〜世界でいちばん青い空〜 

〜世界でいちばん青い空〜



物語よりX年後の夏――――…南栄生島の空港に、飛行機が到着した。リゾート地としては、そこそこ有名な場所に観光をしに来たのか、男女のグループの姿がある。

「うぁ〜、肩こったぁ………ねぇ、理くん、ホテルに着いたらマッサージお願いできる?」
「ちょっと夏夜さん! さりげなく理さんを誘惑しないでちょうだい!」
「ま、まぁまぁ、姫緒さんも落ち着いて――――って、ああっ!」
「理、疲れたでしょ? 荷物なら私が持つから、ほら、手を貸して」

まぁ、その男女比率が1:4という異様さはさておき、周囲にみなぎる空気がギスギスとしているのさておき、どう見ても普通の観光客である――――多分。
周囲の人々が好奇の視線で見つめる中、いたたまれないように長身を猫背にし、縮こまる男が一人。
周囲を華やかな女性に囲まれながらも、自信満々な表情をするでもなく、ひたすら肩身が狭そうな様子である。

「すみません…みなさんもうちょっと、静かにしてくれませんか」

真夏の南栄生島を舞台に、もう一度始まる、ひと夏の恋物語――――なんだろうか?
到底そんなロマンスを感じさせない空気の中で、芳村理の長い夏休みが、こうして幕を開けるのであった――――。

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