〜史実無根の物語〜 

〜其の一〜



日々の雑務にかまけていると、ついつい、失念してしまう事がある。それは重要な書類の記入だったり、その書類の提出期限だったりする。

「うわ、やばいやばいっ! 放っておいたら大変なことになるところだった」

ついうっかり、華琳に提出する書類の期限を失念していたのに気づいたのは、先程の事。突貫作業で書類を作成し、俺は華琳の姿を探して、城内を駆け回っていた。
今日中に提出しなければ、確実に怒られる。下手をすれば命がないだろう。俺は必死に、廊下を駆け回って華琳の姿を探していた。

「あら、北郷じゃないの。そんな風に間抜け面をさらして、何を焦っているのかしら?」

と、必死になって走っていると、呆れたような顔をした、桂花が声をかけてきた。いつも通りの獣耳フードを被った彼女は、汗まみれの俺を怪訝そうな顔で見てくる。

「ああ、ちょうど良かった………桂花、華琳の姿を見なかったか? 火急の用事なんだ」
「火急の用事………? だとしても、教えてあげる義理はないわね」
「………ん?」

今、俺の質問に答える前に、桂花のやつ、ちょっとだけ庭の方を向いたような気がする。ひょっとしたら、華琳はあっちに居るんじゃないか?

「そうか、知らないならいいや。それじゃあ俺はこれで」
「ちょ、ちょっと! 何でいきなり庭に出ようとするのよ!」

案の定、俺が廊下から庭に出ようとすると、桂花が慌てた様子で声を掛けてきた。これは、間違いないな。華琳は庭に居るんだろう。

「いや、別に俺がどこに進もうといいじゃないか。それに、桂花が言外に、こっちに華琳が居るって言ったような気がするからなぁ」
「だ、誰もそんな事は言っていないでしょう!?」

俺の言葉に、慌てたような表情をする桂花。なんというか、分かりやすいタイプだよなぁ。っと、何にせよ、今は華琳に会うことが先決だ。
なにやら喚く桂花を放っておいて、俺はその場を駆け去った。一刻も早く、華琳にこの書類を届けなければ………!

「ちょっと、待ちなさいって言ってるでしょう!? まったく………本当に、バカなんだから」



庭に出てみるが、華琳の姿は見当たらなかった。おかしいな、桂花の態度からして、こっちにいるものとばかり思っていたけど。
そんなことを考えていると、向こうの方に、ちらりと華琳らしき姿が見えた。俺は、華琳に向かって駆け寄りながら、声をかける。

「おーい! 華琳――――うわ!?」

華琳に駆け寄ろうとした瞬間に、足元の感覚が消えた。何事かと思っているうちに、俺は落下すると――――ばしゃーんと音を立てて水の中に落ちた。
なんというか、これってひょっとして………落とし穴か!? 穴の深さは5メートルほどで、ジャンプしても、穴の縁には届きそうにはなかった。

「いてて………なんなんだ、これ」
「ふふ………引っかかったわね、北郷! 思わせぶりな態度をとれば、きっと庭を通ると思っていたわ!」

と、頭上を振り仰ぐと、そこから覗くのは、獣耳のフードをつけた顔――――どうやら俺は、桂花の作戦に引っかかってしまったらしい。
しかし、けっこう深い穴だけど、良くここまで掘ったものだよなぁ。変な執念を持つと、人はここまでの力を発揮できるという見本である。

「別に、大したことじゃないわよ。あんたの部下に、これも仕事だって言って掘らせたの。ものの四半刻も掛からなかったわ」
「………真桜」

ちょっとは何の仕事か疑えよ………そんな事を思いながら、俺は頭を抱える。それにしても、腰から下が水浸しで気持ちが悪い。
別に、油とかそういうわけじゃなさそうだけど、服を着たまま水に入るのは、珍しい経験だ。まぁ、ムカデや何かの類が入っていないだけ、ましな方だと思うんだけどな。

「それにしても、大掛かりな仕掛けの割りに、落とし穴の中身は大したことがなかったな」
「…し、仕方ないじゃない。華琳様の前例もあるし、あんた以外が引っかかったら、大変な事になるもの」
「俺は良いのかよ!」
「当然じゃない。華琳様に付きまとうあんたに、情けや遠慮は無用よ。しばらくの間、そこで反省すると良いわ」

そんなことを言って、得意そうに胸を張る桂花。見事に落とし穴にはめて上機嫌なのは分かるけど………少し詰めが甘いよな。

「そうもしていられない、事情があるからね………よっ、と」
「え、ちょ、ちょっと!? 何で!?」
「何でって言われても、真桜が掘った時にも、多分こうやって出てたと思うんだけどなぁ」

穴の直径は、俺の肩幅よりも僅かに広いくらい。つまり、両腕と両足を横に伸ばして突っ張れば、上れない事もなかったのだった。
何十メートルもやれというなら無理だけど、穴の縁に手が届く所で、右手、左手と縁に手を掛ければ、それ以上無理な体勢をする必要もなかった。
よっ、と力を込めて、落とし穴から身体を脱出させる。桂花は、憮然とした表情で………穴から抜け出した、俺をにらみつけたのだった。

