The Love song for the second week.. 

〜5月〜
Perfect Girl




〜5月8日〜(土)


全ての授業の終わる、放課後のグラウンド。そこには二つの影が対峙している。
陽光により、影になっていたが、その輪郭から、片方が男子生徒、もう片方が、女子生徒だということが分かった。
じっと対峙する、影絵のような風景の中……黄昏色の空に、白銀の閃光が舞った。

「うわっ……」

ドスン、ガッ、バキッ、ゴロゴロゴロ……

強烈な一撃にはじき飛ばされて、俺は土の上を転がった。ボロボロの身体で、見上げた空は綺麗な夕焼け色をしている。
それでも、手に持った剣を離さないでいれたのは、多少の進歩のおかげだろう。

あれから数週間、委員長のアドバイスに従い、筋トレに励んだおかげで、それなりに強くなれたように感じていた。
だから、この前の雪辱の意味も込めて、委員長に勝負を申し込んだまでは良かったんだが……。

「気が済んだかしら?」

淡々とした、呆れきった声。そっちの方に首を向けると、剣をさやに収める委員長の姿があった。
その姿は、ボロボロの俺とは違い、傷一つ負っていない。まったく、歯が立たないよな……。

「ああ、つきあってくれて悪かったな、いいんちょ」
「そう思うなら、もうちょっと腕を上げてから挑戦しなさいよ。これじゃ、肩慣らしにもならないわ」

それだけ言うと、委員長は寮の方に歩き去っていった。ぅぅ……相変わらずクールだぜ、委員長……。

「おーい、生きてる?」
「おぅ、なんとかな……」

入れ違いに、俺の顔をのぞき込んできたのは、さっきまで一緒にダンジョン探索をしていたクラスメート。
ハーフエルフの少女、コレットだった。

「それにしても、弱っちいわね、全然駄目じゃないの」
「うるせー……」
「うるさいじゃないわよ。一応、パートナーを組むこともあるんだから、それなりに強くなくっちゃこまるのよ」

呆れたように言い、そいつは肩をすくめ、首をフルフルと振った。
その頭の両脇のポニーをグニグニと引っ張ってやりたいが、あいにく俺の現在の状態は、満身創痍、体力がほぼゼロの状態だ。

「お前なぁ、俺だって、ここ最近はそれなりに頑張ってるんだぞ……」

なので、とりあえず口でやり返そうとする。が、見た目小学生のはすっぱエルフは、ふっ、と鼻で笑って一蹴した。
何か、完全に馬鹿にされているのが悔しい。つーか、委員長に負けるよりも、この事象の方がむかつくんですが?

「女生徒に負けるなんて、完全に逝って良しよね」
「まて、こら」

思わず、《゚Д゚》な顔で睨むが、コレットはこれっぽっちも動揺もしていないのだった。

「ふふん、なっさけないわよ、バカイト」
「…………」
「そんなんだから、『クラスで組みたくないパートナー候補』一位に選ばれちゃったりするのよ」

ああ、悔しいです、神様。こんな状況で言い返せないなんて……。いや、事実だけど。
ついでに、なぜか『コロシテェ男子No1』とか、『女子に微妙な扱いを受けるヤツ』とかの称号もあるけど……。

一応、品行方正に生きてるハズなんですけど……俺

「いつつ……」

色々と複雑な心境はさておき、いつまでも寝っころがってるわけにもいかなかったので、身を起こす。

「うわー、痛そーね?」
「うぉっ、お前、そう思うんならベタベタ触るなっ……! っていうか、やめてくれっ、マジで死ぬっ」

ロッドの先でツンツンつつくなっ! っていうか、そういうふうに使う物じゃないだろ、それはっ!

