〜闘神都市V〜 

〜闘神都市V〜
〜そして、それから〜



<都市長邸・寝室>

チュンチュン………チチチ

「ん……ふぅ。あれ、レメディアは?」
「すぅすぅ……とーちゃ」
「………」(すやすや)
「また、ナクトの布団にもぐりこんでいたのね………それにアザミちゃんまで」

「うう………重いぃ」
「くすっ、二人に上に乗られてたら、これはこれで、大変なのかも」
「ぅぁ〜、重いって、羽純………」
「っ!」

ゴス!

「ぐは! な、なんなんだ?」

頭に衝撃を受けて、俺は目が覚めた。何だか、巨大なハンマーを持った羽純にのしかかられるという、シュールな夢を見ていたような気がする。
最後に、ハンマーで頭を殴られた所で目が覚めたんだけど、何故か夢の世界の衝撃が、頭に響いているような気がする。

「おはよう、ナクト。目が覚めた?」
「ん、ああ、おはよう羽純――――って、何か怒ってないか?」
「別に、怒ってないけど」

と言いつつ、怒った顔の羽純。何で怒っているのかと回りを確認すると、首根っこにレメディアが抱きついていて、お腹にはアザミが乗っかっている。
なるほど、これは怒られても仕方ないか。とはいえ、別に俺が率先してやった結果じゃないんだが………それを口にしたら言い訳じみた事になりそうだし、やめておこう。
引っ付いているアザミとレメディアを離してから、俺はベッドから降りる。そうして、拗ねたように、そっぽを向いている羽純の頬にキスをした。

「とりあえず、これで機嫌を直してくれよ」
「ぁ………もう、調子がいいんだから」

気を取り直したのか、しょうがないなという風に、羽純は苦笑を浮かべる。機嫌が直ってくれて、正直ありがたい。
口喧嘩になると、レメディアはもちろん、桃花や燐花、屋敷中のメイドが羽純の味方になるからな…俺としては、羽純の機嫌をとっておくに越した事はなかったのである。
何となく、立場の弱い婿養子のような気分になって悲しくなるのは、気のせいだろう………たぶん。



<闘神区画・門>

朝食を皆で一緒にとった後で、ナマニクに戻ると言うアザミを見送りに、闘神区画の外に見送りに出た。
賑やかな騒がしさと、活気に満ち溢れている闘神都市内だが、流石に闘神区画の近辺で騒ごうとする度胸のあるヤツはいないのか、この近辺は朝の静けさに包まれている。

「………じゃあ、かえる」
「一人で大丈夫なのか? なんなら、テントまで送っていくけど」
「ベーコンもいるから…へいき」
「そうか………また遊びに行く事もあるだろうから、その時はよろしくな」

俺の言葉にアザミは頷くと、自分の住処のある洞窟への道を歩いていった。さて、見送りも済ませたし、俺も出かけるとしようか。



<コロシアム・受付>

朝の早い時間にコロシアムの受付に行くと、受付にいたシュリさんが、笑顔で俺を出迎えてくれた。

「あ、ナクト様、おはようございます! 試合の観戦に来られたんですか?」
「うん。せっかく、特等席で見れるんだし、やっぱり利用できるものは利用した方が良いかなと思って」
「そうですか。それでは、特等席にご案内しますね!」



<コロシアム・特等席>

コロシアム内には、いくつかの席がある。もっとも多いのは、一般席であり、完全な予約制となっていた。とんでもなく高価でありながら、大会前には全て完売になる。
そのほかの席としては、取材陣に開放される取材席、やんごとない身分の人間が使用できる貴賓席。そして、闘神専用の特等席があった。
シュリさんに案内された場所は、コロシアムでも高所にある、前面がガラス張りになっている部屋である。豪華な調度品の並ぶその部屋は、ホテルの一室にも見える。
部屋の中には、闘神を接待するためか、メイドの女の子が一人、控えていた。俺も見知った顔の彼女に、シュリさんは声をかける。

「ナクト様がお越しになられました。お世話の方を、よろしくお願いしますね」
「はい、分かりました」
「お願いしますね。それじゃあ私は、出場者の方達のお相手をしなくてはなりませんので。失礼しますね」
「うん。シュリさん、案内してくれてありがとう」
「いえいえ、それではごゆっくり寛いでいってくださいね」

礼を言う俺に、シュリさんは笑顔を見せながら部屋を出て行った。部屋に残ったのは、俺と――――メイド女の子、桃花である。

「とりあえず、座ったら? あ、飲み物はいるの? 果物もあるし、切ることも出来るけど」
「ああ、それじゃあ寛がせてもらうよ。桃花も、立ってないで俺の隣に座ったら?」
「ん………そうね。それじゃあ、お邪魔するわ」

