〜Fate GoldenMoon〜 

〜幸せの拘わり〜



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疲れきった身体を引きずって家へと帰ってきた。
渡されたお土産を持って、居間へとたどり着き、一息つく。

「あ〜……肩、こったなぁ……」
「そうね、なんか何年分も疲れた感じ……士郎、お茶入れてくれる?」
「あ、先輩、それなら私が」

桜の返答に、遠坂は、そう? とつぶやき、その場にだらりと寝そべった。
俺は、固まった肩を回し、疲れをほぐそうとするが、普段とは違った緊張感は、なかなか取れたものじゃない。

「でも、綺麗だったわよね、メディアさん」
「――――そうね、花嫁の魅力ってのは、確かにあったかもしれないわね」

藤ねえの言葉に、イリヤは認めないといけないか、という風にうなづいた。
事の発端は、この秋の日。うちの学園の葛木先生が結婚式を挙げることから始まった。

葛木先生、そして、花嫁の女の人であるメディアさんともに、ご両親、親族ともに懇意ではないらしく、そのため知人を多く招待した。
俺、藤ねえ、遠坂と桜は葛木先生に、イリヤとライダーは何故か、メディアさんの紹介で参加する事となったのだ。

「しかし、結婚式ってのがこんなに疲れるとは思わなかったわ……愛想笑いのしすぎで、顔が引きつっちゃってるし」
「それを言うなら、一番大変だったのは士郎ではないでしょうか? 式の始めから終わりまで、ずっとビデオを回していたんですから」

遠坂の言葉に答えたのは、ライダーである。とはいえ、俺はそんなに苦にはならなかった。
もともと、結婚式ってのには興味があったし、ビデオで結婚式の様子を撮影するのは、けっこう楽しかったのだ。


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「ビデオのほうはこちらで用意した。なに、そう硬くならなくていい。出来る限りとってくれるだけで充分だ」

葛木先生にそういわれたが、逆にそういわれると、使命感に燃えるのも確かだった。
そんなわけで、ビデオを回しつつ、俺は結婚式に参加したのである。ちなみに、場所は冬木市の駅前、ローレライと呼ばれる式場を使うことになった。

受付役は、藤ねえと一成が行った。一成は一生懸命に、藤ねえはいつもどおりに、訪れる招待客を相手にしていた。
ちなみに、それぞれ新郎新婦へと一言を貰っている。

「あ、葛木先生、ご結婚おめでと〜。きっと、素敵な奥さんなんでしょうね、うらやましいぞ〜」
「その……おめでとうございます。兄弟子とメディアさんが幸せになれるよう、今後もよろしくお願いします」

ぞろぞろと訪れるのは、うちの学園の生徒と、柳洞寺の人々であった。
その中で、うちの学園の生徒達に話を聞いてみた。まずは、遠坂と同じクラスの女子達。

「ああ、あの堅物の花嫁がどんなのか興味あってね。あ、これカットしといてね」
「蒔寺……すでにビデオが回っているぞ。ま、私もその点は疑問なのだがな」
「ふ、二人とも……あ、あの、ご結婚おめでとうございますっ」

蒔寺、氷室、三枝という苗字の女の子たちは、わいのわいのと興味深げに話をしている。
こうしてみると、学校組で年配の人は殆どいないようだ。もっとも年長者は藤ね…………、

「こらーっ、士郎! 忙しくなってきたんだから、手伝いなさいようっ」

藤ねえの言葉に、周囲から笑い声が起こる。
やれやれ、しょうがない、付き合わないと藤ねえが癇癪を起こしそうだな。

俺は藤ねえの言葉に苦笑し、ビデオの電源をOFFにした。


2/


結婚式場に入り、再びビデオの電源を入れる。
席の方は、大半は埋まり、あちらこちらで雑談が交わされている。

「こんにちわ、衛宮君。ビデオ係、大変そうね」
「ああ、遠坂。お前も来たんだな」

掛けられた声にビデオを向けると、画面の中で遠坂が微笑んでいた。
ちなみに、生徒の中には私服の格好もいるが、遠坂はいつも通り、制服姿でその場に居た。

周囲にカメラを向けると、何故かこっちを見ている人が多かった。
しばらく考えて、それが遠坂に向けられた視線だということを理解する。どうやらここでも、遠坂は人気者のようだった。

