〜FATE・Avaron〜 

〜予告編〜



夏の夜、新都を騒がした、殺人と失踪の数多の事件。一時はざわめいていた新都も季節が移り変わるころには、表向きには平穏を取り戻していた。
そうして、夏から春へと移る季節の狭間、冬。二人の少女が新都を訪れたのは、ある日の昼間のことであった。

「――――ここで宜しいですわ。ご苦労様」

新都の駅前に止まったタクシー。そのドアが開き、一人の少女が車外へと出る。
行き交う人はその流れを止めず、それでも幾人かは、興味を惹かれたように、彼女へと視線を向けた。
金色の巻き毛、整った容姿、気の強さが他者を寄せ付けぬといっても、そこらの並みのモデルとは、一線を賀した可憐さが少女を包んでいた。

「んっ…………ふぅ」

彼女は、周囲から沈黙されていることなど意に介さず、大きく伸びをする。
ととのった双丘が強調され、なんとなく周囲の視線も熱くなったような気がする。
そんな時、タクシーからもう一人、開いたドアから流れるような動きで、同じ年頃の少女が姿をあらわした。

金色の髪、エメラルドを想起させる双眸――――寒さよけのコートを着た彼女は、手に荷物を下げ、先に出た少女に声をかける。

「よろしいのですか、お嬢様。まだ、目的地には、少々距離がありますが」
「良いのよ。ずっと車の中に閉じ込められては、欝になってしまうわ。歩いていきましょう、アル」

アル、と呼ばれた少女は、こくりと頷き、周囲を見る。どこかその視線は、懐かしむような印象を見せていた。
すでに歩き出した、お嬢様の後を追い、アル――――アルトリアは新都の街を歩き出した。

「ここが、聖杯戦争の起こった場所なのですね……」

興味深そうに、街並みを見ながら歩く、ルヴィアゼリッタ。
その目は好奇心に満ち溢れ、これから会う相手のことなどを、いろいろと考えているようだった。

あの冬より一年、夏の日より半年。
新たな出会いと、決して出会えぬ再会の話は、こうして慎ましやかに幕を開いたのであった。



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