梶尾 真治
クロノスジョウンターの伝説 私の知る限り最高の時間SF小説です。この小説はタイムスリップする機械の原理はもとより引き込まれる男女の恋愛が物語の基調ですが、とにかく面白んですよ。それも爽やかにというか清々しくというか、読後感が堪らなく良い感じなのです。私、恋愛小説は全く読まない人間ですが、この小説だけは別としたいと思います。SFに先入観のあるお方も、どうぞお手に取って初めのチャプターだけでも読んでみて下さいな。必ず後悔はしないはずです。
黄泉がえり 死んだ人が蘇ってきたら・・・。グロテスクなホラー小説を思い浮かべてしまいますが、本書に限りそんな訳はありません。小説の中では、最愛の人を亡くした若い母子・人気絶頂だった女性シンガー・幼くして死んだ兄弟などを中心に、蘇った人との切ない物語が紡がれます。
小説っていいなぁ、と改めて感じた一冊です。作家の想像力ってやっぱりすごいなぁと感じた小説です。
皆様もどうぞ一度。
OKAGE ‘黄泉がえり’と姉妹編の位置付けの小説です。どちらかと言えばこちらの小説の方はホラー色が強いのですが、子供の大量失踪事件から始まりモンスターみたいなのも出てきます。しかしこの作者には普遍の物語性がありますので、抵抗なく読めるのはさすがです。リリカルという言葉がありますが、他の作品にも共通していえるこの叙情性こそがこの作者の一番の面白さではないでしょうか。
ちほう・の・じだい 短編集。SF・ホラー・ギャグetcと範囲の広い内容です。全体的にシュールな感じを受けましたが、そこはやっぱりこの作者ですからストーリーテーリングがさえわたっております。この作者の長編物しか読んできていませんでしたが、こんな短編もあるんだと改めて作家の力量を感じました。なかでも下ネタ風の作品は大笑いです。さらっと読めますので、お手元に一冊。

この作者は現代日本を代表するSF作家といわれています。職業作家ではないので作品の発表ペースは比較的緩やかですが、完成した作品はどれも面白いものばかりです。上記以外の作品もまだまだ沢山ありますので、是非一度読まれてみてはいかがでしょうか。