ボガートのこと |
読み飛ばし可
形態模写妖怪。一番怖いと思うものを判断すると、それに姿を変える。
退治法は、怖がっているものを愉快でおかしい姿に変えられるかを考えながら、『リディクラス』の呪文を唱える。
ただし、この呪文は、直接攻撃ではなく、ボガートに混乱を招き、存在を消滅させる、間接攻撃呪文であると思われる。
ハリーたちは、10回近くの呪文攻撃でやっと、破裂し、何千もの細い煙の筋になって消えた。が、リーマスは、一度の呪文で消し去った。使用者の熟練具合の違いなのか?
また、なぜか、一番近くにいたのがネビルとはいえ、箪笥から出てきたボガートは、既にスネイプ教授の姿をしていた。
一番近くにいた人物の怖いものになるのなら、ボガートを中心とした円周上に並んだ場合、果たして、ボガートは、どの対象の怖いものに代わるのだろうか?ボガートが任意で選択した人物のそれであろうか。ならば、可能性として、後方からの物理的直接攻撃も有効か?
複数の人間の怖いもののキメラになったとの報告もあり。2人くらいなら、可愛いが、10人くらいのキメラになったら、それはそれで恐ろしい。
私見を述べさせていただけるなら、ボガートは、その場にいる各自の恐ろしいと思うものに変化する。実際としては、変化ではなく、そう見える、認識させるだけで、構わない。
複数の人間が同時に、違うものを見ることによって、ボガートの恐ろしさが増すのではないか。Aにとり恐ろしいものが、背後にいるBも恐ろしいとは限らない。Bにとっては、ボガートは恐れる存在ではない。
また、恐ろしいと思うものとは、自覚するものと、自覚すら出来ないものが存在する、恐怖としては後者の方がダメージは大きい。と思われる。愉快犯的生物でなければ、深層意識の中の恐ろしいものに変化するのではないだろうか。
例えばである、「まんじゅうこわい」の場合、ボガートは、饅頭に変化するのだろうか。言葉で怖いといっているのは、饅頭である。心に思い浮かべられる『怖いもの』など、所詮、怖いものではないと思うのだが、いかがなものであろう。
彼らに出会えたら、わたしは、きみらは一体なにを考えて生きているのか、問いたい。 |
《エクササイズ》
リーマス・ルーピンについて知っていること。
ホグワーツ魔法魔術学校の「闇の魔術に対する防衛術」の教授。
あの二度にわたる動乱を、一次、二次ともに不死鳥の騎士団員として戦った、人狼。人狼であるから、正式な騎士団員ではなかったそうだけど、生き残った団員は、最も敵に廻したくない同志と称えている。
でも、大多数の生徒は、信じていない。かくいうわたしもそのひとり。他の生徒より少しだけ親しい関係のわたしだから、先生の本当の姿を、ほんの少しだけ、知っている。だから、あれは、人狼であるだけで、これから不当に差別されるだろう仲間を有利にする為の流言だと思ってる。
親しい関係であっても、ブラック先生を、『お兄さん』として会う、月に一度だけの時間以外は、他の生徒と区別しない公平な先生。
だから、先生としては、99点。マイナス1点は、ごくたまに、信じられないことをしでかすから。
そう、例えば、今のように・・・
箪笥に住み着いたボガートの退治法は、非常に生活に密着した大事な知識と前置きして、先生は、たまたま授業のわたしたちに、実地訓練という形で教えてくれようとしている。
「闇の魔術」と渡り合う必要のない時代だからと、硬軟取り混ぜての先生の授業は、生徒たちには人気がある。
「じゃあ、方法は判っているね」
箪笥を背に、先生は、事前に学んだ知識を思い出すように、わたしたちに、改めて、ボガートの退治用呪文の説明をしている時。
がたんばたんと、箪笥は飛び跳ねまわり、扉がきしむ。先生は、いつもの事だと気にしてないけれど、その弾みか、留め金が、ゆるゆると緩み、ポロリと外れた。
簡単に外れすぎる、これって、もしかして、鍵のかけ忘れ?