「山猿ね、まるで」
「ひどい言われようだな………」

吐き捨てるような桂花の言葉に、さすがに憮然となる俺。しかし、そんな俺の表情など素知らぬ顔で、桂花は偉そうに胸を張って俺を睨みつけたのだった。

「ともかく、これで懲りたでしょ? これ以上、華琳様の周りをうろつくというのなら、今度はもっと深い落とし穴に落としてあげるわ! それが嫌なら、諦める事ね」
「諦めろ、って言われてもなぁ………」

さすがに、こっちとしても華琳に仕事の報告をしなければならないのだし、そう簡単に投げ出すわけには行かなかったのである。
と、そんなことを考えていると、桂花の背後に人影が現われた。桂花の方は気づいていないようだけど、あれは………。

「………呆れた。まだ懲りていないのね? それなら、華琳様に付きまとう事を後悔するくらいの酷い目に――――」
「私が、どうかしたのかしら?」
「ひっ、か、華琳様っ?」

桂花の背後に立っていたのは、怪訝そうな表情をした華琳である。どうやら、さっきから怒鳴っている桂花の叫び声を聞いて、こちらに来たようだった。
何にせよ、華琳が姿を見せてくれたというのなら、ちょうどいいや。さっさと報告書を渡すとしよう。

「随分と珍しい組み合わせだけれど、いったい何があったのかしら?」
「ん、いや、大したことじゃないよ。それはそうと、華琳に渡す報告書、今日が期限だったよな」
「………ええ、そうよ。ひょっとして、もう提出できるのかしら?」
「ああ。報告書なら、ズボンのポケットに――――」

そう言って、俺はズボンのポケットから、折りたたんだ報告書を取り出した………のだが。
先程の落とし穴のせいだろう。腰から下がずぶ濡れになったせいで、紙に墨汁で書かれた報告書は、ものの見事に滲んで読めなくなっていたのであった。

「………あったんだけど、すまん。不慮の事故で台無しになった」
「――――…」
「――――ひとつ、聞きたいんだけど」

俺の言葉に、気まずそうに沈黙する桂花。華琳はというと、少しの間、考え込んだ後で………俺の傍にあった穴を指差して眉をしかめた。

「そこの穴は、ひょっとして、落とし穴なのかしら? 私は確か、城内に罠設置は禁止って言っておいたはずよね、桂花?」
「は、はい………」
「それを、また懲りずに落とし穴なんて仕掛けるなんて………今度は、もっと厳しいお仕置きの方がいいのかしら?」
「も、申し訳ありません! 華琳様!」

怒りの表情の華琳に、真っ青になって頭を下げる桂花。この前、桂花の落とし穴に引っかかりそうになった事もあり、華琳の怒りは大きいようだ。
それに、華琳は城内に罠を設置するなと命令したのである。君主の命令を部下が無視したとあっては、矜持が収まらないのだろう。
このままだと、桂花が酷い目にあいそうだし、助け舟を出した方が良いかな? 被害にあった俺が、桂花を助けるというのもおかしな話だけど。

「あのさぁ、ちょっと良いか、華琳?」
「………何よ? 言っておくけど、嘆願は認められないわよ。私の命令に背いたのだから、それ相応の罰を与えるのは当然の事ですもの」
「うん、まぁ、それは分かるんだけど………出来れば俺も、一枚かませてもらいたいと思って」
「………なんですって?」

俺の言葉に、華琳は意外なことを聞いたとでもいうように、怪訝そうな顔をする。よし………とりあえず、これで話の引っかかりは、つけることが出来たな。
まともに桂花を助けようとしても、突っぱねられるのがオチだろう。ここは、俺も話に乗って、なるべく桂花の罪が軽くなるように仕向けるしかないだろう。

「だって今回、被害にあったのは俺だろう? それだったら、俺も桂花に罰を与える権利があると思うけど」
「ふむ――――それも、そうね」
「か、華琳様っ!? ………北郷っ!」

華琳の言葉を聞いて、桂花が俺を睨みつけてくる。出来れば、俺の真意を伝えておきたい所だけど、華琳の前だし、そうも行かない。
とりあえず、桂花の視線は気にしない事にした俺に、華琳は挑むような目線を向けながら、問いを投げかけてきたのだった。

「それで、一刀は桂花にどんな罰が相応しいと思うのかしら?」
「そうだな………とりあえず、俺の報告書を作り直すのを手伝ってもらおうと思うんだけど。壊したものは、責任を持って直さなければいけないからな」
「報告書、ねぇ………まぁ、あなたと二人っきりというのも、桂花には良い薬でしょうね。それで、他には? まさか、それだけってわけではないのでしょう?」

華琳が、面白そうに目を細めて俺に聞いてくる。ここが正念場だろう。甘いことを言えば華琳を呆れさせるだけだろうし、あまり酷い事を桂花にするのも気が引けた。

「後は、そうだな………今日一日、俺の言うことには絶対服従ってのはどうだろう? もちろん、必ず一回以上は、いやらしい事をするという条件で」
「絶対服従か――――面白いじゃないの。それじゃあ、明日の朝日が昇るまでは、桂花は一刀の言うことに従う事。良いわね?」
「ひっ………そ、そんな、嫌です! 華琳様、お許しください! こんな奴の言うことを聞いていたら、確実に妊娠してしまいますっ!」

