巫女コンテスト

さや:『未婚?へー、鷹羽チャン未婚なんだー。』
鷹羽:『未婚じゃなくて、巫女コンよ。それにアンタだって未婚じゃない!?』
さや:『むぅ、世の中にはあたしみたいな女の子に萌えを感じる人も多いんだからっ!』
鷹羽:『あら、そうかしら?今の殿方は大人の色気に弱いのよ。つ・ま・り・私(わたくし)みたいな・・・。』

鷹羽は澄まし顔でロングの髪の毛をかき上げる仕草を取る。

さや:『何よ!』
鷹羽:『何さ!』

美琴:『ま、まぁまぁ二人とも落ち着いてください。今日はお客様に巫女コンの説明をするんですから。』

さや:『だいたい鷹羽チャンはね、もうオバサンなの!そういうのはいかず後家って言うんだよ!』
鷹羽:『(ムカッ)まぁ失礼な!アンタも毎日あんなにバクバク食べていて、一体栄養は何処に行くのかしら?まるで子供ね、そのム・ネ。』

鷹羽はさやの胸と自分の胸を交互に見比べる。

美琴:『ふ、二人とも・・・こりゃダメだ・・・応援要請!』

さや:『さや、子供じゃないモン!!』
鷹羽:『ふふふ・・・。』

さやの顔とは対照的に、鷹羽の表情は常に余裕を保っている。持久戦になれば鷹羽の方が断然有利なのだ。

さや:『なんか、スゲーむかつくっ!』
鷹羽:『しょせん、お子ちゃ・・・。』
?:『いいかげんにしなさい!!』
さや:『はにゃ!?』
鷹羽:『くっ・・・。』

突然の一喝に、その場の空気が凍りつく。

美琴:『やっぱり円香ちゃんの一喝は効くねー。私じゃどうにもならないもん。』
円香:『まったく・・・あなた達はいつもそうなんだから。二人ともこっちに来なさいっ、お仕置きよ!!』
さや:『えー、それはカンベン!この間、あれからお尻腫れちゃってパンツはけなかったモン。』
鷹羽:『わ、私もあんな屈辱を受けたのは生まれて初めてですわ・・・。』
円香:『ダメダメ!あなた達は、かるたの営業十訓を全然理解してないわ。それに反したとして、お仕置きします!』
さや:『無茶苦茶だー!』

そうこうしている間にも、円香は徐々に二人との間隔を狭めてくる・・・捕まったら最後だ。

鷹羽:『(ピーン)←ひらめき』
さや:『どうしたの、鷹羽チャン。』
鷹羽:『しっ・・・静かに。さや、私に良い考えがありますわ。』
さや:『なになに?』
鷹羽:『まぁ見てなさい。』

円香:『ウフフフ・・・二人とも観念したのかしら?さて、今日は何をしようかな・・・すねギロチンに電気イス・・・梅干地獄にアイアンメイデン・・・。』

円香の目は、徐々に人としての理性を失おうとしている。
そこへ、鷹羽の正義(悪魔?)の一喝が轟く。

鷹羽:『円香さん、常連の田畑さんが来店したらしくてよ!!』

円香:『なにーーーーー!!』

円香は、鬼の顔を普段の営業スマイルへとすり替え、田畑を笑顔で迎えようと店の入り口までダッシュした。

鷹羽:『ふぅ・・・やれやれ。』
さや:『はぁ・・・でも都合よく田畑さんが来店してくれて良かったー。』
鷹羽:『あぁ、あれはウ・ソ。』

鷹羽は、人差し指を立て、ウインクしながら言った。

さや:『ヴェッ!?そ、それじゃあ・・・嘘だとわかったら円香っちは・・・。』
鷹羽:『・・・怒り狂うわね。だから逃げるの!』
さや:『ま、待ってよー!』

その頃・・・。

蒼葉:『今日も平和だね〜。』
睦月:『暇すぎるのもどうかと思うけどねぇ・・・。』

蒼葉と睦月は、カウンター内でグラスやコーヒーカップやコーヒーソーサーなどを丹念に磨いている。

円香:『はぁはぁ・・・睦月ちゃん。た、田畑さん来店したって?』
睦月:『ああ、田畑のじいさん?いんや、今日はまだ来ていないみたいだね。』
円香:『ヴェッ!?だって鷹羽さんが、来店したって・・・。』
蒼葉:『た〜ぶ〜ん〜、それは円香ちゃんが騙されたんだと思うよ〜。』

