クリスマスまでなんマイル
ある朝、珍しくハリーに梟がやってきた。
ハリーに家族が出来たので、それは不思議ではないのだけれど、今まで縁のなかった分、家族からの手紙にどう対処すれば良いのか判らず、親友達に相談を持ちかけたのは、正しいことだと思う。

「それで?」
 ハーマイオニーの顔には、わからないと大きく書いてある。
「つまりね、クリスマスツリーを誰が飾るかで、もう1週間、ケンカをしてるんだって」
「・・・・・・?」
 今度は、ロンまでわからないと書いてある。
「だからね、僕と一緒に飾るか、僕が帰ってくる前に飾っておくかって、こと。
 先生は、僕は1度もしたことがない筈だから、一緒に飾るべきだって。シリウスは、だから、飾り付けて迎えたいって。対立してるんだって」
「・・・・・・」
 2人とも、無言だ。ハリーは仕方無しに、水を向けた。
「どうしたら、いい?」
「まだ、ハロウィーンにもなってないわねよ?」
「うちは、」
 うちと口にする時、とても優しい気持ちが胸を暖める。
「もう、クリスマスなんだ」
 ハーマイオニーが呆れたように、頭を1つ振って、
「それで、1週間?」
 続けて、シンジランナイと呟いたのを、ハリーは聞き取った。
「そう。嘘じゃないと思う」
 どちらかというと、もっと長い間でも、ハリーには納得がいった。
 あまりに、どうしようもなく、これ以上こじれたら、家庭の危機、な所まで来て、ハリーに相談という名のジャッジを求めたのだろう。
 想像がつく、荒んだ会話、相手の尊厳をぎりぎりまで貶める、罵りあい。リーマスが、切り札のように取り出す、家出という言葉。
 これで、勝負のついた瞬間には、謝ることなく、元の親友に戻っているんだから、一体、パパ達の友情って、と何度思ったことだろう。一番悲しいのは、たったの、一夏を過ごしただけで、それに慣れてしまったことだろうか?
 だから、この手紙にも、実はあまり心配はしていない。
「ルーピン先生って・・・・・・」
 ハーマイオニーが、濁した言葉をハリーは、ずばりと続けた。
「大人なんだけど、意外に子供っぽいんだ」
 それを口に出来るのは、ハリーだけだと、なんとなく優越感にかられる。
 ロンが、兄達のことを語るような気分だろうか?なんとなく、くすぐったくって、大声で言いたいような、小声で言いたいような。ハリーにとって初めての経験だった。
「ハリーは、どうしたいの?」
「一緒に飾り付けをしたいんだ。なんか、家族っぽいよね?」
 家族で迎えるイベントを、1つとして、逃したくない。
 あと、何年か先に、初めてのクリスマスを話題にした時に、ハリー1人が、クリスマスツリーの飾り付けを知らないのは、嫌だった。
 それに、リーマスが、もの凄く、楽しいことをやらかしてくれる筈だから、ハリーだって、その場で、見ていたい。ツリーを前に披露してくれる話だけでは、もったいないし、話だけで知るのは、パパやママ達の学生の頃の話だけで充分だった。
「なら、そういえば、いいじゃないの」
 ふーっと、ハリーは溜息をついた。
「僕が、先生の方ばかり賛成しているから、シリウスが、落ち込みそうでさぁ」
 リーマスとの方が、育った環境が近い所為か、リーマスが提案する方が、ハリーにとって興味をそそられるのは、仕方がないと思うのだが、それでシリウスが落ち込むのは、後が大変だった。「いいのよ。
 だって、うちだっていつもママが勝つのよ?」
 パパはね、落ち込むのも仕事なのと、ハーマイオニーは、それは、自信たっぷりに言い切った。でも、ロンにも理解できない論理に、ハリーが理解できる訳がない。そもそも、ダーズリー家では、意見の対立など見たことがなかったのだ。
「・・・・・・僕んちもそうだけど。
 でも、ハーマイオニー、それが、シリウスと先生の・・・えっと、争いに、何の関係が、あ、るん、?」
 ロンは、2人のケンカをなんと表現するべきが、少し口篭もり、その隙に、ハーマイオニーの、全てを知っているの、わ・た・し。のオーラに負けてしまった。
「父親と母親の代理戦争でしょう?」
 そうなのかい、とハリーはロンと顔を見合わせる。
「なら、勿論、勝つのは、お母さまの代理の、先生に決まってるじゃないの」
 もう1度、ハリーはロンと見合わせる、何が、勿論なんだい。
「そういうものなの?」
 ハリーには、何処も理解できない論理に、ハーマイオニーは、これだから、男ってという諦めの顔をする。
「そういうものなのよ」
 自信たっぷりのハーマイオニー、いつも正しいハーマイオニー。その姿は、何処かリーマスに、理解できない、理屈でもって、それは屁理屈とも言う。シリウスを勢いだけで、やり込めるその姿に、似ていた。
なぜか、続き物になっていた、クリスマス話その2。
クリスマスまで、辿り着けるのかは、神のみぞ知るって感じ。
それも、クリスマスっぽくって、いいかしら。
しかも、今は、いつ?シーズン外してます。
その前に、これをクリスマスと言い切る時点で外してる。
延べ半日で書いた第1話、いつの間に第1話・・・。
タイトルが決まらなくって、延べ1週間。
そして、年が明ける。
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