華琳の言葉に、桂花は必死の形相で嘆願をする。確かに、条件だけを聞いているとかなり酷そうだからな。だけど、許しを請われた華琳はというと………、

「おだまりさないっ! そもそも、貴方が罠なんて仕掛けなければ、こんな目にあうこともなかったのよ!」
「ひっ………!」

雷鳴のような一喝で、桂花を黙らせたのであった。本質的に優しい部分があると言っても、信賞必罰を是とするのは、華琳の性根だろう。
怯んだような顔をする桂花………華琳は、桂花に対して言い聞かせるかのように、溜め息をつきそうな表情で言葉を続けた。

「これを機に、少しは一刀とも親睦を深めれば良いわ。春蘭とだって付き合えているのだし、私としても、その方が気苦労が減るのだからね」
「うぅ………華琳様、無理に決まってます」

泣きそうな表情で、そんな事をいう桂花。華琳はというと、そんな桂花の泣き言を無視するかのように、俺のほうに顔を向けて、笑みを浮かべたのだった。

「そういうことだから、桂花は貴方に任せることにするわ。多少の無茶は構わないけど、壊したりはしないでちょうだいね」
「あ、ああ」
「それじゃあ、報告書が出来たら私の部屋まで持ってきなさいな。吉報を期待しているわよ」

そう言うと、颯爽とした足取りで歩き去っていく。聡明な華琳のことだから、俺の考えは多分、見通されているんだろうなぁ。
華琳が歩き去った後に残ったのは、がっくりと落ち込んだ様子の桂花と、落とし穴、それと、下半身をずぶ濡れにした俺であった。

「さて、それじゃあ………」
「ひっ、な、何よ! 早速、その欲望に満ちた頭を満足させようとでもいうの!」

俺が声をあげると、桂花は怯えた様子で後ずさった。とりあえず、桂花の事は置いておいて周りを見渡す。周囲の茂みの中に、それはすぐに見つかった。
山盛りの土が、小山のように盛ってある。あの深い落とし穴を掘る時にできた土砂は、かなりの量であるようだった。

「まずは、この落とし穴を埋めるとしよう。当然、桂花にも手伝ってもらうからな」
「はぁ? なに言ってるのよ。そんなのアンタがやれば良いじゃないの」
「ほらほら、文句を言わない。俺の命令に絶対服従なんだろ? それとも、桂花が言うことを聞きませんでしたって報告してもいいのかー?」
「ぐっ、ひ、卑怯よ! 北郷っ」

茶化した口調で俺が言うと、桂花は悔しそうな表情で下唇を噛む。さすがに、華琳に変なことを言われては、たまらないと思ったんだろう。
渋々といった様子で、スコップを手に取る桂花。とりあえず、後に報告書の作成も控えているわけだし、早いところ終わらせてしまうとしよう。

「しかし、あれだけの量を運ぶとなると、けっこう手間が掛かりそうだな………どうしたものかな」
「………それなら、良い案があるのだけど」

俺の呟きを聞いて、そんな事を言いだす桂花。良い案って言っているけど、まともな提案なんだろうな?

「まぁ、聞くだけは聞いておくけど、どんな方法なんだ?」
「作業を手分けして行おうって案よ。土をここまで運ぶ作業と、穴を埋めるの作業を分担でやれば、それぞれの負担が減ると思うの。私は、穴を埋める作業をするわ」
「………ふむ。桂花にしては妥当な案だけど、つまり、俺があの土の山を、ここまで持ってくるって事だよな?」
「ええ、その通りよ。まさか私に、土木作業をやらせようってんじゃないでしょうね?」

桂花はそう言うと、呆れたように俺を見てくる。桂花へのお仕置きというだけなら、土運びをさせるのもいいかもしれないけど………。

「――――分かったよ。物事には適材適所があるだろうしな。ちょっとそこいらから台車を持ってくるから、少し待っててくれよ」
「……あら? 珍しく、物分りがいいのね? もう少し渋ると思ったんだけど」

俺が運ぶものを探そうと背を向けると、肩透かしを食らったのか、桂花が怪訝そうな顔で聞いてきた。桂花の質問に、俺は、肩をすくめて答える。

「他にもやる事が残っているからな。変なところで桂花を疲れさせたら、まずいって思っただけだよ」
「やる事って………本音が出たわね、このケダモノ!」
「――――報告書の作成だよ!」
「…なんだか、一瞬、間があったように聞こえたのは、気のせいならいいのだけど」

俺の言葉を聞いて、不安そうな表情になる桂花。ごめんなさい、ちょっとだけ別のことを考えてました。
しかし、それを正直に言ったら、本当に桂花が逃げ出しそうだったので、俺は肩をすくめて、その場を離れる事にしたのだった。

幸い、土を運ぶための荷車は直ぐに見つかり、俺と桂花は手分けをして、落とし穴を埋める作業を行ったのだった。
作業自体は単調であり、また、思ったほどの量でもなかったため、それほど時間をかけずに穴を埋めることが出来た。
その後、俺の部屋に移った俺と桂花は、報告書の作成のための作業を始めたのである。
俺の部屋に行くのを最初は渋っていた桂花だが、俺を一緒にいる所を、他の面子に見られたくないらしく、渋々であるが、納得したのであった。

