吠えるFerrariサウンド


今日もよく走った。フューエルメーターの針が最下位のメモリを指そうとしている。
しかし、セブンというクルマは燃費が悪いと思う。乗り方も悪いのかもしれないが・・・
正確に測ったことはないが、トリップが300キロを超えるたのは、一度リセットし忘れた時くらいである。
回していると、2キロくらいまで落ち込む。気持ちも落ち込む。
「ロータリーに乗っている人は燃費なんて気にしないよ!」「その見返りは十分あるから・・・」とよく聞く。
自分もそう思う。一時の快楽のために、ついついアクセルを踏み込んでしまう現代社会の典型的な病におかされている。
しかし、大して恵まれない自分には、その代償として、酒もタバコも吸わない。欲しいものも我慢する。すべてガソリンへ代わっていく。

こんな深夜に開いているGSなんてあまりないだろう。なんとか、いつも入れる出口までもたせないと・・・
今、高速湾岸線を西行きに向かっている。ガスも空なら、財布も軽い。途中で降りるわけにはいかない。
エコランに徹しないと着けないだろう。
ナビシートでは、今日の出来事を、身振り手振りで一人でしゃべり続けている。
「いい気なものだ、こっちの気も知らないで・・・」
この時間帯、アクセルを踏めないのは、苦痛以外なにものでもない。
5速オーバートップ、2500回転で巡航だ。「プラグやエンジンに悪いだろうなぁ〜」
「でも、もう交換時期だから・・・」と自分を納得させている。
そしてこのまま無事に着くと思っていた、数分後までは・・・

数百メートル先に、ゆっくりと白いクルマが流している。この距離でも明らかに低く、ワイドボディなのが判る。
「ムッ、ムゥ、あれは?!」ナビシートに目を向けると、気が付いているようだ。目を輝かせている。
アクセルをほんの少し踏み込んで近づく。特徴のあるテールが近づく。2メートル近いワイドボディ、「テスタロッサか?」
「いや、違う、後継車の512TRだ!!」
たしかオリジナルはV型12気筒、4942CC、6750回転で425HPを絞りだす、かなりハイスペックマシンだ!!
よくフェラーリには、「フェラーリRed!」と言われるが、 このオールWriteなカラーはもっと似合うと思った。
そしてテールにそびえ立つ、スポイラー?いや、ウイングかな?、これは。
少し厚めの、初めて見るタイプのウイングが、純正のように付いている。
巷では、「外装をいじるのは邪道だ!」といわれているフェラーリを、美しくデコレートしているのがうれしくなった。

「クゥオ、オオオオオーン」そして、この特徴のあるエキゾースト・サウンド!!この512TRもマフラーを交換しているようだ。
不思議である。フェラーリはメーカーとしてサウンドまで調律(チューニング)しているのだろうか?
とても心地よく聞こえる。
最近のクルマは、排気系を換えると音質が変わり、個性を主張してくる。それは、雑音となる。あのポルシェでもそう感じる。
でも世界で1メーカーだけだ。排気系を換えても官能的な音質を響かせ続けるのは、フェラーリ位しか思いつかない。
あのサウンドの源は、高剛性のシリンダーから生まれるのか?
国産の性能は世界最高レベルにあると思うが、気持ちを高揚させるサウンドは響かせない。
サウンド=排気音を「デシベル」に置き換えて、上限値を超えない音量に落ち着けることしか考えていないうちは、世界で羨望の 対象になるのは難しいだろう。

そんなことを考えながら、後ろに付いたり並んだりして、失礼と思いながらジロジロ見ていた。
「アッカンベーだッ!!」、「エッ??、ナッ、ナニしているの?」とナビに聞く。
「だって、セブンのほうがカッコイーし、速いんだから本気を出してもらわないと!」
ウオォー、なんということをするんだ!!でも内心は少しうれしく複雑な気分であった。
できれば、見ていないことを切望するが・・・左ハンだし・・・
「クオン、カオオォーン」涙が出そうになった。シフトダウンして加速して行く512TR。
隣を見ると、やっぱり目がうながしている!
「ウオォォン、グオゥオーン」すかさず3速にシフトダウンしてアクセルを踏み込む。
同時に、カラ吹かしを一発入れて、カブリ防止を忘れない!!
「カァーン、ウォッ、クゥオーン」マフラーから火を噴いてシフトアップしている。512TRも全開で加速しているようだ。
「ほぅ、NAでも火がでるんだぁ!」なんて考えながらシフトアップ。
夜景のネオンが後ろの飛んでいく。速度が一気に上がる。
4速6000、7000、タコメーターが跳ね上がる。「加速は512TRとほぼ同じか!」
「クゥァカァーーン」全開で加速するフェラーリのエキゾーストサウンドをまじかで聞けるなんて滅多に無い。
隣では、「行けー、行けーGo、Go」叫んでいる。ウルサイ!!
一般車が増える。お互いが左右にかき分けながら加速していく。
ステアする腕に緊張が高まる。5速にシフトアップ、距離が詰まる。高回転の伸びはロータリーターボの方が上のようだ!!
トンネルに突入。「クゥーーオゥオーーン」反響音にふたたびしびれる。
512を横に見て並んでいる。走っていて、安心感あるのに気が付いた。かなりウデが良いんだろう!!
トンネルを抜けて軽くアクセルを抜いて左にステア。
ブラインドをアクセル全開で抜けるほど愚かではない。
案の定、コーナーを抜けると一般車がふさいでいた。一瞬でお互いが左右に分かれて回避する。
綺麗に抜いて、アクセル全開!!相手は、失敗したようだ。一般車に引っかかっている。
オールクリアだ!!もう追随は許さない!!アクセル全開で分岐を左にステアする頃には、ミラーに点となっていた。
燃料系も点灯していた。「うわぁ、もう限界だー!」すぐに次の出口で降りることにした。
ガス欠寸前に怯えながら思った。
「最高のサウンドだったなぁ!!」

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