「あはは、おもしろーい♪」

痛みのあまり、不思議な踊りを踊る俺。それに気をよくしたのか、コレットはそれからしばらく、俺を突っつき回して遊んでいた……。
おのれ、覚えてろよ……。いつか逆転してやるからな〜〜〜(泣

〜5月10日〜(月)

「おはよ、カイトくん……? どうしたの……顔色、悪いけど?」
「ああ、ミュウ……ちょっとな」

その翌々日……。朝のホームルームの前の時間、登校してきた俺を一目見て、ミュウは怪訝そうな表情を見せた。
結局、昨日はコレットに一日つきあわされて、あちこちに引っ張り回されたせいで、疲れはほとんどとれていない。

まぁ、転校してきたばかりで右も左も分かんないって言われちゃ、しょうがない。
コレットは喜んでたみたいだし、機嫌をとっとかないと、パートナーを組まないとか言われたら、困るしな。

「相羽君、体の調子はどう?」
「あ、委員長」

そんなことを考えながら、曖昧に返事を返していると、教室に入ってきた委員長が声を掛けてきた。

「おぅ、元気バリバリだぜ」
「そう。ちょっと痛めつけすぎたかと思ったから、心配だったんだけど」

俺と委員長がそんな会話をしていると、クラスのあちこちで、何かこっちを見てひそひそと言っているのが見えた。

『マジで? 委員長ってそんな趣味があったのか?』
『相羽君も、そういう関係なのかな……』

「……?」
「そう言えば、あの後コレットにも、けっこう遊ばれてたみたいだけど……」
「ああ、それに、昨日も色々とつきあわされてな……ま、たまにはいいだろ」

『ええっ、コレットちゃんも!?』
『しかも、昨日もって事は……これは本物かな、あはは』

「……狼撃!」

拳を振りかざし、俺は傍らで笑っていたシンゴに襲いかかった。まるで狼のような鋭い打撃が、シンゴを襲う!
だが、ヤツはマトリックス張りの形態模写が困難な動きで、俺の攻撃を避けきった。おのれ、人畜有害生徒め。

「あはは、だめだよカイト、その技は漫画の技のパクリじゃないか」
「ちっ、やっぱり髪が金髪になるヤツの技じゃなきゃ、コイツは倒せないか」
「何か物騒なこと言ってるけど、今日び『竜玉』の技なんて流行らないと思うよ」

さらりと暴言を言うシンゴ。ファンが聞いたら、それこそ界○拳300倍をされかねないぞ。
まぁ、栽培マンにやられるようなキャラの必殺技を出す俺も、俺だけど……。

「はいはい、二人とも遊んでないで。周りに迷惑がかかるでしょ?」

と、パンパンと手を叩きながら、俺とシンゴの不毛な睨み合いに委員長が割って入った。
この辺は、さすがに年の功だ。クラスのまとめ役を任されるのも、頷ける。

「……何か、微妙に失礼なことを考えてない?」
「い、いや、何でもないぞ?」

まるで、心を見透かされたかのようなリアクションに、俺はしどろもどろに弁解した。
委員長はそんな俺を疑わしそうに見つめていたが、興味を無くしたのか、「じゃあね」と言って、自分の席に戻っていった。

ふぅ、命拾いしたぜ。

「カイト君……陽子ちゃんと……」
「ん?」
「う……ううん、何でもないの」

汗を拭う俺に、ミュウが何か言ったようだったが、俺の耳には小さすぎて届くことはなかった。
そうして、その日の朝は、表面上は穏やかに過ぎていったのである。

ところが、その日の昼……。

「くぉ〜らぁ〜っ! バカイト〜っ!」

血相を変えたコレットが、俺に詰め寄って来たのは、弁当を食べようと鞄から出したときのことだった。

「ど、どうしたの、コレット?」

一緒に昼食をとろうとしていたミュウが、ギョッとした表情で身を引くほど、コレットは怒りの形相で俺を睨んでいる。

「何だよ、腹でも減ってんのか、コレット?」
「こ、こ、こ……この馬鹿ぁーーーっ!」
「うぉわっ!?」

そう叫ぶなり、コレットが飛び掛ってきたせいで、俺は椅子ごと、後ろに倒れこんだ。
と、コレットは俺の上にのしかかると、喉に両手をかけて、ぐいぐいと締め付けてくるっ……!