闘神用の椅子は、横になって見ることも出来る長椅子である。いくつかの飲み物と果物を乗せた皿を間において、桃花が俺の隣に腰掛けた。
並んで座るといっても、別に密着して座る必要がないのから、桃花も俺の誘いに頷いたんだろう。普段なら、イチャイチャ並んで座るわけないでしょって言うだろうし。
そんなことを考えていると、桃花が飲み物のグラスを俺に差し出してきた。

「はい。どうせ試合には、まだ時間があるだろうし………それまでは、のんびりとしていましょう」
「ああ、ありがとう。そういえば、幻一郎さんは来ないの? こういうお祭り騒ぎは、誰よりも好きそうなんだけど」
「………お兄様は、朝から出かけてるわ。何でも、特大の危険センサーを察知したって言っていたけど…せっかくお兄様に甘えれるようにって、接待役を志願したのに」

俺の言葉に、桃花は不満そうな顔。どうやら、彼女の目論見では闘神大会の観戦にかこつけて、幻一郎さんに甘えまくるつもりだったらしい。

「そうか、でもまぁ、試合開始までには来るかもしれないし、それまでは俺を幻一郎さんと思って思いっきり甘えればいいよ」
「はぁ? なに言ってんのよ。アンタとお兄様じゃ、釣り合いがとれる訳ないじゃない。せめて、もう少し甲斐性ってのをもってから言うものよ」
「う、相変わらず、きついなぁ」

相変わらず、桃花は幻一郎さんがらみの話になると、容赦がなくなる。まぁ、幻一郎さんが凄い人なのはよく知っているから、腹も立たないんだけど。

「………そんな顔しないでよ。まあ、アンタがいつも頑張っているのは知ってるし、お兄様以外の男の中なら、一番にマシなんだから」
「そうか。認めてくれるのは嬉しいよ。ありがとうな」
「べ、別に、褒めているわけじゃないわよ。ほら、そろそろ始まるみたいよ」

桃花の言葉通り、部屋の前面にあるガラスに写る光景が変化を始める。それと共に、観客の喧騒が聞こえてきた。
特設された観覧席では、ガラスとその中に流れる液体を組み合わせた特殊なレンス構造により、参加者達の試合を間近に見ることが出来る。
また、通信用の魔法の応用によって、参加者同士の戦いの音も、より鮮明に聞こえるようになっていた。
この機能により…一般席で観戦するよりも快適にかつ安全に、試合を観戦できるようになっていると聞いたことがある。
もっとも、実際には一般席で感染したこともないため、その差は分からなかったのだけど。そんなことを考えながら、前面のガラス面に注目する。

コロシアム内部を映すガラスには、出場者の登場する、龍の門、鬼の門から登場する選手達の様子を映し出していた。
龍の門から姿を現したのは、ゆったりとした衣服の上から鎧を着込み、手には長刀を持った女の子だった。端正な顔に、コロシアム内にも、どよめきが走る。
対する鬼の門からは、口元にマフラーを巻き、身体にピッタリとフィットした、黒尽くめの格好の茶髪の少年が姿を現した。
なんというか、幻一郎さんの格好に似通っているけど、あれは狙ってやっているのか、忍者はみんな、ああいう格好なのか、少しだけ疑問に思った。

「ええと、確か1日目の1回戦は、戦姫VS忍者サワタリ、だったよな………剣士対忍者か、あの女の子も、苦戦しそうだよな」
「そうかしら? そもそも、あの忍者サワタリって選手、忍者じゃないと思うんだけど」

以前、幻一郎さんに攻撃が当たらず、苦労した事を思い出して口にすると、俺の隣に座る桃花が、飲み物に口をつけながら、ポツリとそんな事を呟いた。
幻一郎さんが身近にいないせいもあってか、すっかり寛いだ様子で試合を観戦するつもりのようだった。そんな桃花に、俺は疑問を投げかけてみる。

「忍者じゃない、って………どういうことなんだ?」
「言葉の通りよ。服装こそ、お兄様を真似ているけど…歩く時の足運びや、周囲に向ける仕草が明らかに違うわ。あれは、忍者と言うよりも大陸の密偵の方が正しいわね」
「なるほど、忍者の名乗っているけど、その実は密偵ってことか………でも、それじゃあ何で、忍者を名乗ってるんだろうな?」
「さあ? 単純に、忍者に憧れでもあるんじゃないかしら? こっちでも、忍者の事を詳しく知ってる人は多いみたいだし、何より、お兄様が闘神になったからね」

幻一郎さんが闘神となってからは、忍者の知名度は格段にあがった事は確かである。子供達の中では最近、忍者仮面ごっこがブームになっているとか。
ひょっとしたら、あのサワタリって言う選手も、子供の頃に忍者に憧れていた口なのかもしれない。そんな事を考えていると、人の話し声が聞こえてきた。