「それにしても、ここを何だと思ってるんでしょうね、せっかくの結婚式なのに、興味本位の輩が多いってのも、ね」
「いや、だってそれは皆一緒だろ。だって、興味がなきゃ、そもそもこんな所に来ないだろうし」
「――――あ、そうか」

愚痴っていた遠坂だが、俺の言葉に虚を衝かれたようにポカンとした表情を見せた。
もともと、俺や遠坂がこの場に来たのは、葛木先生が結婚式をあげるのが興味あったからである。

「まぁ、そう言われちゃしょうがないか……いまさら帰るのもなんだし、今日は良い子でいるしかないわね」
「ああ。がんばれよ、遠坂」

俺の言葉に、遠坂は、うー…………と何か言いたげに俺を見ていた。
しかし、すぐに気持ちを切り替えるようにため息を一つ。そうして、にっこり微笑むと、

「それじゃあ、またね。衛宮君」

と、意味深なことを言って、人垣の中に戻っていった。
遠坂もいなくなったので、俺は会場にカメラを向ける。殆どの席が埋まった会場で、遠坂たちの席だけ、まだポッカリと穴が開いていた。

席には、遠坂と桜が座っている。二人の周りには何名か、声を掛ける女生徒の姿があった。
ちなみに、その周囲には男子生徒が何名か、たむろっており、遠坂たちに声を掛けるチャンスをうかがっているようである。

「あ……」

あ、桜がこっちに気づいた。微笑んで手を振るので、こっちも振り替えす。
すると、桜の周りの女子が沸き立ち、なんか、周囲の空気が微妙に剣呑になった。俺、何かまずいことをしたんだろうか?

その時、周囲がザワッとざわめく音がした。カメラの先、皆の視線は俺の背後に注がれているようだ。
カメラを持ったまま、振り向くと――――、

「こんにちは、士郎」
「ヤッホー、シロウ! 会いたかった〜!」

スーツ姿のライダーと、いつもの貴族風の服装のイリヤがそこにいた。
イリヤの姿が、ビデオにアップになって――――え?

ごきっ!


「あれ、どしたの? シロウ?」
「イリヤスフィール…………いくらあなたの体重が軽いといっても、勢いをつけてのダイビングでは、士郎の首がもたないと思うのですが」

冷静な解説、ありがとう、ライダー。しかし、そういうことは、前もって言っておいてくれ…………。

3/


しかし、一体、どういうことなんだろうか、この組み合わせは…………。

「いや〜、やっと終わった終わった。ん、士郎、どうしたの?」
「藤ねえ…………この席の組み合わせは、藤ねえが考えたのか?」

席に着いた俺の問いに、隣の藤ねえは、ん? というような表情をみせ――――、

「ううん、式のプログラムとかは業者の人に任せたから、私は知らないけど?」

そうか、だとしたらこれは神様のいたずらとでも言うのだろう。よりにもよって…………、

「しかし、一体、どういう格好で来るのかしら、スタンダートなら、白いウエディングドレスでしょうけど」
「でも、その後、お色直しで和服とかに着替えるんじゃないでしょうか? 披露宴とかも行うんですし」
「ふ〜ん、日本の結婚式って、そういうことするんだ」
「――――――――」

遠坂と、桜と、イリヤ、ライダーに藤ねえに俺。それが、このテーブルの組み合わせだった。
他のテーブルを見ると、明らかに男だけのテーブルもあり、殺意のオーラすら届いてきそうである。

