那古教編・暫定版 

〜03〜
〜過去の残照〜



シンシュウの北方にあるエチゴ。はるかな昔より、二つの地域は諍いが絶えない関係だった。
神格の面において、シンゲンに匹敵する毘沙門――――通称、ケンシンを信仰する地域は、過去より幾度、南下してシンシュウを伺おうと言う気配を見せた。

カワナカジマの戦いは時を経ること5回、その他の戦いも含め、何十もの戦が両地域間で行われた。
今でこそ、両地域の争いごとは沈静化しているが、それも表面上のもので、シンシュウとエチゴの中は、決して良好とは言えなかった。

そのエチゴ所属の部隊が、少数とはいえ、部隊を展開し、南下の気配を見せている。
それは決して、シンシュウとしては看過できない事態でもあったのである。

「首謀者は直衛愛那……かつて、シンシュウに留学してきたこともある、直衛信正の妹です」

シンシュウ統制会の会議室。各地より馳せ参じた長老達が顔をつき合わせて座っている。
長老といっても、正確にはそれぞれの部隊の指揮官格であり、老若男女さまざまな人々がそこに居た。

「それで、エチゴの本元はどう言ってきているんだい?」
「エチゴに問い合わせては見ましたが、当方には一切関係のないこと、という返答が帰ってきたのみです」

長老の一人の問いに、海野が応答する。司会進行の得意な海野は、よく一族の会議でも司会を務めているらしい。
ともあれ、問題はシンシュウに居座っている、白虎隊の面々についてだった。
シンシュウとエチゴは犬猿の仲である。北方にはしっかりと警戒のために情報の網を張り巡らせていた。
にも拘らず、白虎隊はあっさりとシンシュウに侵入し、部隊を展開させているのだ。数が少ないとはいえ、決して実力は侮れないだろう。

それに、時期が時期だけに問題だ。確かにシンシュウ駐在の全軍を向ければ、白虎隊は物の数ではない。
ただ、それでどれくらい損害が出るか皆目見当がつかないし、ここシンシュウにも、ウィミィの士官が駐在している。
オオサカに一刻も早く向かわなければならないこの時期、余計なことで時間を削るわけにもいかなかった。

「駄目もとで送り出してきた捨て駒か……あわよくば、二十一を殺せるとでも思ったのかも知れぬな」
「……? ちょっと待て、何でそこで、俺の名が出てくるんだ? 俺が戻ってきたのはいきなりだったし、俺を狙ってってのはないだろう?」

筧の爺さんがポツリとつぶやいた言葉に、俺は怪訝に思ってそう言ってみる。
ただ、疑問に思っていたのは俺だけだったらしく、どこかあきれたような視線が、返答代わりにいくつも俺に向けられた。













































































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