやこの速度では決して直線とは思えないが ・ ・ ・
ここは、右に黄金のオブジェ、左の川岸にそびえるネオンがとても綺麗で、流して走るときはオレの気持ちを和ませてくれる数少ない場所だ。
そこを3速、4速を使いながら、スラロームを踊るのが楽しい。
ここはかなり路面が荒れている。「ダン、ダン、ダン」と継ぎ目を超えるたびに衝撃が走る。
路面との対話に集中していないと、いっきにブレークしてしまいそうだ。
オレはここでは、力でねじ伏せるより、リズムを重視する。そうしないと、少しづつズレてきて、最後に破棄してしまうだろう!
しかし、この突き上げはボディに厳しい、補強していないとすぐにヘタリそうだ。

ある夜、いつものように、華麗なダンスを舞いながらアクセルを踏んでいた。
いや、少し違うのはナビがいるくらいだ。
今日はクルマが少ない、久々に4速ホールドで回し切れそうだ。
最後のコーナーらしき箇所を過ぎた。「ギャーン、ギャッギヤーーン」3速から4速へシフトアップ、あとは例のコーナーまで踏み切る だけだ。
いつも感動させられる。この透き通るように回る「エンジンフィール」はステアリングを握らないと判らないだろう!
おそらく隣のナビは、タービンの金属音にかき消され、見えていないと思う。
今日は、それらしき獲物と遭遇しない!このまま走りに集中できそうだ!
例のコーナーが迫る!!
ここでは真っ先に出口の合流先を見る。もしも渋滞していれば、アタックはここで終了だ!コーナーに入ってからでは、ブラインドに なって見えないからだ!
「よし、クリアだ!!」
「ギャーン(!)、ウオォン、ギャォーーン」 4速フルスロットルからフルブレーキング、3速へシフト ダウンする。
ここではインにノーズを向けない!すぐにインに向けると、出口のラインがきつくなり、クルマが行きたい方向にしか、行けなく なるからだ。アウトギリギリまで粘って、一瞬息を止め、ゆっくりと右へステアする!
いっき横Gが襲ってくる。うまく路面のうねりを吸収しないと、ポンポン跳ねて制御不能におちいってしまう。
コーナーに入ってすぐに4速へアクセル全開、常識では考えられない行為だが、慣性でノーズがさらにインへ向く。
ブーストの針が跳ね上がる!「グゥウオーーン、キュルルルゥ」エキゾーストノート に混じり、スキール音が響く!!アクセル全開のゼロカウンターだ!!
視線はコーナー出口へ向けるが、コンクリートの壁がなかなか途切れない。永遠に続くのかと錯覚してしまう。
ここを抜けるのは、短いようで、とても永く感じる瞬間だ!!
その間にも、微妙なステアリングワークを欠かさない。
ようやく、合流車線が見えてきた。しかしそこで目に入った光景は?!
まるで立ちはだかる「壁」のような大型トレーラーが、合流車線をゆっくりと走行している ではないか!!
「やばい!!」 体が一瞬こわばった!!「このままでは、「側壁」かトレーラーに突っ込んじまう!!」
逃げ場はトレーラーの鼻先にねじ込んで前に出るか、後ろに回り込むのかどちらかだ!!
一瞬の判断で、「前」を選ぶ!!同時にキャッツアイギリギリまで右によせて、アクセル全開だ!!
「絶対に抜けてやる!!」思わず叫んでいた!!
クラクションとハイビームも忘れない。トレーラーが気づいてくれれば「御の字」だからだ!!
みるみる迫る左のトレーラー、右の「側壁」、「息苦しい!」しかしもう引き返せない!
「だめだ、パワーが足りない!!」キャッツアイに載せて、行けるか?!
「バダッバダッバダッ」凄まじい衝撃が愛車を襲う。「側壁」が目の前だ。「ビューワォウーー」引き裂く風切り音が鳴り響く!!
トレーラーまであと十数メートル、接触したらただではすまない!!ナビに衝撃にそなえろと怒鳴る!!
左に「動く壁」がどんどん近づいてくる。
「だめだ、前に出れない!!」覚悟を決めた!!「ギャイーーーン」
トレーラーの ブレーキが響き渡る!!「ブゥオォォーー」もの凄い風圧が襲ってきた。車体が振られる!!
トレーラーのノーズに突っ込むかと思われた瞬間、急ブレーキをかけてくれたのだ!
おそらく数センチの世界だったと思う。抜けられたのだ!!助かった!いや、生かされたのだ!

この経験で、これまでのテクニックに対する「自信」は砕かれた。そして気づかせてくれた。
これまでは単に「運」が良かっただけなのだ。
「自信」だとうぬぼれていたことは、実は周りの環境に助けられていただけなのだ。
自分のテクニックだけではどうしようもならないことを痛感させられた。
今回も「運」が良かったのだ。こんな危険を犯しても無事だったのだから、「運」がいいとしか言えないだろう!
テクニックで避けられた訳では、決してないのだ!!

翌日、愛車のダメージを確認した。
「良かった、傷ひとつ無いようだ!」 でも、ホイールバランスは気になるところだが ・ ・ ・
「オヤッ、これは?」 ナビ側のドアグリップが折れているのを発見した。
なるほど、例のコーナー飛び込みのシフトダウンで、微かな音はこれだったのか!!
しかし、このクルマ、スポーツカーなのだから、ナビだって「スポーツ」を味合う権利があると思うのだが ・ ・ ・

LIVE OF FICTION

TOPページ

Since 2003.1.18
Copyright (C) 2003 Kyasui,ALL rights reserved.