「………ちょっと、もう少し離れて座りなさいよ! 伝染ったら、どうしてくれるのよ」
「なんだよ、伝染るって。そんなこと言ってもな………並んで見ないと、書類の内容が分からないだろ?」

とはいえ、それで桂花が心を許したというわけでもなく………俺の隣に座った彼女は、さも嫌そうな表情で俺に文句を言ってきたのであった。
まぁ、好きか嫌いかを置いて考えれば、桂花は優秀な文官であり、俺の書いている報告書の間違っている部分も、直ぐに示唆してくれるのだった。
………別の言い方をすると、俺の書いている書類を、とことん駄目出ししてくるとも言えたのだったけど。

「ほら、そこの文字を書き間違えているわ。それと、この文章は、前後逆に書くのが正しいのよ。まったく………なんで私が、こんな事を教えなくちゃいけないのかしら」
「それは、自業自得だと思うけど………でも、意外だな。桂花のことだから、俺に真面目に教える気にはならないとか言いそうだと思ったけど」
「しょうがないじゃない。この報告書は、華琳様に提出するものでしょ? 私が手を貸すのは華琳様も知っているのだし、不備があったら、私の監督責任になるもの」

俺の疑問に、さも仕方がないと言った風に、肩をすくめる桂花。まぁ、言いようを変えれば、華琳のためなら手を抜かないと言っているんだし、それで良いだろう。
先程、一度は書いたということもあり、桂花の手伝いもあって………報告書の方は簡単に作成する事ができた。後は、これを華琳に持っていくだけである。

「よし、これで完成だな。手伝ってくれて、ありがとう、桂花」
「言っておくけど、北郷のためなんかじゃないのよ? 華琳様の命令だから、仕方無しに手伝ったのだから、勘違いしないでちょうだい」

桂花は俺の言葉に、そんな風に憎まれ口を叩く。これが照れ隠しならともかく、桂花の場合本気で言っているからなぁ。
まぁ、だからこそ桂花らしいといえるんだけど。これがいきなり、俺に対してデレデレとしてきたら、逆に怖い。多分、実際に見たら、回れ右して逃げるだろうな。

「まぁ、それでも、お礼は言っておくよ。手伝ってもらった事は確かなんだし、そういうことの筋は通すべきだろうからな」
「へぇ………礼儀知らずの野蛮猿と思っていたけど、多少は分かっているじゃないの。嫌いな相手に礼を言えるほどには、子供じゃないのね」
「子供扱いされても困るんだけど。それはともかく、別に嫌いな相手ってわけじゃないんだけどなぁ」
「――――? …何を言っているの?」

俺の呟きを聞いて、怪訝そうな表情をで質問をしてくる桂花。まぁ、誤解されたままでも構わないんだけど、聞かれたことだし、答えることにしよう。

「いや、だから………俺は桂花のことを嫌っているわけじゃないって事だけど。むしろ、好きな方だし」
「はぁ? 何を言っているのよ!? やめてよね、気持ち悪い」

大真面目な表情で、心底嫌そうな顔をする桂花。うん、まぁ、分かっていた事なんだけどね。しかし、面と向かって気持ち悪いと言われると、けっこう辛いなぁ。
だけど、それが普通なんだよなぁ。この世界に来てからというもの、ちやほやされる事が多かったから、忘れがちになりそうだけど…桂花の反応はしごく真っ当なものだ。
誰も彼もが、無条件で俺のことを好いてくれるとも限らないのだし、桂花の態度は、俺にとってよい戒めといえるものだった。

「それは、すまないな。でも、桂花は一方的に俺の事を嫌っているだろう? だったら、俺が一方的に桂花のことが好きでも問題ないんじゃないかな?」
「………だとしても、普通は自分のことを嫌っている相手を好きとは言えないわよ。ひょっとして、北郷って変態なのかしら?」
「桂花に変態って言われてもなぁ…」

間違いなくマゾな女の子に変態と言われるのは複雑な気分だけど、確かに、少しは変なのかもしれない。でも、やっぱり桂花の事は嫌いじゃないのだから仕方がないよな。

「まぁ、俺が桂花のことをどう思っているかは、どうでもいいだろ? 好きだろうと嫌いであろうと、桂花の俺への態度は変わらないんだろ?」
「当たり前よ」
「なら、特に拘る必要もないだろ。さぁ、まずは華琳に報告書を渡しにいこう。その後で、もう一度この部屋で、お互いの仕事をするとしようか」
「………って、これで終わりじゃないの?」

俺の言葉に、顔をしかめる桂花。確かに、報告書の件は終わったけど、これで終わりというわけには行かないのであった。
華琳から桂花のことを任されているのだし、まだ、一日が終わったというわけではなかったのである。

「無茶な命令は言わないつもりだし、一緒にいるくらいは、我慢をしてくれよ。そもそも、あのままだったら華琳に、どんな無茶な罰をされてたか分からなかっただしさ」
「………でも、華琳様の与えてくれる罰だったら、そっちの方が良かったかもしれないわ」
「どうかな………? 桂花を喜ばせるための罰じゃないんだし、嫌がらせるために、桂花が苦手とする相手に、罰を与える役目を命令すると思うけどな」
「ぅ………」

