The Love song for the second week..
〜12月〜
〜聖誕祭〜
その日の朝は、いつもよりも、少し肌寒い朝となった。
聖誕祭の準備のため、先日より校内に泊まりこんでいる生徒達の、活気のある声が聞こえてくる。
朝早くから賑わいを見せるそんな校内の廊下を、二人の先生が見回りつつ歩いていた。
「しかし、いい天気になったものですねぇ」
「ええ、でも、夕方から夜にかけて、天気は崩れるそうですよ、話によると、雪が降るとか」
眼鏡を掛けた二人の教員……レパードとベネットは、締め切られた窓の外に見える、青空をともに見る。
と、その視界をさえぎるように、数人の女生徒が和気藹々と話しながら、駆け去っていった。
「こらっ、廊下は走らないように!」
「いやいや、良いじゃないですか、元気があって」
怒るベネット先生とは対照的に、温かい目で女生徒達を見送るレパード。
眼鏡を掛けた、なかなかにハンサムな二十代後半の男性教員だが、女生徒には然程の人気もなかった。
まぁ、それというのも……。
「本当に、元気な子っていいですよねぇ……」
先ほどよりも熱っぽい勢いで、教室内で仕事をする男子生徒たちに視線を向ける、レパード。
妙な空気が流れたのを察してか、ベネット先生は居心地悪そうに咳払いをした。
「…………ともかく、王国からの招待者も来るんですから、出来るだけ生徒には大人しくしてもらいたいものです」
「はぁ……」
ベネット先生の言葉に、あいまいに相槌を打つレパード。
この時は、二人とも、その日に起こる事件については、予測できてはいなかった。
――――まだ冷え込んでいる、聖誕祭の朝。その日は晴天で日柄もよく。
穏やかな朝は、そうして生徒達の喧騒とともに、過ぎていったのであった。
〜12月25日(金)〜
がやがやと、騒がしい校門前、俺は朝早くから、そこで待っていた。
今日は朝早くから、学生でない一般客の人々も学園へと遊びにきている。
国内はもとより、どうやらラスタルやビアンキといった隣り合った国からきているらしい姿も見える。
…………そういえば、さっきなんだか偉そうな軍服のおっさんが、ロニィ先生と一緒に校内に入っていったけど……
あと、いかにもって感じのエルフの一団や、スーツ姿の商社マンも、ロニィ先生の案内で構内に入っていってるみたいだけど。
……まぁ、深くは考えまい。
所在なげに、校門に寄りかかって待ってると、目の前を学生の一団が歩いていくのが見えた。
あれは、光綾学園の制服だな……そういえば、今日はうちの学生と一緒に聖歌の合唱をするらしいな。
こっちに注目していたので、なんとなく手を振ると、女の子達は、声をあげて逃げ去ってしまった。
……………………。
「おはよっ、カイト。って、どうしたの、しゃがみこんじゃって」
「いや、ちょっとショッキングな出来事があってな……」
掛けられた声に身を起こす。いつの間に近寄ってきたのかロリッ娘エルフのコレットがそこにはいた。
俺の言葉に、コレットはふーん、と首を傾げるが、ま、いいか。と俺の苦悩をいともあっさりスルーしたのである。
「それはそうと、早く行きましょ。話は通してあるけど、油断したらどっか行っちゃうかもしれないし」
「え、早く行くって、どこへ?」
俺は聞き返し、周囲を見渡す。そういえば、コレットはいるが、近くにミュウの姿はない。
てっきり、一緒に来るもんとばかり思っていたんだが……。
「だから、ミュウのところよっ。聖歌隊の指導にあたってて、今日はその仕上げをするんだって。今は、校内にいるわ」
「――――……ああ、なるほど」
「今日は後輩が、光綾の子達との合唱だから見ててあげないと……って、あたし達と一緒に回るのを渋ってたから……これから行って、引っ張り出すの」
さ、行きましょ。といって、俺の手をとり、駆け出すコレット。
周囲から注目されているのはわかったが、なぜか気にはならなかった。
なぜなら今日は聖誕祭――――思いっきり騒ぐのが、お祭り好きの本懐だったからだ。
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