〜Fate Hollow Early Days〜 

〜リサイクル作業〜



夜の暇な時間を使って、土蔵の中にある物を使って補修、修理などを行う。
七輪や石油ストーブなど、これからの冬の季節にあると便利なものも多々あるので、最近は、それらを重点的に直している。

しかし、今日は少し違うことをするようにした。この前、遠坂とのデートの時にできた、ライダーへの借りの清算のため、自転車を組み立ててみようと思ったのだ。
基本的に、我が家にある自転車はツーリング用の一号と、ママチャリの二号。三号は現在行方不明であり、ライダー用に組み立てるのは四号にする予定だ。
材料となる部品は……町内で粗大ごみとして捨てられている自転車の中から、使える部品を取り出し――――さらに、厳重にチェックを重ねているので、品質に問題は無い。

まぁ、互換性とか、組み合わせ次第ではうまく動かないパーツもあるが、その辺りはうまく誤魔化して製作する。
さすがに四台目ともなると、基本的な流れ作業は頭に入っている。問題は、どんなパーツの組み合わせにするかだった。

「ライダーは、速度重視だからな、籠とか余計なものは付けないほうが良いよな」

いくつかストックのあるパーツを吟味し、組み立てに掛かる工程と、組みあがったものを先に想像する。
ライダーは、場所を選ばず走るからな――――できるだけ丈夫な小さめで、太目のタイヤを選ぶことにしよう。
ギア比は……ライダーが不満にならないように、目いっぱい高めで……普通の人じゃ漕げない位の重さでも、彼女なら楽にこなせるだろう。

「さて、ハンドルと、サドル類の高さはライダーに実際に乗ってもらって決めるとして……細かい部品から取り掛かるとしようか」

まずはタイヤの空気圧、チューブやゴムなどに損傷が無いか……もう一度確認して、さらに多段ギア――――スプロケットの取り付けに掛かる。
完全に一からというよりは、廃棄されたものを組み合わせているので、手間自体は完全な自作品よりも少なめである。

しかし、こういう自転車を一から自作できる人って、けっこう凄いよな――――、一応、我流で組み立てを繰り返したり、本屋で自転車関係の本を調べてはいる。
だけど、完全に一から製作するとなると、どうにも腰が引けてしまう。パーツ自体も、そこそこな値段がするし、趣味としての範疇を超えてまで、本格的に製作する事はできなかった。

「よし、次は前輪だな」

後輪の作業を終わらせて、次は前輪の作業へと入る。そこそこ順調に作業も進んでいるし、この分なら今夜じゅうに組み上げる事が出来るかもしれない。
まぁ、今夜中とは行かなくとも、早いうちのほうが良いだろう。ライダーは気が短いわけじゃないが、約束をすっぽかしたりしたら、後が怖いのは確かである。

土蔵の中を探し回りながら、必要なパーツを発掘して、自転車に組み込んでいく。パーツ類はたくさんあるが、藤ねえの収集品と混ざっているので、探し当てるのも少々骨が折れた。
そうして、夜もとっぷり暮れていく――――夕食後に始めた作業だが、物自体が完全に組みあがるころには、完全に夜も更けていた。

「うん、まぁ……、こんなものかな?」

組みあがった愛機四号(仮)を前に、なんとなく満足に頷く俺。そうして、もう一度チェックをしなおす。
どこにも指しあたっては問題は無いようだ。あとは、走っている途中でバラバラにならなきゃ良いんだが……冗談抜きで、タイヤが外れたり、チェーンが切れたりというトラブルはある。
最初のころは……ライダーに、なるたけ普通の道路を走ってもらって、おかしな部分が無いかを確認しよう。

「よし、確認終わり――――とりあえず、土蔵の隅っこにでも置いておくか」

再確認を終え、自転車を土蔵の隅に寄せると、夜露をしのぐため、ビニールシートをかぶせた。
時計を確認すると、すでに時間は夜半過ぎである。さすがに、こんな夜遅くにライダーを土蔵に呼ぶわけには行かない。
他の人に変に勘ぐられるのも困りものだし、なにより、夜の土蔵にライダーと二人っきりというのは、色々とヤバイ気がする。

俺は工具類を片付けると、土蔵から出ることにした。さて、近いうちにライダーに四号をお披露目することにしよう。
いきなり明日というわけにもいかないが、折を見て、彼女の喜ぶ顔が見たいものである。

「ともかく、油くさくなったしな――――今の時間なら、みんな風呂に入り終わってるだろうし……早い所、さっぱりしよう」

楽観して、俺は風呂場へと向かう。そういう日に限って、特番を見ていて遅くなったセイバーが脱衣場に居たり、たまたま実験で遅くなった遠坂と、裸で鉢合わせしたりするのだが。
まぁ、常日頃からトラブルの種が絶えない我が家である。修理品の一つや二つ、増えることは日常茶飯事だった。

追伸――――頼むから、風呂ぐらい……ゆっくりと入らせてくれ……(泣)