俺の言葉に、顔を曇らせる桂花。実際に、俺自身が飛び入り参加した先例もあり、華琳以外から罰を受けるという可能性を容易に考えることができたらしい。

「そういうわけだから、とりあえず今日のところは俺で勘弁して欲しいな。どうしても嫌っていうなら、華琳に他の相手を探してもらう事にするけど」
「分かったわよ………前みたいに犯されるにしても、北郷は男にしては、まともな方なんだし、我慢するわよ」
「そうしてくれると、助かるよ」

憮然としながらも、頷く桂花。それにしても、男にしてはまともっていうのは、それなりに評価してもらえていると考えていいんだろうか?
まぁ、あくまでも我慢できるレベルなんだし、そんなに喜べるものでもないんだろうけど、最初に比べれば、桂花も俺を認めてくれているようで、少し、嬉しかったりする。

「さて、それじゃあ華琳のところに行くとしようか。この後も、いろいろとする事があるからな」
「色々と、って………やっぱり、そんなことを考えていたのね、このケダモノは」
「否定はしないよ。桂花の言葉を借りると、桂花は美しくて聡明だからな。それは、邪まな気持ちもわくだろ、普通に」
「………ほんの少しでも、見直した私が馬鹿だったわ。万年発情男ですものね、北郷は」

そういうと、桂花は肩をすくめる。だけど、気のせいか………その言葉に含まれる毒は、いつもよりも多少は薄らいでいるように感じた。
何だかんだで俺も桂花も、お互いに相手を認めているんだろう。恋人というには甘さがないけど、仲間としての関係は、充分に築けているんじゃないかと思う。
それはさながら、某ト■&ジェ○ーのように、仲良く喧嘩が出来る関係であり、俺としては充分に、満足のできる間柄だったのであった。



――――終、ではなく



「………桂花は、まだ来ないみたいだな」

その日の夜、仕事を全て終えて食事も済ませた後で、俺は自分の部屋で桂花が来るのを心待ちにしていた。
華琳に提案した絶対服従の命令で、桂花と俺は一度はエッチな事をしなければならない事になっていた。まぁ、俺がそう提案したわけだけど、それは言わない約束である。

「必要ないとは思うけど、身支度をしてくるわ。北郷なんかに必要ないとは思うけど、私としても、色々と考える時間が欲しいからね」

そう言って、桂花が部屋を出て行ったのは、しばらく前である。ひょっとしたら、そのまま戻ってこないかもしれないという不安はあった。
……それならそれで、仕方がないとは思うのだけど、何となく、今日の桂花は、約束を反故にする事はないように思えた。
そんなことを考えていると、扉がゆっくりと開かれて、桂花が顔を覗かせた。いつも通り、反抗的な目で俺を見つめてくる。

「来てあげたわよ、北郷」
「ああ、いらっしゃい。ちゃんと来たんだな、桂花。ひょっとしたら、来ないんじゃないかとも思っていたけど」

部屋に入ってきた桂花に声をかけると、俺の言葉が気に入らなかったのか、桂花が顔をしかめた。

「私だって、来たくは無かったわよ。でも、華琳様の命令なんだし、仕方がないじゃない」
「その事なんだけど、口裏を合わせるって事は考えなかったのか? 別に、どうしても嫌だっていうなら、それでも良いと思うんだけど」
「無理よ。華琳様に報告をするように義務付けられているんだし、華琳様は北郷にも聞いてくると思うわ。北郷が臨場感のある嘘をつけるとは思えないもの」
「………それはまぁ、そうか」

普通の相手なら、抱きましたって報告で済みそうだけど、華琳のことだし、桂花とどんな事をしたのかと、根掘り葉掘り聞いてくるだろうな。

「そういうわけだから、どうしてもしなければならないのよ。私としては、今、この場で北郷が頓死してくれるのが望ましいけど、無理なんでしょ?」
「…あたり前だろ。というか、人の死を望むなよな」
「ちっ」

舌打ちをしたよ、この人は。まぁ、もともと、甘い関係を望める相手でもないわけだし、別にいいんだけど。

「まあ良いや。とりあえず、準備は出来たってことでいいんだよな、それじゃあ」
「ちょっと待ちなさいよ。誰も北郷に抱かれるとは言っていないわ」

桂花を抱き寄せて、ベッドに運ぼうと腕を伸ばす俺だったが、桂花はそんなことを言いながら、俺から身を離した。

「え? でも、華琳の命令には従うんだよな。だったら、いやらしい事はするんじゃないのか?」
「しないとは言っていないわ。でも、北郷に抱かれなければならないとは、言われていないわよ」
「………意味が分からないので、説明してくれると嬉しいんだけど」
「分からないの? つまり、私が今から自分で自分を慰めるから、それを見て北郷が興奮すればいいのよ。そうすれば抱かれなくても良いでしょう?」

ああ、なるほど。つまりオナニーを見せるから、俺は、それを見て我慢しろということらしい。
桂花の自慰シーンも貴重だろうけど、抱けると思っていた俺としては、少々、肩透かし気味であった。そんな事を考えている俺を尻目に、桂花はベッドに向かう。
俺の部屋にあるベッドに腰掛けると、桂花はクンクンと鼻を鳴らす。一応、準備の為にベッドの周囲に香を焚いておいたのだけど、どうやら正解だったようだ。