・・・・・・こういうところが、先生だって、言われてる。
扉が開き、音もなく箪笥から現れたボガートは、一番近くにいる人間の恐れているものに・・・・・・・・・変化する。
この時のわたしたちの関心事は、ルーピン先生の怖いものって何だろう?という純粋な好奇心。先生の怖いものは、予想もつかなかった。だから、生徒たちは、固唾を飲んで見守ってた。
人生サイアクな体験談として、複数のデスイーターに囲まれた時は死ぬかと思った、といったすぐあと、ピクニックで雨に降られて、前の日から準備していたピクニックバスケットが濡れて大変だった、と繋げる先生の本当に怖いもの、知りたいような知りたくないような、複雑な心理は理解してもらえるだろうか。
現実として、このあとの先生は、いつものおっとりさはどこに?ってくらいに、素早かった。
背後の何かを感じ取ったのが先か、わたしたちの視線が一点に集中するのに気付いたのが先か。
振り向きざま、それまで、手にしていなかった筈の杖を構え、ソレに対して、攻撃し、攻撃し、攻撃し。
何が起こったのか。起こっていたのか。
生徒の理解が追いついた時には、哀れにも、それは原型を留めずにいて。
噂は本当だった証拠を目の前に突きつけられた衝撃で、言葉もなく、黙り込む生徒に、気付くこと、1分。
先生は、原型の留めないそれを、なにと判断したのか。
「あー、わたしは、お菓子の持込を禁止するつもりはないけれど、授業の邪魔をしないものに限ると、条件をつけてもいいだろうか?」
まだ、黙っている生徒に、何のつもりか肩を竦め、改めて、授業に戻ってみても、勿論、そこに、本日の教材はいない。あるのは、扉が開き、空っぽの箪笥が一棹。
箪笥の中に頭を突っ込んで、ぐるりと見回して、やっと、空だと認めはした。だからって、箪笥の後ろに隠れてるわけもないのに、今度は、箪笥の周りをぐるりと廻る。
この中で、ただひとり、理解していないのは、当の本人だけと言う。
「どこにいったか、見ていたかい?」
取り逃がしたら、フィルチさんがうるさいと、慌てるなか。
誰が、真実を告げるかを、生徒同士で押し付け合い。
そして・・・・・・・勇気ある、とあるひとりの生徒が、
「先生、それです」
指差した先には、ぷすぷすと音を立て、煙と消えようとしている、バラバラになった蛙チョコの残骸。
ありえない現象を生み出す、蛙チョコを前に、先生も、生徒も黙り、再び、2分。
勿論、生徒から行動を起こせるような状況ではなく、何かが起こるのを待ちわびるだけの長い時間。
自分が動かなければ、なにひとつ、状況が変化することはないと察したのだろう。先生は、何かを求め、探していた。
そして、ボガートと蛙チョコの関連に気がついたのか、現実を認める勇気が残っていたのか。または、なし崩しにごまかす為にか。
「・・・・・・・・
そういう訳で、いかにボガートといえども、化けてしまってあとは、過度の・・・飽和攻撃を加えることにより、消滅させることができるという。無闇に恐れる必要は、全くない、うん、そういうこと」
かなり無理な解説をしている先生の必死さは、生徒に伝わったことだろう。
いうまでもなく、この必死さは、自己の攻撃の正当化に費やされるのではなく、ブラック先生に伝えないでくれという言葉なき請願に掛っている。
恐れているのは、この授業の結末をブラック先生に知られ、呆れられ、怒られる事。なら、ボガートが化けるのは、ブラック先生でもいいようなものなのに・・・・
なのに、うろたえる先生の後ろで、いまにも消えようとしているのは、ボガート蛙チョコ・・・・・・・・・
せん・・・せ・・・い・・・
・・・・・・・・・・・ジョン・・・・・・・・・ |
補足。
万が一、この少女の素性が判らない方へ。『春なのに』または、近日中にUPされるであろう『まちぶせ』を参考にしてください。
リーマスが対面するボガートは、満月になりますが、『うち』のリーマスは、満月を、うざったいとは思っていますが、恐れてはいません。
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