〜G線上の魔王〜 

〜序項〜



魔王こと、鮫島恭平の起こした事件により、セントラル街が壊滅状態に陥ってから、数ヶ月の時が流れた。
白鳥の親父さんを始めとする、建設会社の尽力により、セントラル外周辺は、緩やかながらも復興の道を歩み始めている。
警察は、今回の暴動に参加したと思われる少年達を探し出し、取調べをしては、処分を下しているらしい。

そういえば、栄一に聞いた所によると、橋本は少年院に送られるらしい。本人は警察の取調べでしらばっくれたが、つるんでいた奴らに主犯だと密告されたとか。
かくいう俺も、何度か警察に呼ばれては、取調べを受けることになった。

鮫島恭平の弟であるということもあり、警察も、俺に対して執拗な詰問を浴びせかけてきた。今回の事件に、関与していると思われたのだろう。
半ば、脅迫のような形で調書を取ろうとする警官もいたが、そんな高圧的な詰問にも、俺は表面上は穏やかに、知らぬ存ぜぬで通す事にした。

俺にとって救いだったのは、俺のアリバイを証明してくれるハルという心強い味方が居た事だろう。彼女は懸命に、俺の無罪を主張し続けてくれた。
白鳥や時田や椿姫。それに、権三の死により、日本に戻ってきた花音も、何度か警察に俺のことを聞かれたらしいが、彼女達もまた、俺の無実を主張してくれた。

そうして、冬の冷たい風が吹き止み、春の風が吹き始める頃――――警察からの、俺への事情聴取は終わりを告げることになった。
あくまでも、仮の措置であり、何か問題を起こした時は、また取り調べてやるからなと、捨て台詞を言われたものの、とりあえずの自由は確保できたようだ。
何にせよ、無事に進級できた俺は、ハルと同棲をしながら、学園に通うことになった。権三の死の跡目争いやその後のゴタゴタも多いが、何とかなるだろう。
手に入れることが出来た穏やかな日々、傍らにある大切な存在――――そして………ハルは未だに、ヴァイオリンを弾くことが出来ずにいた。