「ふぅん、北郷が使う寝床にしては、良い匂いがするじゃないの。香を焚いておいたのね、良い心がけだわ」
「ああ。桂花は特に気にしそうだったからな。敷布も新しいものに替えておいたから」
「………本当に気が効くのね。いったい、何人の女性にこういうことをしてきたのかしら」

少々、呆れたように目を細め、桂花がそんな事を聞いてくる。プライベートな事なのだし、俺としては、できることなら追及されたくない事ではあった。
とりあえず、これ以上追求されるのも気まずかったため、俺は急かすように、ベッドに腰掛けた桂花に言葉を投げかけた。

「それより、自分でするんだろ? だったら、早く脱いで欲しいんだけど――――というか、脱げ」
「なっ………! 命令される筋合いは――――ぁ」

俺の言葉に、怒りの声をあげそうになった桂花だけど、すぐに絶対服従の命令を思い出したようだ。眉を吊り上げているものの、不満を飲み込んで俺を睨んでくる。

「理解してくれて助かるよ。俺は目をそらすつもりは無いから、そのまま脱いでくれ。それくらいの役得は、あってもいいだろ?」
「この、弩助平万年発情男が………分かったわよ。脱げばいいんでしょう?」

俺の言葉に忌々しそうに呟くと、桂花はベッドから立ち上がるとズボンに手を掛ける。そうして、両手で下着ごとズボンを足首まで下ろした。
ベッドに座りなおし、足首に掛かった衣類を抜き取る桂花。滑らかな太腿や、可愛らしいお尻などが目に飛び込んできて、俺を否応無く興奮させた。

「ほら、脱いだわよ。これで良いでしょ………って、ちょっと、股間を盛り上がらせないでよ! 汚らわしいっ」
「そんなこと言われたって、無理だろ。丸見えなんだしさ。それより、早く始めてくれよ」

俺の股間はというと、桂花のセミヌードを見て、すっかり元気になっていたのである。興奮し始めた俺に急かされて、桂花はベッドに腰掛けながら自慰を始めたのだった。

「ふぅっ………んっ………くっ………」

細く繊細な指が、股部の中心にある割れ目をなぞる。花弁に指を這わし、突起を摘み上げて、快感を沸きあがらせる桂花の手つきは慣れたものだった。
きっと、華琳に苛められない夜は、こうやって自分で無聊を慰めていたんだろう。身体の奥から蜜があふれ出し、室内に徐々にではあるが、桂花の匂いが立ちこめる。
それは、熟れた果実のような甘い香り。すぐにでも、その果実を毟り取りたいという衝動に駆られながらも、俺はそれを押さえ込みながら、桂花に尋ねる。

「どうなんだ、桂花? 興奮しているみたいだけど、あまり気乗りはしていないようだな」
「あ、あたり前でしょ………北郷。華琳様の見ている前ならともかくっ、何でアンタで興奮しなければいけないのよ………こ、これは、義務みたいなものなんだから」
「ふぅん。なるほどなぁ………つまり今は、俺の為に自慰をしていてくれたんだ」
「ちょ………へ、変な風に取らないで………んっ」

俺と会話をしながらも、股間をいじる桂花の指は止まらない。生意気な口とは反対に、身体の方はしっかりと反応しており、濡れた股間を弄る音が、部屋に響いていた。
興奮で上気した桂花の顔は色っぽくて、とろんと緩み始めた目元が、生唾を飲み込みたくなるほどに蠱惑的だった。
その美しさをもっと際立てたくなった俺は、襲い掛かりたい衝動をぐっと我慢して、桂花に向かって言い放った。

「それじゃあ、華琳のことを思って自慰をしたらどうなんだ?」
「ふぇ………華琳さまのっ………?」
「ああ。俺はそこまで気にしないし、その方が桂花のほうも気が乗るんだろ? ほら、いつもみたいに華琳に抱かれている所を想像して………」
「っ………華琳さま………華琳さま………! お許しくださいっ………」

想像するのが恐れ多いのか、それとも、想像の中でも苛められているのか、桂花は震える声で呟きながら、自慰を更に荒々しいものにする。
人差し指と中指を揃え、身体の奥をかき乱すように動かす。おそらく、俺に処女を散らされてからは、身体の奥の方まで、自慰の対象として使っていたのだろう。
激しく出入りする指と、荒げる息………そうして唐突に、限界がおとずれたのか、桂花の身体が仰け反って、びりびりと瘧のように震えたのだった。

「っ…――――ぁ――――あ――――!」

言葉にならない絶叫を上げながら、俺の目の前で絶頂を迎える桂花。感じすぎたのか、その瞳には涙を浮かべて、脱力したようにベッドに仰向けに倒れこんだ。
はぁ、はぁ………と、乱れた呼吸を静めようとする桂花。むき出しになった下半身の花弁は、まだ物足りないと言った風に、ヒクヒクと蠢いている。
正直、見ているのは、そこまでが限界だった。最初は、見ているだけでもいいとは思っていたのだけど、あまりにも桂花が魅力的だったのである。
俺は、ベッドに足早に近づくと、寝転んだ桂花に覆いかぶさった。余韻に浸っていた桂花だったけど、俺が近寄った事に気づき、慌てたように声をあげた。