「や、やめっ……マジで堕ちるっ……!」
「うるさいっ、いっぺん死んだほうがいいのよ、アンタはっ!」

そんな薄情なことを言いながら、コレットはグイグイと、なおも俺の首を絞めてくる。
ああ……やばい、気が遠くなってきた。

「コレット、やめなさい!」
「あ……」

と、その時、急に喉にかかる力が抜けて、真っ暗になりかかった視界が、回復する。
どうやら、ミュウに怒られて、コレットも正気に戻ったようだった。

「いったい、どうしたの……? 急にこんな事、するなんて……」
「…………」

ミュウの言葉に、コレットは気まずそうに沈黙し、目を逸らした。
と、その時である。普段は昼休みに、教室には入って来たことのない、ベネット先生が、教室に入ってきたのは。

「相羽君、コレットさん、それに、陽子さん。職員室に、一緒に来て下さい」

ベネット先生は、不機嫌そうな顔で、教室にいた俺とコレット、それに、なぜか委員長に向かってそう声を掛けた。

「私も、ですか?」
「ええ、そうです。個人的に話がありますから、ちゃんと来るように」

怪訝そうな顔の委員長に、それだけ言うと、ベネット先生は教室から出ていってしまう。
なんだか良く分からないが、とりあえず行かなきゃいけないようだ。

俺はため息をつくと、床に落ちていた弁当箱を、自分の机に戻す。
どうやら昼食は、まだ先になりそうだった。



ところ変わって職員室。
いつもは先生達の、憩いの場となっているこの部屋も、昼休みとなると、誰もいなくなる。

理由としては、食堂を食い散らかしに行ったり、妙なアイテムを研究室で開発していたり……。
又は、グラウンドで遊ぶ生徒達を、生暖かい目で見守っていたり、後、屋上に意味もなく立ちつくしていたりとか。

…………改めて考えると、まともな教師って居ないような気が……。

「別に、学生に恋愛を禁止しろと、言っているわけではないんですけどね……」

職員室に呼ばれた俺とコレット、委員長を前に、ベネット先生は疲れたようにため息をはいた。
先生達の中で、最も冷静沈着で、生徒からの信頼も厚い先生だが、何か疲れているようだった。

「で、いったい何なんです? 俺達を、呼び寄せた理由って」

しばらく時間が過ぎた後、いっこうに口を開こうとしない先生に、さすがにしびれを切らし、俺はそう質問する。
そうして返ってきたのは、呆れたような非難の視線である。

「相羽君とコレットさん、それに陽子さんの3人で、節度を越えた交際をしていると耳にしました」

…………ふ〜ん、って、ちょっとまて。

「節度を越えた交際、って……?」
「いえ、ですから、その……」

俺の問いに、ベネット先生は、顔を赤らめて沈黙してしまう。
つまり、俺とコレット、それに委員長が、いわゆる三角関係であるって噂が、流れているらしい。
しかし、誰がそんなことを……?

「ホントに、いいかげんにして欲しいわよ。どうせ、噂を流したのはカイトなんでしょ!?」
「は? 何で俺が?」

怒りの視線で俺を見るコレットに、俺は本気で首をかしげる。

「何で……って、こういうイタズラするのって、カイト以外、考えられないもん」

根拠のあるような、無いようなことを、ふくれっ面のまま、コレットは言う。
つ〜か、信頼ないのな、俺……。

「ベネット先生、それは単なるデマです。少なくとも、私は彼と、そんな関係にはならないですから」

と、事の顛末を黙って聞いていた委員長が、一つため息をついて、そう断言する。
うむ、さすが委員長。何か言葉の節々に、棘を感じたような気もするけどな。

「そうですか……確かに、陽子さんが絡んでいる時点で、少々信じられなかったですからね」

と、委員長の言葉に、ベネット先生は、あっさりと納得し、頷いた。
このあたり、俺やコレットが言うよりも委員長が言った方が重みがあるんだろう。

「ごめんなさいね、3人とも。3年生には厳しく当たるのが、この学園の方針ですから」

どうやら誤解は解けたようである。

「んじゃ、失礼しま〜す」

そうと決まれば、こんな所に用はない。さっさと教室に戻って、弁当を食わなければっ!

