高橋 克彦
総門谷 これこそ小説の極みではなかろうか。私なぞは文庫本にして千頁近くはあるこの本を三日三晩読み通してしまいました。一括りにいえばSF小説の部類でしょうが、そんな固定観念は無用の事でしょう。あっと言わせる展開に、熱い友情。これこそエンターテイメントの真髄です。この総門谷は現在も連載中で、シリーズは既に5部を数えますが、これを読まずしてこの作家は語れない。
SF小説はちょっと、という方にも是非にご一読を。
決して時間とお金の無駄にはなりません。
炎立つ 著者代表作の一つ。この本で語られる蝦夷の生き様は、かつて東北には己の価値を人として認めさせようと闘った一族・部族が、何代にも亘り存在した事を痛切に感じさせます。きっと熱い思いと涙なしでは読めない事でしょう。まさに、魂の一作です。
火怨 やはり蝦夷の闘いの物語。東北に生まれ東北に住まう著者の、東北に掛ける例え様の無い愛おしさを感じます。物語は過酷な運命に翻弄される蝦夷達のお話ですが、登場人物たちの存在感と生き様には、一貫して清々しささえをも感じる事が出来ます。それこそが東北を愛し、かつての蝦夷と呼ばれた男達へのレクイエムなのでしょう。
東北歴史三部作第二部。是非是非、ご一読を。
風の陣 東北歴史三部作第三部。現在も掲載中の小説ですが、先行して立志編・大望編が出版されています。上の二部作を読んだ方なら、同じ体温で読む事が出来るでしょう。
竜の柩
新・竜の柩
霊の柩
総門谷に続くSF小説ですが、その内容はとんでもなく興味深い。この本も三部構成となっており相当な頁数になりますが、一気呵成に展開していくストーリーと、地球の過去の遺跡に纏わる仮説には、強ちフィクションとは思えない事実の様な気にさせられてしまい、読み始めれば紡ぐ手を止める事は難しい事でしょう。この面白さは多くの方に感じて欲しいと痛切に願います。
過去は未だ明白になっていない。
ご一読を。
写楽殺人事件
北斎殺人事件
広重殺人事件
浮世絵三部作。私自身、浮世絵に関する興味は全く持たない人間でしたが、この本に出会い、傾倒していく事になりました。浮世絵の世界とは、勿論その芸術性の高さにおいても評価され魅力を感じる処でしょうが、この三部作のテーマの如く、そのミステリアスな部分を数多く残している事に驚きます。写楽とは一体誰だったのか、北斎の高齢での旅の意味は本当に画狂人故の事なのか、広重の不可解な死の謎は。私の様に浮世絵への興味のきっかけが、絵を見ずに始まるのもまた、面白いものです。小説の内容は、やはり著者相変わらずの人物を立たせる、とても上手い作りになっています。
浮世絵に先入観や抵抗のある方にも、必ず楽しめる本だと思いますので、読む機会のある事を切望します。
前世の記憶
緋い記憶
蒼い記憶

記憶シリーズ。
誰しもがひょっとした事で思い出す記憶というのは存在します。そんな記憶をテーマに哀切・恐怖・運命と、人の隙間に入り込みます。
一級ホラー小説として読んでみてもかなり面白いので、どうぞお手元に一冊。
舫 鬼九郎
鬼九郎鬼草子
鬼九郎五結鬼灯
時代劇小説を読んだのは初めての事でした。はっきりいえば、この分野には中々手を出そうとは思わなかったのですが、その浅はかさに己を恥じ入りました。江戸の人々の暮らし振りの描写などは、この著者の得意分野な訳ですから面白くないはずがありません。まさに時代活劇では定番の勧善懲悪ものですが、そのシンプルさもまた魅力と映る訳ですから、読まず嫌いはいけません。
もし一度でもこの小説を読まれる機会がありましたら、「完四郎広目手控」のシリーズなども大変面白いと思いますので、是非にご一読を。

ここまで紹介してきたのは、主だったシリーズものばかりです。
この著者は短編集も非常に面白く、ホラー系統には秀逸の著作も数多くあります。決して損はさせない処か、必ず本を読む事の面白さを実感出来る小説ばかりですので、是非、一度は手にとって読んでみて下さい。