「ちょ、ちょっと北郷、どういうつもりっ………手は出さないって約束でしょう?」
「そのつもりだったけど………すまん、桂花が魅力的で我慢できそうに無いんだ。確約はしていないわけだし、抱かせてくれれば嬉しいんだけど」
「っく………はぁ………結局、こうなるわけね。北郷相手に、理性を期待した方が、間違いだったんでしょうね」
「………面目ない」

桂花の愚痴めいた言葉に、返す言葉も無く頭を下げる俺。発情男って言われても、しょうがないじゃないか。男の子だもの。

「勝手にすればいいじゃない。今日は北郷に絶対服従しなければならないんだから。何を命令されたって、受け入れるしかないんだもの」
「いや、まぁ、そうなんだけど」

桂花の言葉に、なんだかなぁ、と俺は首をひねる。何故か、微妙に物足りないと思うのはどうしてだろうか。多分、それは桂花が素直すぎるからだろうけど。
なんというか、嫌がる桂花を犯した方が楽しいと考えてしまうのは、俺が外道なんだろうか? いや、これは桂花のほうに問題があるんだろう。
今回だって、もっと露骨に嫌がっても良い位なのに、犯されるくらいなら大丈夫と言わんばかりの口調である。ひょっとしたら、慣れてしまったんだろうか?
という事は、犯される以上の事なら、きっと過剰に反応するんだろうな。そんなことを考えながら、俺はペニスに手を添えると、桂花の花弁に押し当てた。

「本当に、何でも命令を聞いてくれるんだな? だったら………俺の子を孕んでくれよ」
「なっ――――!? ちょっと、北郷………冗談じゃないわよ、何でアンタの………んんっ!!」

俺の言葉に、桂花が血相を変えたのを見計らい、俺は腰を思いっきり突き上げた。ぐずぐずに濡れた桂花の膣は、俺のペニスを受け入れながら、きつく締め付けた。
うん、ようやくいつもの桂花に戻ったみたいだな。涙目になりながら、俺の胸に手を当てて、押し返そうと懸命になる桂花は、なんというかマゾ可愛かったりする。

「くっ、離れなさいよ………あ、アンタなんかに妊娠させられてたまるもんですか! っ、動かないでよっ!」
「いや、そう言われてもなぁ。どうせ出すのは一緒なんだし、気分の問題ってあるだろ?」
「だとしても、そんな事を命令されたくないわよ! だから、突き上げるのをやめなさいよぉ………!」

俺を押しのける力は弱々しく、桂花は涙目になりながら、俺が腰を突き上げるたびに、息を荒げて抵抗するように身じろぎをする。
繋がった部分から伝わる熱が、身体全体を燃やし熔かしていくかのようだった。競りあがってくる射精感を抑えながら、桂花の身体を堪能するように腰を振る。

「ひぁっ………駄目………孕んじゃう………汚らわしい男の毒液で汚されちゃうっ………!」
「はぁ………はぁ………桂花、そろそろイクからな! 受け入れろよ!」

限界が近いことを感じ、腰の突き上げを強めると、桂花は怯えるかのように震えながら、俺から逃げるようにベッドをずり上がっていく。
それを逃がさないようにと、細い身体を抱きしめながら腰を叩きつけると、桂花のほうも限界なのか、膣内がヒクヒクと震えていた。
俺に抱かれて絶頂を迎える事が嫌なのか、膣に出される事が嫌なのか………桂花は息を荒げながら、俺の胸を叩く。涙に濡れたその顔は、とても可愛らしく見えた。

「い、いやっ! 出さないでよぉっ…! やっぱり、あんたなんて嫌いよ、北郷っ!」
「ああ、そういう関係だろ、俺達は………嫌いでも良いんだ。俺を、受け入れてくれっ!」
「っ! 北郷っ………あんたなんか、あんたなんか………っ!」

絶頂の瞬間に、すがるものを求めてか、条件反射なのか、桂花は俺の身体に腕を回し、その両足を離すまいと、俺の腰にしっかりと絡めてきた。
桂花が絶頂に達したのと、ほぼ同時に、俺もこらえていたものを解き放った。どくどくと、精液が桂花の身体の中に注がれる。

「っ……ぁ………ぁぁ………出されてる、私、北郷に孕まされてる………」

放心したかのように呟くと、桂花は俺の腕の中で、ゆっくりと溜め息をついたのであった。



「っ、この最低男! 本当に妊娠したら、どう責任とってくれるのよ!」

つかの間の蜜月の時間が過ぎた後、俺は桂花に馬乗りになられて、首を絞められていた。ちなみに、いまだに俺と桂花は繋がっており、体勢的には騎乗位っぽかった。
桂花の手は俺の首に掛かっているものの、俺に散々抱かれて消耗したのか、その手には全然、力が入っていなかった。
なんというか、座敷犬に腹の上に乗っかられて騒がれている気分だった。犬と称するには可愛らしくて、繋がり方も艶かしいものだったけど。

