刺青

「こっちに来て、みんなとトランプしよ」

そう言われても、少女は返事もせず、ただボンヤリとテレビ画面を見ている

『けっ!なぁ〜にがおもしろくてガキと一緒に遊べるかっ』

可愛気のない5才の女の子である。

すぐ横では、酒の入ったグラスが無雑作にそこかしこに置かれ

タバコの煙りがもうもうする中で、男達が博打に興じている。

 

ふわっ〜

少女の目の端に鮮やかな色彩が目に入った。

目をやると、そこには背中一面に描かれた般若と昇り竜の彫り物

上気した男の背中から、一層鮮やかさを放っている。

もの珍しさから目が釘付けになる少女。

『ちれい・・・』

と、同時に手が伸びる。

スーーッ。ペタッ、ゴシゴシ(゜゜;)\(−−;)ォィォィ

ビクッ。

驚いた男が、険しい表情で振り向く。

一斉に周りの男達の殺気立った男達の顔が、少女に向けられる。

刺青の男は、相手が5才の少女とわかるや否や、相好を崩す。

殺気立った気配もものともせず

小さな手に色彩が、付いてはないかと確かめている

「おっちゃん、これ自分で描いたん?」描けるわけねーっつの

刺青の男は、若さにまかせ彫り物を入れた自分の背中を悔いる様子で

「嬢ちゃん、大きなってもなぁ、こんなんは描いたらアカンで」

そう言って、おかっぱ頭の少女の髪を、やさしく撫でつける。

「ふ〜ん。」

 

ふわ〜。

少女から刺青を隠すようにして、男は脱いだばかりの上着をはおる。

「すんません」

正面に座り、成行きを見守っていた祖父に

そう言っているかのようにペコリと頭を下げた。

祖父のおだやかな声が、少女に言う。

「みんなと一緒に、あっちで遊んでなさい」

聞こえぬフリで、少女はテレビ画面に目を戻す。

少女の頭の中では、良からぬ遊びを考えている。

『か、描きたい』

 

次の日、少女はお絵描きに夢中になっている。

お人形さんの服を脱がし、背中にクレヨンでそれらしきものを描いてみた。

が、

般若にはほど遠く「おたふくに角が生えた状態の顔」と

竜なのか、ワニなのかわからないシロモノ

_ロ(.. )mケシケシ

げっ、、マズイ。

きれいに消えん。(ーー;)

こうして、少女の「刺青ごっこ」は一日で終わった。