『それではこれより、新郎、新婦の入場を行おうと思います。皆様、扉のほうにご注目くださいませ――――』

「っと、そろそろか」

アナウンスの声に、俺はビデオ片手に席を立つ。
周囲を見ると、デジタルカメラを持った何人かも、良いアングルを得ようと扉のほうに近づいていった。

まぁ、このビデオカメラにはズーム機能もついているから、前に誰か立たなければ、問題ないだろう。

4/


そうして、扉が開く。その瞬間、声を失った。
周囲の人々も、ざわめくことを忘れ、その人に注目していた。

白磁のような肌、ウエディングドレスは、聖者の衣のように、その身体を多い、憂いを帯びた表情は、その清純さを際立たせていた。
純白の花嫁は、今の流行歌であるラブソングとともに、静々と会場の前方にあるステージへと歩いていく。

『なお、花嫁のエスコートは、新郎の弟さんの柳洞一成さんが行っています――――』

その言葉にはじめて、花嫁の隣を歩く、一成の姿に気づいた。
感極まった表情で、花嫁の手を引く一成。その表情は、なんだか舞いあがっているようだった。

壇上には葛木先生が立っており、花嫁はそこまで歩いていき、葛木先生に手を取られ、会場の中央にたどり着いた。

『それでは、お二人に盛大な拍手をお願いします――――』

その言葉に生じた拍手は、とても大きなものだった。

5/


式は、滞りなく進む。結婚証書への記入。婚約指輪の交換。ウエディングケーキに入刀。そして、誓いのキス――――。
カメラのフラッシュの中、感極まった花嫁のメディアさんは泣き出して、葛木先生になだめられるハプニングもあった。
そうして、会場の皆で集合写真を撮った後――――、

『それではここで、新郎新婦はお色直しのために席を外します。皆様、拍手でお見送りください――――』

そうして、拍手とともに結婚式は終わり、葛木先生とメディアさんは会場から出る。この後は、お色直しをして、結婚披露宴に移るのである。
二人が会場を出た後は、会場はざわめきを取り戻したように、あちこちで話し声が聞こえ始めた。

さて、それじゃあ会場の様子を、あちこち撮影することにしようか。



「よう、衛宮、がんばってるじゃないか」
「ん、ああ……美綴か。お前も来てたんだよな」

会場のあちこち、テーブルの上の料理や新郎新婦の座っている場所、そこいらでたむろしている生徒たちを撮っていた俺は、見知った相手にカメラを向けた。
レンズの先にいるのは、遠坂の友人で桜の先輩、美綴であった。

制服の遠坂とは違い、美綴は和服に身を包んでいた。胴着姿が似合うやつだと思っていたが、和服もなかなか似合っていた。

「そりゃそうでしょ、学校一の堅物を射止めた美人花嫁ってのを見たいと思うじゃないのさ」
「ああ、確かに俺もそう思った。で、実際に見た感想は?」

俺の言葉に、美綴は日本人形のような格好のその姿で、肩をすくめた。

「予想以上ね、同じ女として、ありゃ勝ち目はないわ」
「そうか? 俺が言うのもなんだけど、美綴もけっこう良い線いってると思うぞ」
「あ、そう? 衛宮が言うと、なんか説得力あるわね」

そういって、豪快に笑う和服少女。そういう仕草が似合うのは、やっぱり魅力的だと思うけどな…………。

「…………それはそうと、この会場、なんか寒くない?」
「え、そうか? 俺にしてみれば、暑いくらいなんだが……」

その時、美綴が急に不安げにあたりを見渡し始めた。しかし、俺は首をかしげる。
会場はクーラーが効いてるが、人の熱気のせいか、何気に暑く感じられるくらいだが――――、