『うほっ、いいねーちゃんじゃねーか。こりゃ、試合の後が楽しみになってきたな』
『………吠えるのは良いが、せいぜい楽しませてくれよ。退屈な戦は、好みじゃないのでな』
『オーケー、オーケー! このサワタリ様にかかれば、どんな勝負もビシッと決まるからな!』
『だと、良いのだがな』

「………対戦者同士の会話だったみたいだな。どうやら、試合前の前哨戦みたいだったけど」
「それにしても、男の方はなんか小物っぽい感じね。女の人のほうも相手にしてないみたいだったけど」

戦いの臨場感を伝えるためか、対戦者二人の周囲の音は、より鮮明に聞こえるような仕組みになっている。戦いながら必殺技を叫ぶ選手もいるので、必要な機能なのだろう。
もっとも、状況によっては――――…例えば、4年前のマガラダの戦いの時のような、残虐なシーンが起こった場合は、意図的に音がカットされる事もある。
幸い、昨年の大会では、残虐な展開は少なかった。今年も、できるだけそういうシーンが少なければいいんだけど…そんなことを考えている間に試合時間になったようだ。

『それでは、1回戦、第1試合を開催します! 龍のコーナーより出でるは、戦姫!』

シュリさんのアナウンスに、会場中から歓声が上がる。既に観客の心をつかんでいるのか、大きな歓声が上がった。

『続いて、鬼のコーナーより出でるは、忍者サワタリ!』

高揚した空気が流れているのか、先ほどと同様に大きな歓声が上がる。両者は距離をとって向かい合う。
戦姫が持つのは、長刀であり…サワタリが持つ武器は、幻一郎さんと同じく、忍者刀と呼ばれる武器だった。作戦でもあるのか、サワタリは背負った武器を抜く様子は無い。
両者の間に、見えない緊張の糸が張り巡らされる。それが断ち切られたのは、シュリさんの試合開始の合図と同時であった。

『それでは、試合開始!』
『でぇりゃぁっ! はぁっ!』

開始の合図と共に動いたのは、サワタリの方であった。両手にクナイと呼ばれる飛び道具を構えると、戦姫に向かって投げ放つ!
両手の指に挟まれたクナイは、合計で8本。それが一度に戦姫に向かって飛来する! 更にサワタリは、二度、三度と両手にクナイを持ち、次々と射出した!

『ふっ…』

しかし、その攻撃は戦姫に届かない。戦姫は、長刀を振るって複数のクナイを叩き落すと、無造作に前に出る。
クナイが頬をかすめ、服を僅かに切り裂いても気にも留めず、自分の身体に当たるクナイだけを叩き落としながら、サワタリに肉薄する!

『げっ、ま、まじかよっ………!』

サワタリは、慌てて背中の忍者等を抜くが、虚を突かれた分、後手に回る。その数秒の猶予を利用し、戦姫は長刀を派手に振り回すと、その遠心力を相手に叩きつける!

『はぁっ!!』
『ぶげらぁっ!?』

忍者刀での防御は何とか成功したものの、派手に吹き飛ばされて、もんどりうって転がるサワタリ。何とか立ち上がるが、かなりのダメージを受けたようだった。
よろよろと身を起こすサワタリに対し、追撃を行う事もせず、戦姫はつまらなそうに嘆息した。

『…この程度では、肩慣らしにもならなそうだな。潔く、降参したらどうだ?』
『ぐ、うぅっ………ま、まだまだ、俺の本気はこんなもんじゃないぜ! 今度は、こっちの番だ!』

気を取り直したのか、忍者刀を構えると、サワタリは戦姫に向かって突進する! 忍者と自称するのは伊達ではなく、その軽い身のこなしから、次々と剣撃を放つ!
しかし、サワタリの攻撃を烈風と称するならば、戦姫の防御は、風を阻む雄雄しき山脈のようなものだった。小回りの効きづらい筈の長刀で、再三の攻撃を防ぎ続ける。
逆に、一瞬の間隙をついて鞘から片手を離すと、空いた手でサワタリの顔面を思いっきり殴り飛ばした!

『ぐほうっ!?』

再び大きく吹き飛ばされて、地面を二転三転するサワタリ。その様子を見て、かたずを呑んで戦いを観戦していた、コロシアム中から歓声が沸き起こった。
実力者同士の対戦に、観客もヒートアップする。今の所、戦い自体は、戦姫が優勢のようだった。その戦姫はというと、相変わらずのつまらなそうな表情である。