「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。本当に妊娠すると決まったわけじゃないんだろ。それで、今日は危ない日なのか?」
「いいえ、安全日だと思うけど………でも、万が一って事があるでしょう!? もし妊娠していたら、責任を取って………死になさいよね」
「保険金詐欺かよ!?」
「ほけん………? ともかく、そういうわけだから、覚悟しておきなさいよね」

俺の言葉の意味が分からず、首をかしげた桂花だったが、怒りがおさまったわけでもなく、じろりとした顔で俺を睨みつけた。
まぁ、殺されるのは嫌だし、妊娠していない事を祈る事にしよう。そんなことを考えながら、俺は腰の上に乗っかっている桂花に疑問を投げかけた。

「その件は後で話し合うとして――――そろそろ、離れたらどうなんだ? 孕まされるのがいやなら、抜いた方がいいと思うけど」
「し、仕方がないじゃないの。腰がガクガクで、うまく動かないんだから! アンタが見境無く、3回も4回も膣で出すからいけないのよ!」

俺の言葉に、桂花は、そんなことを言いながら、不満の表情を顔に浮かべる。先程も射精を終えたばかりの結合部は、精液と愛液で、ドロドロに溶けているようであった。
繋がった腰の部分の事を意識すると、力を失っていたペニスが、再び硬くなりだしたのである。硬くなってきた俺のペニスを膣で感じたのか、桂花が顔をしかめた。

「ちょっと、また大きくなってきたんだけど………何とかして小さくしなさいよ、北郷!」
「いや、なんとかって言われてもなぁ。それじゃあ、遠慮なく」
「んぁっ………なんで腰を突き上げるのよ! ひっ………くぅ」

桂花の腰をつかんで突き上げると、結合部からじゅぷじゅぷと蜜音が漏れて、桂花が甘い声を出す。気持ち良さそうな表情の桂花に俺はのんびりと受け答えた。

「いや、だって小さくするんだろ? それなら、出すのが一番手っ取り早いからな」
「っ、そんなことして、今度こそ本当に孕んだらどうするのよっ! 責任を取る気、あるの!?」
「子供を育てろっていうのなら、覚悟はあるけどな。って、そんな事を言っている間に、もう出そうだっ………」

きゅうきゅうとペニスを締め付ける膣内は、まるで生き物のように蠢いていて気持ちがいい。快感に精液が迸りそうになる俺に、桂花は慌てたような顔をする。

「ひっ、駄目よ、出さないでよ、この早漏!」
「酷いな………けど、早く出るのも桂花のせいなんだぞ。そんな風に可愛らしく、腰を振るんだから」
「っ………こ、これは違うのよ! アンタから逃げるために抜こうと、頑張っているんだから!」

俺の腰の動きにあわせ、自然と腰を振っていた桂花は、俺の指摘に、慌てたように言い繕った。そんな桂花が可愛らしくて、俺は遠慮無しに腰を突き上げる。
何度も桂花の膣で果てたというのに、今回の射精もまた、長くなりそうな気がした。しびれるような快感を腰に感じ、俺は桂花の腰をつかんで、思い切り引き寄せた。

「あひぃっ! お、奥に、子宮が押されっ………」
「っ」

どぷどぷと、子宮の入り口に口付けをした亀頭の先から、白濁の液体が桂花の身体に染み渡っていく。身体の中のもの全部が、桂花の中に移って行くような快感だった。
俺の快感もかなりのものだったけど、それ以上に感じているのは桂花のほうだった。身体の最奥にせいを注がれ、のけぞりながら、ぶるぶると身体を震わせる。

「うぁ………ぁ、ぁぁぁぁぁあぁぁぁあっ!」

盛大にイって脱力したのか、桂花は俺の胸に倒れこんでくる。俺がその頭を撫でると、少しだけ困ったような顔をしたけど、文句をいうこともなかった。
それからも、桂花は俺に甘えるような仕草を見せる事はなかった。それでも、睦みあいを通して、少しは気を許してくれたんじゃないかと思う。



「すぅ………すぅ………」

とっぷりと日が落ちた夜中――――さすがに疲れ果てたのか、桂花は俺の腕を枕に、寝息をたてていた。
何度も桂花の膣に出した俺も、さすがに精も根も尽き果てて、今は大人しく、桂花の隣で横になっている。

「やれやれ、黙って寝ているだけなら、可愛いんだけどなぁ」
「………むにゃ、うるさいわね、反省しなさいよぉ………」

夢でも見ているのか、桂花はむずがる様子を見せながら、そんな事を呟く。その仕草が微笑ましくて、俺は思わず噴出していた。

今日みたいな事は、そうそう無いだろう。明日の朝日が昇れば、いつもの関係に戻る事になっている。
まぁ、それでも、そのことに不満も不安も無かった。お互いの気持ちは、好きと嫌いの平行線――――だけど、その関係が俺と桂花にはしっくりときていたのだった。

華琳を好きな女の子として、俺のことが嫌いな女の子として、俺は桂花を敬愛していた。
桂花とは、仲間として、悪友として、胸襟を開く間柄にきっとなれるだろう。俺の隣で可愛らしく眠る桂花を見て、俺はそんな事を思ったのであった。



――――終

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