「ん…………やっぱりなんか寒いな…………ごめん、衛宮。ちょっとトイレいってくる」
「あ、ああ。美綴、無理するなよ」

俺の言葉に力なく笑い、美綴は会場を出て行く。しかし、いきなりどうしたんだろうか。

「士郎。そろそろ席にお戻りください。桜が不満に思っています」
「っ、ライダー?」

どことなく棘のある声に振り向くと、そこには社長秘書よろしく、毅然とした表情のライダーが立っていた。
そういえば、式の間、ずっと席を立っていたからな、そろそろ席に戻ったほうがいいだろう。

6/


「シロウ、おそ〜いっ! ずっと、ず〜っと、何で歩き回ってるのよっ!」

席に戻るなり、開口一番不満を口にしたのは、イリヤであった。
桜も同じ思いなのか、イリヤをたしなめようとはせず、もの言いたげに、こっちを見ている。

「士郎、式を撮るのはいいけど、ちゃんと料理は食べなさいよね、料理が勿体ないんだから」

そういって、俺に注意を促したのは藤ねえである。
遠坂はと言うと、我関せずといった風に、出された料理に口をつけている。

俺は、テーブルに視線を向ける。そこには、海老を使った料理、海鮮類のスープ、寿司、ステーキなど、他にも様々な料理が並んでいる。
正直、なかなかおいしそうで、興味があるのだが――――、

『ただいま、お色直しが終了いたしました、皆様、扉のほうに注目ください――――』

その言葉に、食事は断念しなければならなかった。

「――――悪い。行かないと」
「またぁ? いいじゃないの、ちょっとくらいサボったって」

俺の言葉に、不満げに言葉を発するイリヤ。しかし、この場はそうもいっていられない。
そもそも、途中で放棄できるんだったら、最初からそうしているのだ。

「そういうわけには、いかない。これは、俺が任せられたんだから」
「――――――――」

俺の言葉に、それぞれ、皆が何か言いたげに俺を見る。そうして、

「ま、しょうがないか。昔っから、士郎は言い出したら聞かないんだからね」
「タイガ?」
「藤村先生――――?」

苦笑して、口を開いたのは藤ねえだった。藤ねえは、笑いながら、扉のほうを指し示す。

「ほら、いってきなさい。後は私が何とかしとくから、士郎は士郎のしたい事をしなさい」
「ん、悪い、藤ねえ。いってくるよ」

ビデオ片手に頷くと、その時、遠坂と目線があった。まったく、しょうがないわね、という笑み。
それを見て、勇気付けられた。証明が落とされ、スポットライトが扉に当たる。

さぁ、急がないと。残りの仕事も後少し。最後までしっかり、自らの仕事を貫こう――――。

7/


お色直しを済ませた二人を迎え入れるため、ドアが開け放たれる。
そうして、カメラを向けた先、花嫁の意外な格好に、呆然となった。

花嫁の頭にかぶるのは、ティアラではなく、黒い帽子。ドレスの色は紫、肩の部分がむき出しのドレスは、どこか妖艶そうなイメージをかもす。
それはまさに、奥様は魔女! というようなコスチューム。

葛木先生はというと……いつも見ている教師姿だった。

『お色直しは、魔女をモチーフとした夫婦生活というテーマで勧めさせていただきました。さぁ、テーブルのキャンドルに火をつけて回っていきます!』

そうして、一風変わっているが、どことなくお似合いのその二人は、キャンドルサービスの炎とともに、各テーブルを回る。
お祝いのクラッカーが鳴り、拍手が鳴り止まない。相変わらずの無表情の先生と、笑顔のメディアさんが印象に残った。

柳洞寺の住職のあいさつ、藤ねえのあいさつなどが続き…………披露宴の最後は、葛木先生のあいさつで締めくくられた。


「今回、私達の為にお集まり頂き、感謝の念に絶えません。
 小生は無骨であり、このような事になるのは、自分でも意外ではありますが――――、
 与えられる責任と、請け負う責務を放棄することなく、今後も生活を続けるつもりです。