『多少は腕に覚えがあるようだが、まだまだ未熟だな。あと数年すれば、一人前になっていただろうに、時期尚早だったな』
『ぐぅっ、まだまだ………っ!』

顔を腫らしてボロボロの身体で、サワタリは尚も立ち上がる。手傷は負っているものの、その目はまだ、死んではいない。その闘志に、会場からも応援の声があがる。

『ったく、出来れば温存しておきたい技だったが、しょうがねえな…』
『…む?』

サワタリは、その場で片膝をつくと、両手を複雑な形に結び合わせ始めた。同時に、その口から声がつむぎ出される。

『臨・兵・闘・者………』
「あれは、九字護身法!?」
「知っているのか、桃花?」

戸惑った声をあげる桃花に、質問を投げかける。桃花は、困惑した表情のまま、俺の質問に対して口を開いた。

「ええ、JAPAN伝来の陰陽術に使われる型の一つよ。集中力を高める方法の一つだけど………JAPANの人間でも、知る者はそう多くない術よ」
「そんなものを出すってことは、いよいよ全力を出すってことか」
『…皆・陣・列・在・前!』

九字を斬り終わると、片膝の体勢のまま、瞳を閉じるサワタリ。一見、無防備にも見えるが、戦姫の動きをつかむために全力を傾けているのが分かる。
戦姫の今までの戦いぶりから、飛び道具はないとふんでの行為だろうけど、その覚悟はまさに、背水の陣と言えた。
その気迫を感じ取ったのか、戦姫の表情があらたまる。いつの間にか、コロシアム内は、水を打ったかのように静まりかえっていた。

『なるほど、いい気迫だ。ならば、遠慮は無しに行くぞ!』

刹那、まさに雌豹のように、戦姫が動く。地を滑るように駆けた戦姫は、屈みこむサワタリに向け、長刀を振りかざす! その瞬間、サワタリの目がカッと見開かれた!

『はぁぁぁぁぁぁっ!』
『っ!』

その瞬間、サワタリの足元から爆風が湧き上がり、土ぼこりが周囲を覆う! 爆風によって、吹き上げられる土ぼこり。いつの間にか、サワタリの姿が消えていた。
やがて、土埃が薄れると、その場に残ったのは戦姫だけ。その姿は傷一つおっていない。と、吹き返しの風にスカートがめくれ上がり、白い下着があらわになった!

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉっ!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉっ! 痛てっ!」
「バカっ! なにを見てるのよっ!」

思わず興奮する観客&俺。何故か俺だけ、隣にいた桃花に殴られる羽目になり、何となく納得いかない。そんな事を考えながら、ガラスに映る光景に目を向けなおす。
戦姫は、まくれ上がった衣服や周囲の騒ぎなど意に介さない様子で、周囲に鋭い目を向けていた。周りに立ち込める、土ぼこりの中からの奇襲を警戒しているようだった。

『どこから来る…?』

腰を落とし、武器を構え、いかなる場所から飛び出してきても、対応できるような体勢をとる戦姫。しかし、次の瞬間、ハッと彼女は顔を上げる。

『上か…!』

その声に、多くの者が頭上を見上げる。戦姫の言葉通り、サワタリは宙を舞っていた。全身の力を脚力に集中し、かつ、爆風も利用して空に飛び上がったようである。
サワタリは、懐に手を掛けて大きく開く。そこからは、導火線に火の付いた無数の炸裂弾が零れ落ち、地上から見上げる戦姫の頭上にと降り注ぐ!

『喰らえ、奥義・爆裂微塵弾!』
『!!』

爆音が連続する。十重二十重の爆発は、火薬の調合と爆発のタイミングによって、威力を倍増させているようであった。流石にこれでは、ひとたまりもないだろう。
と、自分の放った爆発の煽りを受けてか、バランスを崩したサワタリは、顔面から地面に着地した。

『ぶべっ! うう、ひどい目にあったぜ………』

よろよろと、土の付いた顔のまま身を起こすサワタリ。そうして、もうもうと煙を上げる爆心地を見て、安堵したように溜め息を吐いた。

『それにしても、おっかねぇ姉ちゃんだったな………まぁ、何とかなったからよかったけどよ――――って、ぇ?』

勝利を確信して、油断していたのだろう。唐突に、煙の中から突き出された腕が、その襟首をつかんでも………サワタリはろくに反応も出来なかった。
次の瞬間、まるで崖から真っ逆さまに落ちるように、『垂直に』サワタリはコロシアムの壁に向かって飛ばされ――――追突した。

『う、うそだろ………』(ガクッ)
『ふ――――少々、肝を冷やしたが、今一歩で届かなかったな』

気絶したサワタリに向けて言葉を飛ばしたのは、あれだけの爆発を受けても、無事であった戦姫だった。もっとも、身体はともかく、焼け焦げた服は無事ではなかったが。
あちこちに煤にまみれ、衣服は所々に切れ端が残るのみ。肝心な部分は隠れてはいたものの、戦姫は、あられもない姿になっていたのだった。

『忍者サワタリ、戦闘不能! 勝者、戦姫!』
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
「いや、白熱したな………戦姫か、名前の通り、凄い腕前――――って、何で拳を振りかざしてるんだよ、桃花」
「いいから、今は目をつぶってなさいよ、バカっ!」

