〜Fate Hollow Early Days〜 

〜☆王様二人〜



商店街に足を運んでみる。今日の特売セールの店を見て歩くうち、道端で話をするセイバーを見つけた。

「おーい、セイ…………」

セイバーに声を掛けようとして、一瞬硬直する。セイバーと仲良く話をしているのは、他でもない英雄王(小)だったのである。
普段は英雄王を毛嫌いしているセイバーではあるが、今日はにこやかに、子ギルと世間話をしているようである。

「しかし、どういう風の吹き回しだ?」

呟きが聞こえたわけではないだろうが、その時、セイバーがこっちに気づき、微笑みながら手を振ってくる。
子ギルはというと、俺の姿を確認して、嫌そうな顔一つせずに、にこやかに会釈をしてきた。
とりあえず、本人達に直接聞いてみる事にしようか――――俺は、セイバーたちのもとへと歩み寄った。

「シロウ、あなたも商店街に来ていたとは――――食料の買出しですか?」
「ん、ああ……とりあえず、安い物が無いかとふらふらとな。それで、セイバーは、そいつと何をしていたんだ?」

俺が指差したのは子ギル。子ギルはキョトンとした表情で、俺を見返してきた。
む、どうも小さい方は邪気が無いというか、捉え所が無いというか――――正直、つかみかねない性格をしてるよな。

「ああ、彼とは少し、王道について話をしていたのです。将来、自国の民を統べるべき王者は、どのようにあるべきかと」
「ええ、セイバーさんは、何と言ってもブリテンの王様ですから。色々参考に出来ればいいなって」

ニコニコ笑顔で、子ギルはそんな事を言う。それは、小学生が将来になりたい職業を、その仕事をしている人に尋ねるような表情。
本気で彼は、将来のためにセイバーに教えを請うていたようだ――――ああ、こんないいやつが、どこをどうやったら、ああなるんだろうか?
人生とはかくも無常だ――――そういう俺も、下手をしたら将来はアーチャーになってしまうだろうし……人のことをいえたもんじゃないけどな。

「でも、よく平気だよな、セイバー。なんだかんだ言っても、そいつってアレと同一人物だぞ?」
「…………まぁ、それも考えなかった事も無いのですが。友好的な相手を、一方的に毛嫌いするのもどうかと思いましたので」

本意ではありませんが、それなりに親しく対応しようと思います。などと言うセイバー。
その言葉に、う〜ん、と考え込んでしまう子ギル。自分の未来を多少は知っているので、立つ瀬が無いという事だろうか。

「まぁ、自分で自分を弁護するのも変ですけど、大人のボクは、セイバーさんに友好的に接しているつもりみたいですよ」
「――――あれで、ですか」

げんなりした様子で呟くセイバー。顔を合わせるたびに絡まれた、嫌な記憶を思い起こしているのかもしれない。
子ギルのほうも、ふぅ、と小さくため息をつきながら、そうなんですよねー、などとセイバーに同情するように頷く。

「自分の主義主張を真正面からぶつければ、相手に不快感を与えるのは分かりきった事なのに、どうして大人になると、そういう選択ばっかりするんだろうなぁ」
「――――貴方も、大変なのですね」
「大変、って言うのはちょっと違いますね――――ボクは、自分の将来から逃げる気はありません。でも、せっかく自分を見直せる機会が出来ましたから」

だから、今のうちに自分のどこが良くて、どこが悪いか知っておきたいと思ったんです。と、堂々と言う子ギル。
なんだか、けっこう格好いいんじゃないか? セイバーも、感心したように子ギルを見つめている。

「ま、そういうわけで、セイバーさんへの質問も、大人のボクの生き様との比較対照にしたかったからなんです」
「なるほど、まだ子供だというのに、たいしたものだ」

子ギルの言葉に、うんうんと頷くセイバー。なんだかんだで、意気投合しているようであった。
…………さて、あまり長居はできないな。買出しの続きだし、ここで時間をつぶし続けるわけにもいかない。

「セイバー、俺はそろそろ行くけど、セイバーはどうするんだ?」
「私ですか? そうですね、彼がまだ聞きたい事があれば、しばらく付き合おうと思うのですが」

子ギルをさして、セイバーは生真面目に言う。何のかんので、人生の先輩としてのアドバイスをする気、満々のようであった。
しかし、子ギルはというと、セイバーのその言葉に、あっさりと首を横に振ったのであった。

「あ、ボクの方は別にいいですよ。一番に聞きたい事は聞けたし、あとは後日でも」
「……そうなのですか?」
「ええ、それに、人の恋路に首を突っ込んで、馬とかに蹴られたくないですから」

ニコニコ、にっこりと子ギルの言葉に、セイバーはなんとも言えない表情になった。
まぁ、大人の方だったら、意地でもセイバーを行かせまいとするだろうし、同一人物のギャップに苦しんでいるんだろう。

「まぁ、そういうわけですから、おにーさんはセイバーさんと、束の間のひと時を楽しんできてください」
「あ、ああ…………何というか、恩にきるよ」
「いやだなぁ、僕とおにーさんの仲じゃないですか、そんなに気に掛けないでくださいよ」

あはは、と何処までも笑顔な子ギル。なんだか、実は大物なのかもしれないな、コイツって。

「それじゃあ、おにーさんもセイバーさんも、またどこかで出会いましょうねっ!」

セイバーを連れて、その場を離れる俺に、子ギルは元気いっぱいにそんな事を言ってきたのだった。
――――うーん、何だか狐に抓まれたような気分でいっぱいだ。それはセイバーも同じなのか、しきりに後ろを気にしている。

「ま、気にしてもしょうがない。行こうか、セイバー」
「――――あ、はい」

セイバーの手を引いて歩き出すと、セイバーの表情がいくぶん柔らかくなった。
しかし、今日は随分と面白いものが見れたな――――あとで、遠坂にも話しておくとしよう。

ともあれ、まずは今からどうするかだが――――、

「買出しに行く前に、何か腹に入れておくとしようか――――セイバー、江戸前屋にでも寄ってくか?」
「ええ、是非ともそうしましょう」

俺の言葉に、セイバーは満面の笑み。ああ、王様バージョンのセイバーも凛々しくて良いけど、こういうセイバーも、和むよな。
江戸前屋で、大判焼きを買い込み、歩きながらそれを口に入れる。隣で大判焼きを頬張るセイバーを連れ、俺は買出しを再開したのだった。