「あ、ちょっと待ちなさいよっ、カイトっ!」

コレットの声も何のその、職員室のドアを開けるやいなや、俺は教室に向かって駆けだした。
すでに、昼休みは半ばを過ぎている。弁当も食べなしに、午後の授業を受けれるはずもなかった。

高速で廊下を駆け、階段を2段飛ばしで駆け上がり、クラスの出入り口のドアを開け放つ!
が、俺はそこで仰け反った。

「って、何でそこに座ってんだ!?」
「あはは、やぁ、早かったね、カイト」

毒のない表情で、俺の席に座りながら、俺の弁当をかっこむシンゴの姿があった。
ガツガツ、ゴックンと、俺の魂とも言える弁当は、全てシンゴの胃袋の中に消えてしまった。

それは、どうしようもない現実だった。
それは、高校3年になるまで生きてきた中で、最も無力感を感じる瞬間だったかもしれない。
そう、下手をすれば、4月のオリエンテーリングよりも、今目の前で起こった出来事の方が、ショックは大きかった。
口にしたら、ミュウに泣かれそうだが、食欲は時として、全てのものに勝るのだ。

「お、俺の弁当…………」
「いや、こんな所に開けないまま残ってたから、つい」

確信犯であろうに、ニコニコと、まるっきり邪気のない顔でいうシンゴ。
この邪気のない顔がくせ者なのだ。俺は、地面にひざまづきながら、シンゴの方に、虚ろな目を向ける。
と、シンゴは、呑気な表情のまま、さらりと質問をしてきたのだ。

「で、どんなことを言われたんだい? とりあえず、正確にベネット先生に報告しておいたけど」
「…………」

その言葉を、反芻するのに数秒。
理解するのに、さらに数秒を要した。そうして、出た結論は一つ。

「なるほど……全部……お前のせいかぁーーーっ!!」

次の瞬間、シンゴの身体は教室の窓を突き破り、空の彼方に消えていった。
全身のバネを使い、跳ね上がる勢いを利用しての膝蹴りの姿勢で、俺は消えていった戦友を思い、空の彼方を見つめていた。

さすがのヤツも、爆魔龍○脚は避けられなかったようだ。

「さらばシンゴ、お前のことは忘れないぜ……」

割れた窓の外を見やりながら、俺はそう呟き、涙を流す。
最も、その涙の大半は、ヤツの胃袋の中に消えた、弁当のために流していたのだが。

「カイト君」
「ん、何だ、ミュウ?」

そんな、泣いている俺に、優しく声を掛けてきたのは、事の顛末を見ていた幼なじみだった。
彼女は、聖女のような微笑みを浮かべながら、ある物を俺に差し出してきた。

「これ……」

ミュウが差し出してきたのは、彼女のお弁当箱だった。

「まだ、私も食べていないから、半分こしようよ」
「なにっ!?」

手渡されたお弁当箱は、ずっしりと重かった。
だけど、なんでだ?

「てっきり、もう食べ終わってると思ったんだが」
「うん、そうしようかと思ったけど……やっぱり、カイト君と一緒にお昼を食べたかったから」

その言葉に、クラスのあちこちから、やっかみの視線が注がれるが、そんなのは気にならない。
なにせ、食べ物が確保できたんだ、多少のことは、気にしない。

「サンキュ、ミュウ。お前、いいお嫁さんになるよ」
「えっ!?」

思わず、正直な感想が口をついて出て、自分自身ビックリしてしまった。
なぜか、微妙に気まずい……ミュウは真っ赤になってしまったし、俺も、なぜか言葉が掛けづらかった。

「まったく……良いわね、若いって」
「!?」

そんな状況で、無遠慮に声を掛けてきたのは、さっきまで一緒に職員室にいた、委員長だった。
驚いた表情で、委員長を見る俺とミュウ、そんな俺達に、委員長は疲れ切った声で言った。