桃花に言われ、俺は慌てて目をつぶる。流石に何度も、殴られるのは勘弁してほしかった。まぁ、刺激的な戦姫の姿は、当分、忘れられそうになかったけど。



そうして、第1試合は幕を閉じた。それからしばらく経って………現在は、戦いの後始末のために、試合場に闘神大会のスタッフが入り、右往左往している最中であった。
気絶した参加者を担架で運び、コロシアムの壁を直し、土を入れ替えて地面を均すといった風に、その仕事は実に手馴れたものだった。
俺はというと、その光景を見ながら、桃花と一緒にまったりと寛いでいる最中だった。飲み物を口にしながら、最近のよもやま話に花を咲かせる。

「へぇ、今年の参加者って、いままでよりもJAPAN出身の人が増えているのか」
「ええ。お兄様が闘神になった事を聞いて、JAPANの各地から、闘神になろうと多くの人が闘神都市に来ているみたいよ。もっとも、大半は予選落ちするみたいだけど」
「まぁ、それはそうだろうな。そう簡単になれるものでもないんだし………それでも参加するってのは、やっぱり闘神の立場が魅力的なんだろうなぁ」

闘神は、生活の保障がされるだけでなく、その肩書きを使えば多くの資金を集める事もできる。
そんなわけで、新たな資金源の確保をと、腕利きを闘神大会に参加させる小国がいくつかあったらしい。
もっとも、即物的な狙いのせいなのか、そういった参加者は予選も突破できず、参加損の体たらくになっていたらしいけど。

「しかし、JAPANか………一度くらいなら旅行で行ってみたいもんだな。物珍しいものも、たくさんあるらしいし」
「あまり、期待するほどのものはないけどね。その時がきたら、道案内くらいはしてあげるわよ。温泉とか、くつろげる場所は地元の人間の方が知っているものだからね」
「温泉っていうと、大きなお風呂らしいけど………いいな、それ」
「ちょっと――――何を想像してんのよ! まったく、スケベなんだから」

思わず、桃花と羽純の入浴シーンを思い浮かべてしまった俺の顔を見て、桃花は眉を吊り上げる。しかし、制裁の拳が飛んでくる事はなかった。

「はっはっはっ、仲良くやっているようだな」

桃花が殴りかかってくる直前、唐突に部屋のカーペットの下から、幻一郎さんが飛び出してきたのである。いつの間に潜んでいたんだろうか?

「お、お兄様!?」
「幻一郎さん、いつからそこに――――うわ?」
「あーん、ナクト様ぁ」

ソファに座って驚く俺と桃花。そんな俺の首筋に、細い腕がまきついてきた。後頭部に柔らかい感触………誰かが、俺の背後から抱きついてきたらしい。

「ちょ…燐花! 何をやってるのよ!」
「何って、抱きついているに決まってるじゃない。桃花こそ、一人だけ抜け駆けするなんて、ずるいんじゃないの?」
「あ、あたしは仕事だから、いいのよっ!」

どうやら、俺に抱きついてきたのは燐花らしい。甘えたように俺にもたれかかって来るが、そうすると桃花の機嫌が最悪になるので、できれば遠慮してほしかった。
俺は、さりげなく燐花の腕をほどくと、席を立って身を離した。当然の事だが、燐花は不満そうだったけど、さすがに桃花の真横でイチャつく程の度胸は無かったのである。

「幻一郎さん、どうして燐花を連れてきたんだよ」
「いや、なに。これも家族サービスと言うやつだ。妹達にも、本選の試合を見せたいと言う兄心でな」
「まぁ、それは分かるけど――――って、妹『達』!?」
「うむ。連絡は入れておいたから、すぐに集まってくるはずだ。一番乗りは燐花だったようだな………どうした? 顔色が悪いようだが」

幻一郎さんが心配そうに声をかけてきてくれるが、それどころではなかった。幻一郎さんの12人の妹達は、闘神になったと同時期に、闘神区画に引っ越してきた。
その全員がブラコンであり、幻一郎さんを2回も倒した俺を、親の仇のように付け狙ってくる娘もいるくらいだった。
燐花や桃花は例外だが、他の娘は俺の事を敵視しており、そんな彼女達が一堂に会するともなれば、針の蓆の上にいるのも同然だった。

「あ、いや………そ、そうだ。俺、急用を思い出したから! 幻一郎さん達は、家族水入らずで試合を楽しんでってよ!」
「………すまないな。ひょっとして、気を使わせてしまったか?」
「いや、そんなことはないから。それじゃあ、燐花も桃花も、またあとでな!」
「あ、ちょっと、待ちなさいよ!」
「あーん、ナクト様! 置いてっちゃイヤですよ!」

なにやら、桃花と燐花の引き止める声が背中から聞こえてきたが、俺は後ろを振り返らずに駆け出した。
引き止められるのは悪い気はしないが、応じたら地獄が待っているのは確実である。そのまま俺は、コロシアムの外まで全力で走りぬけたのだった。

「どうやら、誰も追ってこないみたいだけど………ほとぼりが冷めるまでは、ここには近づかない方が賢明だな」

今日は、残りの試合を観戦できそうにないな――――そんな風にぼやきながら、俺はコロシアムに背を向ける。
次の試合への期待感からか、去り行く俺の背中に、コロシアムの中からの大きな喧騒が届く。さて…これから、どこに行くとしようか?



