定年ゴジラ | 日本の各地にあるニュータウン。この作家の小説ではこのニュータウンが一つのキーワードになっています。様々な思いを込めて購入したマイホーム。その世帯主・夫婦・子供・ご近所の其々の思いを小説にしていますが、この作品では定年を迎えた世帯主が主人公です。高度経済成長時代を生きてきた典型的なサラリーマンが定年後に何を感じ、何を為していくのか。その一つの形を柔らかな優しい視線で描かれております。これからまさに団塊世代が定年を迎え世に溢れてきます。彼らは地域との関わりという今迄一番蔑ろにしてきたコミュニケーションを如何に考えていくのか。 参考になる小説ではないでしょうか。 |
ナイフ | 短編集。現代の子供達のいじめの世界を、読み進める事がしんどくなるほどのリアリティを持って展開していきます。果たしてそんな時に親の出来る事って何だろう?答えの無い焦燥感と現実。一体どこで折り合いをつければいいのか、終わりの無いような日々を送る子供達。子供達は折り合いという言葉をきっとしらないだろう。折り合いは妥協ではないという事を知って貰いたい。 そんな事を読後に考えた小説でした。 |
ビタミンF | 直木賞受賞作。40歳前後の中年男のお話です。家族って、夫婦って、仕事って、子供って、と年齢的に人生の岐路に立った中年男達が色々と考えます。この作品を読んだ当時は30歳前でしたので、そんなにうじゃらうじゃらと考えるモンかねぇと思っておりましたが、最近は何となく本当に僅かですがちょっぴり解る気がしています。自分の人生を振り返る、そんな時が来るのならば正面から受け止めてみたいと考えてみました。 |
流星ワゴン | 気力も萎え人生の覇気を無くしてしまった中年男。正直あまり共感は出来ませんが、作者の意図に見事にはまり涙してしまいました。特に死んでしまった父子の切ない気持ち。これに私、やられてしまいました。 小説って面白いなぁ。 |
疾走 | しんどい。この本はしんどすぎる。それでも読み続けてしまった。一体、何がこの子を苦しめるのか。学校のいじめか?家庭の不和か?地域の因習か?社会の構造か?それともこの子が特異だったのか?余りにもリアルで言葉を失い、思考を停止したくなる。それでも、読後感は悪くない。何故なのだろう?私がこの社会に何の疑問も持たないからなのだろうか?私は衆愚か。この本から受けた衝撃は忘れたくはない。それだけで良しとしたい。 そんな作品でした。どうぞ皆様もご一読を。 |
この作者の作品は他にも少年犯罪や家族モノの短編集など、どれも考えさせられる内容のものが多く沢山あります。ご紹介しているのは本当にほんの一部の作品ですので、どうぞお手になされては如何でしょうか。 |