「答えが決まってるなら、他のことをあまりしない方が身のためよ、相羽君」
「へ?」
「ミュウも、もうちょっと積極的にならないと、相羽君は、あっちにフラフラ、こっちにフラフラするんだから」
「う、うん……」

委員長はため息を一つつくと、自分の席に戻っていった。

「何だ、ありゃ?」
「カイト君は、気にしなくていいよ。それより、早く食べよ。昼休み、終わっちゃうし」
「おう、そうだな」

そんなわけで、なんだか騒々しい昼休みも、そんなふうに幕を閉じたのだった。
ちなみに、空の彼方に消えた(リングアウト)はずのシンゴは、次の授業には戻ってきていたりするのだった。
まぁ、得てしてシンゴとはそういうヤツであると記しておこう、うむ。


〜5月11日〜(火)

キャアキャアと、楽しげな女子達の声。
ポンポンと跳ね回るボール。
俺は、それを見ながら悪友のクーガーと話をしていた。

「は〜。んじゃ……噂は全くデタラメだったのかよ」
「ああ、全く迷惑な話だっての」

今は、体育の授業で体育館でバスケをやっている。
俺達は、さっきまでゲームをやっていたので、現在は休憩中である。
そんな中で、話題はどうしても、昨日のことに移りがちだった。

「ま、そんな噂を流されるようなまね、してっからだろうけどよ」
「そうか? 別に俺、何も問題になるような事、してるつもりはないけどなぁ」
「……ったく、これだから自覚のないヤツは困るんだ」

呆れた口調で、クーガーは天井を見る。

「大体、他のクラスの女子とかと、親しくしてる時点で、お前は問題があると思うぜ」
「他のクラス……? ああ、竜胆とか?」

竜胆とは、ミュウの友達で、通称「さやちゃん」である。
ちょっとした、もめ事の時、知り合いになった女子生徒だった。

「それだけじゃねぇよ。 ハーフエルフの眼鏡のヤツとも親しいって聞いてるぜ」

おそらく、セレスのことだろう。
だけど、竜胆とはここ数日前に知り合ったばかりだし、セレスはこの前助けたときの、お礼を言いに来ただけだ。
……まぁ、クラスの前でウロウロしてて、俺のことを呼びだしたんだから、そう勘ぐられてもしょうがないだろうけど。

「いっとくが、俺は清廉潔白だぞ」
「嘘つけ」

ジト目で、俺の言葉を言外に斬り捨ててしまうクーガー。
何とも話が続かないため、俺達はそのまま、女子のバスケの試合を見物していた。

「しゅっ!」

フワリとなびく髪。流れるような身体捌きで、大活躍しているのは委員長だった。
その手から放れたボールは、まるで吸い込まれるように、ゴールに吸い込まれる。

クラスの男子も女子も、歓声を上げる。一部、熱っぽい視線を向けている生徒もいたが、委員長は気にもしていないようだ。
俺達も、時間も忘れて、委員長のプレイに見入っていた。

「しっかし……いいよな、委員長は」

しばらくして、クーガーがそう呟いたのは、委員長のチームの試合が終わってからだった。

「何だ、クーガーって、委員長みたいなのが好みなのか?」
「そんなんじゃねぇよ。……ただ、すげえなって思っただけだ」

からかう俺に、笑いもせずに、クーガーは言う。

「才色兼備、魔術も神術もこなせて、剣の腕は男顔負けだぜ……恵まれすぎだっての」
「う〜ん……」

言われてみると、確かに委員長って何でも出来るよな。
おまけに美人だし、気取ったところもないし、みんなから好かれてるし。

「何だ、委員長って……いい女じゃないか」
「お前な……今度は委員長を狙う気かよ」
「おい、人をなんだと思ってんだ?」

俺の問いに、クーガーは沈黙で答えた。
しかし、ハッキリ言って誤解である。確かに、委員長は美人だし……彼女に出来れば嬉しいだろう。

だけど、委員長が誰を好きなのかは俺にだって分かるし、少なくとも俺は彼女とそういう関係になるとは思っては居なかった。

少なくとも、この時は……。

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