<宿屋・カテナイ亭>

カテナイ亭の前を通りかかると、ちょうど宿屋の前から一人の少年とメイド服の女の子が出てきた。
軽装鎧を身に付けた少年の姿は、今からダンジョンに潜るつもりのようだった。心配そうな表情の少女に少年が微笑みかける。

「それじゃあ、行ってくるよ。ドナは留守番をよろしくね」
「………はい。どうかお気をつけてください、フライド様」

メイドの少女は、二つの石を、少年の前でカチカチと合わせる。どうやら、何かのおまじないのようである。生真面目な表情の少女の仕草を少年は笑顔で見つめていた。
見送られながら、手を振って歩いていった少年を見送ると、メイドの少女は宿に戻っていった。何となく、仲睦まじい光景を見ていると、横から声をかけられた。

「あら、ナクト様じゃない。フライドくん達を見てたみたいだけど、どうしたの?」
「マルデさん……今の彼って、ひょっとして参加者?」
「ええ、そうよ。予選突破選手の一人で、フライド・バーガーくん。今は、カテナイ亭を存続の危機から救ってくれた太っ腹なコ達よ。全部の部屋を借りてくれててね」

にこにこ笑顔で、マルデさんは言う。そういえば、お客が入らなくて苦労していたみたいだけど、その問題は解決したようだった。

「それにしても、あのコってナクトくんと同じ雰囲気をしてるのよね。案外、トーナメントでも順調に勝ち進むかも」
「ふぅん………そうなのか」

マルデさんに言われて、俺はさっきの少年の顔を思い出す。線の細い顔立ちの少年………メイドの少女と仲が良さそうだったけど、あの娘がパートナーだろうか。
何となく、昔の俺と羽純の関係を思い出し、感慨めいた感情に浸っていると、考え込んでいたマルデさんが顔を上げてポツリと呟いた。

「やっぱり、準優勝料理とか用意しておいた方が良いのかしら?」
「どうしても、優勝するとは考えつかないんだ……」

時が経っても、相変わらずの様子のマルデさんに、俺は苦笑を浮かべる。いつまでも変わらないマルデさんに、何となく安心をしてしまう俺であった。



<トトカルチョ会場>

トトカルチョ会場に足を向けてみると、どうやら早々に勝敗の結果が出たのか、周囲はざわめきに包まれていた。
賭け券を握り締めてガッツポーズをする者、外れた腹立ち紛れに券を破る者、地面にへたり込む者と様々な様子である。
そんな中を歩いて、俺はパニィさんの姿を探していた。何となく小腹が空いていたので、アカメフルトでも食べようかと思ったのである。

「さて、パニィさんは……あれ?」
「パニィさん、ボクにもアカメフルトちょうだい……って、あれ、ナクトだ!」
「ナミールじゃないか。ひょっとして、ナミールもアカメフルトを買いに来たのか?」
「うん。ここのアカメフルトは絶品だからね」

パニィさんからアカメフルトを受け取って、嬉しそうな顔をするルミーナ。俺もアカメフルトを買おうと、パニィさんに声をかけた。

「パニィさん、繁盛しているみたいだね。俺にも一つ、アカメフルトをくれないか?」
「あ、ナクト様! はい、みんな盛り上がっているみたいですよ。今日はまだ、高配当は出ていないみたいですけどね」
「そうなんだ……って、そんなに畏まった話しかたをしなくてもいいよ。それはそうと、第2試合はどっちが勝ったんだ?」
「そうですか? それじゃあお言葉に甘えるとして…結果を知るのは、あとのお楽しみで良いんじゃないかな? 試合内容を知るなら、ダイジェストを見た方が楽しめるし」

パニィさんの言葉に、それもそうかと頷く。どのみち闘神ダイジェストに目を通すわけだし、楽しみは後に取っておいた方がいいだろう。
と、黙って俺とパニィさんのやりとりを聞いていたルミーナが、食べ終わったアカメフルトの櫛で、俺をつんつんと突きながら質問をしてきた。