 学園の教職員、並びに生徒の皆様、柳洞寺の兄弟子方、また、弟弟子の一成など、今後とも変わりなく付き合いをお願いします」

感極まるわけでもなく、その口調はいつも通り、どこかそっけないようで、重みのある言葉。
拍手とともに、会場では祝福の言葉が飛ぶ。それに対し、葛木先生はゆっくりと頭を下げたのだった。

8/


そうして、ほんとに最後の最後、花嫁のブーケ投げが行われる事になった。
ステージの前、一段下のところに女生徒が集まっている。みると、桜や遠坂、それにイリヤもその場に居た。

しかし、こりゃよく取れないな…………デジカメで、投げる場面だけでも撮ろうと、俺は女の子たちの後ろで、カメラを高く掲げる。

『それでは、花嫁によるブーケ投げを行います、どうぞ!』
「それでは……ええいっ!」

お、見える見える。後ろを向いて投げる花嫁さんの姿。そうして、ぽーんと飛んだブーケは――――、

『え?』
「え?」

あっけに取られた皆の声。あっけに取られた俺の声。俺の手には純白のブーケ。飛んだブーケが目の前にきて、思わず掴み取ってしまったのだ。
なんとなく、しらけたような空気、それを破ったのは――――、

「あ――――ってことは、次に結婚するのは衛宮ってこと?」

戸惑いながら口にしたのは美綴。その言葉に、周囲から失笑が漏れる。
しかし、なぜかその瞬間、何名かの目が鋭く光ったのを俺は見逃さなかった。まぁ、今更、どうしようもないんだけど。

そして、最後に新郎と新婦による、招待客の見送りで幕となった。
学園の生徒達、そして、柳洞寺の人々と、声を掛けていくのを俺はビデオに映す。

「士郎」
「ん?」

ちょんちょん、と肩をつつかれ振り向くと、そこには藤ねえの姿。
周囲はすでに、招待客は殆どおらず、数名を残すのみ。会場ではスタッフが後片づけを開始していた。

「何だよ、藤ねえ。あと、ちょっとで終わるんだし、藤ねえも早くあいさつしてこいよな」
「それよ。士郎、あなた自身は挨拶をしてないでしょ」
「……………………ぁ」

そういえば、ビデオを回すことで精一杯で、葛木先生やメディアさんに挨拶もしてないな。
俺の様子に苦笑を浮かべ、藤ねえは俺からビデオを毟り取った。

「ほら、さっさと挨拶してきなさい。これって、構えてるだけでいいんでしょ。少しなら、代わっても大丈夫でしょ?」
「――――そうだな、そんじゃいってくる」
「うん、いってらっしゃい」

笑顔の藤ねえに見送られ、俺は葛木先生とメディアさんのもとに歩み寄った。

「葛木先生……結婚、おめでとうございます」
「衛宮か……世話になったな」
「ええと、士郎さん、本当に、ありがとうございます」
「いえ……何というか、はい」

二人にお礼を言われ、なんとなく俺は気恥ずかしくなって、頷いた。
その言葉は今までの苦労に対する、最高の報いになったように思えたのである。

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「でも、いいな〜、ケッコンかぁ……」

そうして、家に帰ってくつろいで、ようやく落ち着いたときにイリヤがそんなことを口にした。
その言葉に、桜はハッとしたような表情になり、遠坂は、イリヤがなんというか分かったのか、顔をしかめた。
ライダーは相変わらず、何を考えているのか分からない様子で、こっちを見ていて……藤ねえは結婚式の引き出物を漁っている。

そうして、イリヤはあぐらをかいて座っている俺の背中に抱きつくようにして、

「シロウ、私たちも、ケッコンしましょ?」

と、無邪気な顔で言ってきたのだった…………さて、どう答えればいいのだろう?
人によっては、幸せと考えるであろう、この後の惨劇を考え、俺は頭を悩ませるのだった。

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