〜Fate Hollow Early Days〜
〜リ・スタート〜
――――そうして、夜の終わりに、唐突に目が覚めた。気づいたら、周囲は瓦礫の山。
いくらなんでも、やりすぎなんじゃないかとも思うが、祭りの最後は、これくらい華々しくやる方が良いとも思える。
崩壊した道場、崩れ落ちた土蔵。屋敷を取り囲む壁は崩落し、庭は踏み荒らされ、あちこちが抉られていた。
なぜその光景が見えたかというと……単純なこと、俺の居る自室も、壁も天井もなくなっているからだ。
屋敷の中も、さんさんたる有様だ。まるで大地震が来たかのように、ものの見事に全壊している。
この様子では、居間も浴室も、おそらく無事ではないだろう。周囲の瓦礫を見渡しながら、俺は苦笑を浮かべていた。
散々な破壊の限りを尽くした原因は、もはや役目を終えたのか、その姿を見せることも無い。
虚空を仰ぎ見る。空には白く、どこまでも黒い孔――――遠目に見える、その墓穴より、ゆるゆると伸びる一筋の赤い彩。
それはまるで、地獄の亡者を助けようとする、一本の細い蜘蛛の糸のようにも思えた。
「ああ――――間にあわなかったか」
もはや日の暦が変わるのに、あと数分も無い。今からでは、目的の場所にたどり着くことすら出来ないだろう。
そう考えれば、もはや頑張ろうとする気力も浮かばず、俺は自分の部屋だった場所に寝転んだ。
幸い、寝転んだ部分の畳は無事で、このまま寝入っても何の問題も無いように思える。
四肢を伸ばし、大の字に横になり、俺は虚空を仰ぎ、夜空を目に焼き付ける。
秋にしては、まだ熱気が残っている夜。最後の夜は、こうして更けてゆく――――。
ふと、頭の中に疑問が沸いて出た――――俺はいったい、どこで、誰に会おうとしていたのだろうか?
考えても答えは出ず、ひょっとして、答えというのは……まだ出ていないのかもしれないという結論に思い当たる。
「ま、いいか……」
呟き、まどろみに身をゆだねる。伽藍の世界はどこまでも優しく、最後の時を迎えようとしていた。
さて、夜も遅いし、今日は眠るとしようか。明日は掃除で忙しくなるなぁ……などと、とりとめも無いことを考えながら、俺は眠りについた。
遠くからは、獣達の最後の声。世界はどこまでも静かに、終わりを迎えたのだった。
※世界の果て
出会いたい人、会うべき場所を探し出す。
まずは、一度、事の顛末を見定め、残されたのは誰か、確認を取らなければならない。