「ねえねえ、ナクトって今、暇なの?」
「暇か、って聞かれれば、まぁ、そうなんだけど」

忙しく働いているパニィさん達には申し訳ないなと思いながら俺が答えると、ルミーナは顔を輝かせて身を乗り出してきた。

「それじゃあさ、今からあちこちで食べ歩きしようと思うんだけど、いっしょに行こうよ!」
「そうだな………俺は構わないよ。それじゃあパニィさん、また遊びに来るから」
「ええ、楽しんできてね!」

笑顔のパニィさんに見送られ、俺とルミーナはその場を離れた。大会期間の独特な空気に触発されたのか、ルミーナは浮かれた様子で俺の隣を歩いていた。



<広場>

広場に面した通りに出た俺達は、立ち並ぶ露店を歩いて回り、色々な食べ物を買い漁ることにした。早速、両手に食べ物を持ったルミーナは、ご満悦と言った様子である。

「うーん、美味しいっ! チョコスフレに、わたがしに、ええっと……」
「しかし、よく食べるよなぁ。どこに、そんなに入るんだよ?」
「あ、ナクトってばボクのどこを見てるの? やらしーなぁ」

あはは、と笑いながら、ルミーナは楽しそうに笑っている。このお祭りのような空気を、心底楽しんでいるようだ。

「それにしても、リラックスしてるな。試合は2日後だっけ? よく、のんびりとできるよな」
「まぁ、覚悟は、もう出来ているからね。勝つにしろ負けるにしろ、こうやって楽しめるのは最後だろうから」
「………え?」

何だか、気になることをルミーナは言ったけど、そのことを聞く前に、ルミーナが俺の方を向いて笑顔を見せてきた。

「ナクト、ほっぺにチョコがついてるよ。拭いてあげるからさ、ちょっと屈んでよ」
「あ、ああ、そうか。でも、ルミーナも両手がふさがってるだろ? どうやって拭くんだよ」
「それはね、こうするの………んっ」
「!?」

身をかがめた俺の頬に、背伸びしたルミーナが、舌を這わせてきた。突拍子も無い彼女の行動に、俺は驚いて身を離す。
ルミーナは、舌を口の中に戻すと、ふわりと砂糖菓子のような甘い微笑みを俺に向けて、小首を傾げてきた。

「うん、やっぱり………甘いね」
「あ、あのなぁ」

さすがに今のは恥ずかしかったぞと、文句を言おうとした時である。

「特ダネ、ゲットぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ひゃっ!? な、なにっ!?」
「う、うわ、シャリーさん?」

唐突に背後から聞こえてきた声に、驚いて振り向くと、そこにはカメラを構えたシャリーさんが…キラキラした目で、こっちを見つめていた。
何だろう…物凄く、やばいシーンを見られたような気がする。冷や汗を流す俺を尻目に、シャリーさんは興奮した様子でルミーナに詰め寄った。

「闘神ナクト様に熱愛発覚! 相手は大会出場者のナミール・ハムサンド選手! 特ダネの予感だわ! ねぇ、ちょっとコメントを聞かせてもらえないかしらっ!?」
「う………ちょ、ちょっと怖いかも。ごめんナクト、ボク、逃げるねー!」

シャリーさんの剣幕に身の危険を感じたのか、ルミーナは両手に露店の食べ物を持ったままで、逃げ出してしまった。
取材の矛先がこちらに来るかと身構えたが、幸いというべきか、ターゲットをルミーナに決めたようである。逃げた彼女を追って、シャリーさんも走り去っていった。

「あ、ちょっと、何か一言だけでも! 後で都合よく捏造するから!」

土煙を上げながら、不穏当な言葉を残してシャリーさんも目の前からいなくなる。後に残った俺は、深々と溜め息をついた。

「ふぅ、相変わらずだな、シャリーさんは。それにしても………まさか本当に、さっきの光景を記事にしないだろうな?」

ルミーナの行動は一瞬であり、そう都合よく写真に撮られているとは考えにくい。しかし、シャリーさんの熱意を考えると、どうにも不安だった。
どうか、なるべく大事になりませんように………逃げたルミーナが、シャリーさんに捕まらない事を祈りつつ、俺はそんなことを考えたのであった。



<闘神区画・門>

なし崩し的にルミーナと別れた後、何となく歩いているうちに、闘神区画の前に戻ってきた。門の近くでは歩哨の兵士達が所在無げに立っている。
闘神区画は、関係者以外立ち入り禁止であるのは、闘神都市に住む人間の大半が知っている。巨大な門と歩哨の兵士達は、侵入者に対する備えのようなものなのだが…。

「実際に、真正面から入ろうとするほど度胸のあるヤツは、いないらしいからな」

闘神区画に常駐する兵士が、侵入者相手に戦いになったことは、この数年は無いようである。唯一の例外は、四年前に俺が起こした騒動の時だけらしい。
いま思うと、随分無茶な事をやったもんだ。そんなことを考えながら、俺は兵士達に軽く頭を下げると、呼び鈴を鳴らす。
一度、区画内に戻る事にしよう。呼び鈴の相手が出るまでの数分間、俺はその場で所在無げに立って時間を潰していたのだった。



