どっちにするの?
 それは、俺たちが、ポッター家に遊びに来た、より正確に表現すると、ポッター夫妻にリーマスを拉致される勢いで連れて来られた、だから、俺は、完全に『おまけ』だ。散々な夜が明けた、翌朝のテーブルでの出来事だった。

「リーマスとジェームズだって?」
「そう、目の前で、2人が同時に危機に陥っていたら、どっちを助ける?」
「なんだ、それは?」
「昨夜さぁ、リリーと話し合ったんだよ」
「くだらないことを」
「そっかなぁ、で、どっち?」
「どっちって、2人とも助けるに決まってるんだろ?」
「あー、いやねぇ。優柔不断なオトコって」
「いってくれるな、じゃ、てめぇは、リーマスとジェームズ。どっちを助けるんだ?」
「あんた、馬鹿?決まってるじゃない」
「リリー、勿論」
「ええ、ジェームズ。勿論、リーマスよ」
「ジェームズ、おまえの奥方は薄情者だぞ。今からでも遅くない、考え直せ」
「うん、だね。リリー、勿論、リーマスだよね」
「ヲイ」
「ったく、説明されなきゃ判んないの?本当にこの馬鹿が次席だったなんて、ジェームズの首席に価値なんかないってことよね」
「御託はどうでもいい、俺の何処が馬鹿なんだ」
「リーマスとジェームズが同時に危機に陥っている?
 わたし、女の助力がなくっちゃ、自力で生き残れない、そんな情けない男と結婚した覚えなんかないわ。そうよね、ジェームズ?」
「勿論、僕だったら、自力で生き残り、リーマスを助けるリリーの手助けをして3人で、生還する。
 この選択肢を選べないような人間じゃないと信じてたよ、リリー」
「勝手にしてろ。
 じゃ、ジェームズ。おまえはどうなんだ?」
「はい?」
「俺とリリー、どちらを選ぶ?」
「リリー」
「即答かい、おまえは」
「決まってるだろ」
「じゃ、俺とリーマス」
「リーマス」
「おぉまぁえぇ。じゃ、じゃあな。リーマスとリリー」
「それは難しいな」
「ぜんっぜんっ。悩んでねぇっ」
「状況によるなぁ。もし男にナンパされてたら、リーマス。デスイーターが相手なら、リリー。シリウスに襲われてたら、勿論、リーマスだし」
「もう、いい」
「ジェームズ、わたしったら、世界で一番愛されてるのね」
「何を今更、リリー。僕の愛は、リリー、きみのものだよ」
「そこで、笑ってるおまえはどうなんだ」
「僕?」
「そうだ、俺とリリー、どっちを助ける?」
「考えるまでもないけど、リリーだよ?」
「おまえだけは信じてたんだぞ?」
「シリウス、よく考えて欲しいんだけど、きみとリリー。今この状況で、きみを選んだら、男として僕は、間違ってると思うよ」
「そうよね、わたしは女で、あんたは男。この差って結構大きいわよねぇ。
 つまり、あんただけが、選べないってことよ。
 ああ、わたし、どうしてこんな薄情な男との仲を認めちゃったんだろ」
「おまえ、嘘でもリーマスって言っとけよ」
「ジェームズ、何いってるのよ。誠心誠意をもってリーマスを選ぶのが当たり前でしょう?
 あなたを選んでたら、即刻、離婚よ、り・こ・ん。
 こんな頼りのない男どもなんか、当てにしないで、わたしがリーマスを幸せにするわ」
「そういう訳で、シリウスくん。僕の為にもリーマスを選んでくれないか、お願いするよ」
「おまえらなぁ」
「リリー、その辺で許してくれないかな?」
「リーマス、あなた、甘すぎるわよ。こんな薄情な馬鹿は、一度きっちり躾ないと駄目なのよ」
「あのね、リリー。選べないシリウスだから、好きなんだよ?」
「リーマス、男を見る眼を養いなさいよ。こういうのは、優しいっていうんじゃないのよ?ただの甲斐性なし。判ってるの?」
「判ってるよ。だからね、リリー。
 僕は、その甲斐性無しの優柔不断のシリウスだから、愛してるの」

 果たして、リーマスは俺を本当に愛してくれているのだろうか?
 これは、リーマスを選ばなかった、俺に対する嫌がらせなのか?
 どっちなんだ、リーマス。
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