〜Fate Hollow Early Days〜 

〜☆二人のうわさ話・2〜



市民の憩いの場所である、海浜公園を……さしたる目的もないままテクテクと歩く。
休日ということもあって、公園内では家族連れや恋人同士、その他にも、様々な人々が思い思いにくつろいでいた。

「さて、そうなるとアレはどの部類に入るんだろうか……?」

人ごみから少し離れた川縁で、ほのぼのとくつろいでいる英霊二人。たまに、ここで見ることもあるランサーと子ギルの組み合わせだった。
友人同士、というには歳が離れすぎているし――――まぁ、妥当なところで親子だろうか?
親がランサー、子供が子ギル……少し違和感を感じる気もするが、つりあいは取れているようにも見えた。

「はぁ!? ――――おいおい、勘弁してくれよ。ガキは一人で充分だっての」

俺が思ったことを口に出すと、ランサーはそんな事を言って、げんなりした表情になった。
子持ちということで、嫌な思い出でもあるのか、心底嫌がっているようだ。子ギルの方はというと、にぱっ、とした笑顔でノーコメントを通していた。

「そこまで嫌がらなくても、良いと思うけどな……そういえば二人とも、こんな所で何をしてるんだ?」

ランサーと子ギルの二人は、それぞれ片手に、スーパーの袋をぶら下げている。ランサーはともかく、子ギルも買い物をするんだな……。
てっきり、何か欲しい物があったとき……その店ごと、大人買いをしてるものだと思った。

「ああ、買い物だよ。マスターのやつ、自分じゃ良い食材が分からないからって、人に押し付けやがってよ……俺だって分からねえってのに」
「ボクの方も、マスターからの命令です。本当は、あまり気が進まないんですけど、彼女には逆らえませんからね……」

はぁ……と息もピッタリにため息をつき、肩をすくめる二人組。
どうやら二人とも……新しく自分のマスターになった相手とは、うまくいっていないようだった。

「ふぅん、何を買ってきたんだ? ちょっと見せてくれよ」
「ん、ああ、構わねえぜ、別に減るもんじゃなし」
「ボクの方は、見ても楽しいものじゃないと思いますけど……それでも良ければ、どうぞ」

俺が頼むと、ランサーと子ギルは各々に、手に持った袋を差し出してきた。とりあえず、ランサーの袋を覗いてみる。
ランサーの手に持っていたのは、商店街の買い物袋。その中には、ジャガイモ、ネギ、豆腐、他にも食材がバランス良く詰められていた。
へぇ、良い食材が分からないって言ってたけど、これは――――……、

「――――うん、良いのが揃ってるじゃないか。うちで料理に使いたいくらいだぞ」
「そうか、坊主が言うんなら、間違いはないだろうな。あんまり変なのを持ってくと、説教部屋行きになるからなぁ」

俺の返答に満足したのか、どことなく明るい表情で言うランサー。傍らの子ギルはというと、なにやら浮かない顔である。

「いいなぁ、ランサーさんは目利きでアピールできるもので……ボクは、決められたものを揃えるのが大変だったから、そんな余裕は無かったですよ」
「そういえば、そっちはまだだったな……ちょっと見せてくれ」

しょんぼりとする子ギルが持つ――――新都のデパート、ヴェルデの袋の中を、俺は覗き込み……首をかしげた。
見たことのない小瓶が、ずらっとぎっしりと、袋内に詰め込まれていた。あ、これは見覚えがあるぞ。確かこれは、ダバスコの瓶のような……まさか。

「これってまさか、全部……香辛料なのか?」
「おや、分かるんですか? さすがはお兄さん。伊達や酔狂で、料理を生業にしてるわけじゃないんですねー」

心底感心したようにいう子ギル。これは、褒められているのだろうか? 基が基だけに、言葉を額面通りに受け取ってよいものか、疑わしい。
まぁ、別に気にすることじゃないか。それより、気になるのは、ずらっと並んだ、香辛料についてである。
ヴェルデの地下食品コーナーには、これだけの種類の香辛料は並んでいないはずである。見たことのない香辛料は、どこから手に入れたのだろう。

「――――ああ、それなら宅急便や空輸で送らせたんです。ランサーさんとは違って、ボクは数日前からマスターに命じられてましたから」
「く、空輸!?」

いきなり、スケールの大きい話になったような気がするぞ。そこまでの手間をかけて、取り寄せるものなのだろうか、これは。

「まぁ、市販のものでも良かったんですけど、やっぱり本場の製品の方が妥当でしょうから」

ちょっと、割高にはなりましたけどね――――などと、ほがらかに言う子ギル。
うーん、さすがは小さくなっても英雄王。お金の使い方が、滅茶苦茶なまでに徹底されている。

「しかし、こんなにたくさんの香辛料――――どうするつもりなんだ?」
「さぁ……僕は命じられただけですから、細かいことは……あ、でも、何かの実験に使うって言ってましたよ」

実験…………香辛料をしこたま使い、いったい何を行おうというのだろうか?
ランサーの方は、料理に使うと想像できても、実験の方は全然見当がつかない。
――――あるいは、料理が実験ということも、ありえるかもしれないが。

「さて、そろそろ行くとするか? 今日の昼までって期限を付けられてるし、早めに戻るに越したこたぁないだろ」
「ええ、そうですね。それじゃあ、お兄さん……ボク達はそろそろ、マスターの所に行かなきゃならないので、これで失礼しますね」
「じゃあな、坊主。暇があったら今度、食いもんでも持って遊びに来いよ」

そう言って、英雄王(小)と、ランサーは立ち去っていった。
しかし、英霊にお使いをさせるなんて、新しいマスターも変わってる――――とも言えないか、うちも、セイバーやライダーに買出ししてもらうこともあるし。

さて、時間も経ったことだし――――、家に戻ってから、商店街に買出しに行くとしますか。
色々と買い込みたい物もあるし、あの二人に負けないように、良いものを見繕うとしよう――――。