☆ 答 3 ☆

B
・江戸市中の堀を走る、船上風呂屋

「湯船」の誕生は江戸時代。蒸し風呂が普通だった時代を過ぎ、湯につかるという新しい入浴スタイルが江戸の町に登場したのと同時代のことです。

当初の庶民の風呂は、桶に湯を入れて船に積み、堀を走って客を取る、いわば移動式の船上銭湯。「湯船」とはこれを略したものだったのです。入浴料は10文。江戸の町を縦横に走る堀の淵に、やがて「湯船」目当ての人々が大勢やってくるようになると、今度は陸に上がって今あるものに近い銭湯になりました。それでも湯をためる大きな桶は「湯船」といい、今に続いているというわけです。

江戸時代以前は、庶民は寺の奥に設けた風呂に入れてもらっていました。それも湯ではなく蒸し風呂。寺の蒸し風呂は僧にとっては修行の一つ、一般人にも清めの意味がある非日常的なものでした。体の汚れだけなら川や池で洗うこともあったようです。しかし、江戸の町でもてはやされた新しい風呂の習慣は、そうした宗教的な背景のある蒸し風呂とも川で汚れを流すのとも全く違う、入浴文化の幕開けとなりました。「湯船」に始まる銭湯は、じきに江戸町人の社交場となっていったのです。



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