<闘神迷宮・入り口>

闘神区画内にある、迷宮の入り口に立つ。あの事件が起こった後も、召喚ドアは時折に発生しており…鉱石獣も、ちらほらと姿を見せている。
区画内にあるダンジョンという事もあって、何か事故があってからでは遅いので、こうして時々ダンジョンにもぐり、中の様子を見てまわることにしていた。
また、こうしてダンジョンを散策するのは、冒険者としての腕を鈍らせないためでもあった。都市長として、闘神として、毎日が忙しい。
しかし、トラブルというのは、そんな都合とは関係なくやってくるものである。レメディアや羽純を護るためにも、腕を磨いておくに越したことはなかった。

「さて、行くとするか…」

鉱石獣対策のために、指にはめた指輪が青く光っているのを確認してから、俺は迷宮に足を踏み入れた。



<闘神迷宮・30F>

「ふぅ、こんなものかな」

ダンジョン内を見て回り、かなりの数の敵を倒した俺は、高揚した精神を静めるように一息つく。迷宮内をあちこち見て回ったが、大きな異常は見られなかった。
そこかしこに召喚ドアが新たに出来ており、ドアのいくつかは開けられていたが、多分、幻一郎さんが開けたものだろう。
幻一郎さんも、危険センサーに反応がないときは、闘神迷宮に入って腕を磨いている。傷を受けたら一大事な鉱石獣も、幻一郎さんにかかれば楽勝の相手らしい。
その割には、いまだにカエルが苦手という、変な弱点を持っているのも幻一郎さんらしいといえた。

「さて、ここで考えていてもしょうがないし、お帰り盆栽するとするか」

激しいい戦いで疲れたことだし、今日はこのまま、屋敷に戻ってゆっくりとするとしよう。
俺は、懐からお帰り盆栽をとりだすと、枝を折って高く掲げた――――



<都市長邸>

「あ、おかえりなさい。ナクトさん」
「ああ、ただいま、マニさん。羽純とレメディアはどうしているか知ってる?」

都市長邸に戻ると、メイド姿のマニさんがで迎えてくれた。マニさんは無料奉仕期間が終わってからも、引き続きこの館で働く事になった。
それはマニさんだけでなく、燐花も桃花もそうであるが………意外に、奉仕期間にあてがわれた仕事というのは、それぞれに向いている仕事らしい。

「羽純さんは、お部屋のお掃除をすると言ってましたよ。レメディアさんは………」
「あっ、とーちゃだ。あそんで!」

マニさんの説明の途中で、明るく透き通るような声が聞こえてきた。見ると、廊下の向こうからレメディアが小走りに駆け寄ってくるのが見えた。

「ごめんな、レメディア。いまから俺は、風呂に入ろうと思ってるんだ。ほら、レメディアも汗臭いお父さんは嫌だろう?」
「えー………分かった、レメディアも入る!」
「ん。そうか、それじゃあ一緒に入るか!」

はーい、と元気よく手を上げるレメディアを抱き上げて、俺は笑みを浮かべる。本当に、言葉に出来ないくらい可愛いレメディアだった。
と、そんな俺たちの様子を見て、マニさんが笑顔を浮かべている。ほのぼのとした親子のような会話に、呆れられたのかもしれない。



<都市長邸・応接間>

レメディアの相手をしているうちに、夕方になり――――夕食を食べ終わった後も遊んでいると、夜になった。
楽しい時間は、文字通りあっという間に過ぎるな………遊び疲れて膝の上で眠っているレメディアの頭を撫でながら、満ち足りた気分になる。

「レメディア………寝ちゃったの?」
「ん、ああ。ぐっすりと眠っているみたいだ。あとで、寝床に連れて行くよ」

夕食の後片付けを終えて、様子を見に来た羽純に、俺はそう答える。羽純は、そっとレメディアの顔を覗き見て、穏やかな寝顔にホッとしたような笑みを浮かべる。
羽純は、そのまま俺の隣に座ると、俺の肩に頭を乗せてもたれかかってきた。

「ふふっ………なんだか、幸せだよね」
「――――うん。そうだな」

俺がいて、羽純が居てレメディアがここにいる。かつて望んだ結末とは違っていても、今のこの瞬間は、確かに幸せだと断言できた。

「あ、そろそろ闘神ダイジェストが始まる時間だな。レメディアが起きないように、音を下げてみるとするか」
「分かった。それじゃあ、スイッチつけるね」

膝の上にレメディアの頭が乗っているため、立ち上がれない俺の代わりに、羽純が魔法ビジョンのスイッチを付けてくれる。
羽純が俺の隣に座り、肩に頭を乗せたところで、闘神ダイジェストの始まる時間になった。


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