☆ 答 18 ☆
A・馬に揺られてうまくなったもの
今では東京方面に行くことを「上る」といいますが、昔は反対だったのです。京都方面へは「上る」、関西から江戸方面へは「下る」でした。
東海道を下ってやってきた名産品はいろいろありますが、中でも江戸でとりわけもてはやされていたのが、灘や伏見の酒でした。米や水、技術がいいからうまいのは当たり前、それに加えて、道中揺られているうちに杉樽の香りが移って、熟成も程よく進みます。かぐわしくてうまいこの酒は「下り酒」と呼ばれて、そこいらの酒とは一線を画されたのです。あまりにも評判がいいので、「下り酒」を飲むことができなかった関西方面では、わざわざ江戸に足を運んでUターンさせた「戻り酒」を発売したほどでした。
それに対し、江戸のすぐ近くでつくられていたのが「下らぬ酒」。もともと水質が劣るうえ道中が短いから、熟成も足りなければ杉の移り香もない。つまらない、価値の低い酒というわけ。
そして「下らぬ」は、じきに酒以外のことにも使われるようになり、19世紀初めには独立した形容詞になっていったようです。江戸の庶民語の宝庫『浮世風呂』にも、やっぱりちゃんと登場していますしね。
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