〜Fate Hollow Early Days〜
〜朝の食卓〜
朝食の準備が整い、それぞれが、めいめいに位置につく。普段はだだっ広いとも思える居間も、食事時になると手狭に思える。
俺、セイバー、遠坂、桜、ライダー、イリヤ、藤ねえと、都合七人が大きめのテーブルを囲んで座る。
有り得ないと思うが、これ以上同居人が増えたら、それこそ居間を改築でもしないと、全員が一緒には食事できないだろう。
ちなみに、座る位置は毎回ローテーションで入れ替わる。これは、女性陣の間で決められたことであり、俺は関与していないのだが…………。
なんでも、裏で聖杯戦争の再現かと思われるような姉妹喧嘩や、俺の隣に座るのは当然といった風の、騎士王や白いアクマっ子の説得やら色々あったと、ライダーは後に語っていた。
ちなみに今日は、俺の右隣に遠坂、左隣にライダーが座っている。なぜか、俺の座る位置は毎回決まっていたが。
『いいのよ、衛宮君はこの家の家主なんだから、どーんと構えてるくらいじゃないとね』
などと遠坂は言っていたが、さすがにそれ以外の他意があるんじゃないかなー、などと最近は思っている。
「あ、士郎、お醤油とって」
「ああ、ほら」
「サクラ、今日のサラダはサクラが作った物ですね。素人の意見ですが、一段と腕を上げたようだ」
「ありがとう、ライダー」
「…………」(もきゅもきゅ)
「あぐあぐ、ん〜、やっぱり朝はご飯よね〜。溶き卵にお醤油、お味噌汁もうまいっ!」
「タイガは何を食べても美味しいって言うじゃないの。ま、確かに朝はこういう和食のほうがここには似合ってるわね」
…………まぁ、何はともあれ、こんな風に朝食は進む。
途中、藤ねえが皆のおかずをつまみ食いして、吊るされたり――――いつも通り俺に抱きつこうとするイリヤをセイバーが引き剥がしたり……。
しっちゃかめっちゃかでありながら、穏やかないつも通りの日常は、そうして過ぎていった。
「んじゃ、行ってきま〜す。士郎も学校に来なきゃ駄目よ」
「ああ、今日はサクラも弓道部に顔を出すんだろ。後は俺に任せてくれ」
「あ、はい……ありがとうございます。それじゃあ行ってきますね」
藤ねえと桜が居間を出て行く。こういう日は洗い物は俺が一人ですることがほとんどだ。
時折、暇をもてあました遠坂が手伝ってくれたり、セイバーやイリヤが手伝おうとしてくれることがある。
もっとも、家事全般のエキスパートである遠坂はともかく、家計を圧迫するほどの、食器デストロイヤーな二人には丁重にお断りを申し上げているわけではあるが。
「ふぅ、これで終わりっと……」
最後の食器を拭き終わり、居間に目を移すと、そこには誰も居ない。どうやら皆、出かけるか、自分の部屋に戻ったようだった。
登校するには頃合の時間――――まぁ、それ以外の事をするにしても、日が昇って暖かくなるこれからなら行動しやすいだろう。
さて、どうするかな……早朝の僅かな時の合間――――これからの行動を決めかね、俺は短く息をついた。