Q−ZAKUの
突発日記
「チョコレート・パニック」
ウチの会社は
二月になると後に混雑する三月の需要を控えてけっこう暇になります
が
今年は妙に忙しいです
これは実に喜ばしいことと言えます
暇ほど苦しいものはありません
どこもそうだと思いますが・・・
仕事がなくなると決まって
営業に行けとか、ローラーにまわれとか
各家々に訪問して仕事を取って来いという命令が下されます
ちなみに私は無差別に訪問するのが大嫌いです
なぜなら
逆にされるのが大嫌いだからです
自分にされていやなことはしたくありません
実は去年の一時期、結構ひまな期間があったので・・・
そういう雰囲気があったのですが
書類を作っているからといって突っぱねました
しかし本当は
仕事するふりをしてガンネタを考えていました
さて、チョコレートパニックなどという
タイトルを付けてしまいましたが
念のために言っておきます
バレンタインデーとは
まったく無関係です
これは私が無差別訪問をされて
わずかな金銭的被害と
甚大な精神被害をこうむった
あるエピソードです
お話をさせていただきます
あの日は丁度、夏でした
暑い日だったと記憶しております
私はあるアパートの空き部屋で仕事をしておりました
上の階の部屋のお風呂場から水が漏れて下の部屋が水びたし・・・・これを治してほしいという依頼があったからです
私は風呂場を解体し
樹脂による防水工事をしておりました
ちなみに、ここで使用している樹脂は
バケツに入れてローラーでペンキのように塗り付けるのですが
一度硬化剤を入れてしまうと数分でカチンコチンになってしまうという代物なのです
まさに時間との勝負
私はバケツに硬化剤を入れ・・・・・
仕事に取り掛かろうとした、まさにその時・・・・
突然玄関の呼び鈴がなりました
「ピ〜ンポ〜ン・・・御免ください」
私は仕事から手が離せないので
無視をしました
しばらくしてまた・・・・・
ピ〜ンポ〜ン
ピ〜ンポ〜ン
ピ〜ンポ〜ン
あまりにもしつこい!!
ここは空き部屋なので・・・
対応する義理などないのですが
仕事に支障をきたすので
私は玄関を開けました
そこには
モーニング娘の加護亜依にとても似ている
女の子が立っていました
加護亜依といってもあのしまりの無い顔つきではなく
思慮深い、大人びた表情しておりました
手には体に似合わない、大きなかばん
そして
何故か・・・・・
迷彩服を着ておりました
彼女は私の顔を見るなり
突如その大きなかばんを開けて
何かを取り出しました
そして
「これを買ってください」
と・・・・
差し出しました
それは大きな箱に入ったチョコレート
私は今忙しいので他を当たってくれと言いました
そして
私は有無を言わさずドアを閉めて
再び仕事に取り掛かろうと、樹脂の入ったバケツに手をやりました
すると
ピ〜ンポ〜ン
またです・・・
ピ〜ンポ〜ン
またやってきました
私が振り向くと
なんと彼女は勝手にドアを開け
私をじ〜と見ているのです
「今仕事中、見たらわかるでしょ?」
私は言いました、しかし・・・・
「こ、これを見てください!」
彼女はなにやら写真のアルバムのような物を手にもち
それを開けて
私に向けているのです
しかたがない
私はそのアルバムを見ました
そこには
どこかの国の子供達が
飢餓状態になっている写真がうつっていました
「この、チョコレートはね・・・・」
「このおなかをすかせた子供達が・・・・」
「一生懸命作ったチョコレートなんです!!」
「本当に!本当に!がんばって作ったんです!!」
彼女の瞳は潤んでいました・・
今にも泣き出しそうです
さらに彼女は叫びました
「だから!だから!この子供達のおなかをいっぱいにするために!」
「このチョコレートを買ってください!!」
私は一瞬揺らぎましたが・・・
ひとつ8000円という法外な値段もさることながら
明らかに
背後にある闇を感じ取りました
私はきっぱりと断りました
ボランティアというものは
まずは信用が第一
彼女にはその信用がありません
私の対応に彼女は
大きな音をたてながらドアを閉めて帰りました
まるで鬼畜や人でなしを見るような
軽蔑しきった
視線を残して・・・・
しかし・・・・
私は言いたい
そんなに子供達がおなかがすいていると言うのなら
「自分たちが作ったチョコレート食ったらどうなんだ?」
安っぽい芝居では金は集まらんよ・・・
・・・・と、私はすでにカチンコチンに固まったバケツを手にしながら思いました・・・
しかし・・・
今彼女はどうしているでしょう?
もしかして・・・いまごろ・・・
「カテジナさんになっているかもしれません」
少し心配です・・・・・
完
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