蒼葉は相変わらず間の抜けたような口調だ。
その言葉を聞いて、円香は顎が外れそうになる。

刹那。

ぶちぶち!ぶちぶちぶち!!

突如、円香のトレードマークのリボンが砕け散った!!
これは円香の怒りが頂点に達した印であり、一つで50%怒り、二つで120%怒りとなる。
・・・と、同時にリボンは円香の鬼としての封印を抑制しているモノでもあり、これが外れてしまっては、完全に鬼として目覚めてしまう。

円香:『あんにゃろーーーーーーーーーーー!!!!』

円香の髪の毛は、まるで紅蓮の炎のように舞い上がっていた。

蒼葉:『始まったね〜。』
睦月:『何のん気な事言ってんだい!?千穂、千穂は何処だ!』
蒼葉:『あ〜そ〜こ〜。』

千穂はテーブル席の椅子に正座している。

睦月:『ブッ!千穂、何のん気に茶なんか啜ってんだい!?』
千穂:『ふむ・・・今日の玉露は良い味が出ている。きっと田畑のご老体も満足するであろうな・・・む、どうした?睦月殿。』
睦月:『千穂、アンタ今の状況判ってんのかい!?』
千穂:『ああ・・・今日の玉露は良い味が出ている。・・・素晴らしい状態だと思うな。』

・・・ダメだこりゃ。

睦月:『・・・と、なると。あと頼りに出来んのは・・・。』

麻法子:『お、おはようございます・・・。』
丁度良いタイミングで麻法子がやってきた。
睦月:『おはよう麻法子!あんたたしか魔法使えたよね!?』
麻法子:『えっ・・・た、たしかに私は魔法愛好会の部長ですが・・・。』
睦月:『部長さんの力を是非見せとくれっ!』
麻法子:『えっ、えっ!?そ、そんな・・・一体・・・な、何をすれば良いんですか?』
睦月:『円香さんの封印を鎮める。』

麻法子:『え・・・?えーーーーーーーーーーーーーーー!!??』

麻法子は、今迄で一番大きいと思われる声を発した。
麻法子:『そ、そんなムリですよ。ち、千穂さんはどうしたんですか?た、たしか鎮魂の鈴をお持ちでしたよね。』
睦月:『だめだ・・・千穂は【グリーン・ティー・ブレイク・タイム】に突入しているからね。』
麻法子:『あらら・・・。それじゃ、だ、だめですね・・・。』

ピーン!

そこへ、何か電波のような物を感じた。

睦月:『こ、これは美琴さんの【お越し下さい電波】!』
麻法子:『わ、私も感じました・・・。』
蒼葉:『電波〜。』
睦月:『きっと美琴さんが助けを呼んでいるんだよ!』
麻法子:『は、早く行きましょう。』
蒼葉:『ごぉごぉ〜!』

その頃・・・

美琴:『お越し下さ〜い。』
美琴は頭のアンテナ(髪の毛)から、しきりに電波を飛ばしている。

睦月:『美琴さん!』
美琴:『睦月ちゃん!それに麻法子ちゃんに・・・蒼葉さんも!?』
蒼葉:『おひさ〜。』
睦月:『だぁ−!もうのんびり挨拶なんかしてんじゃないよ!!美琴さん、何か解決策はあるのかい!?』
美琴:『そうねー・・・私の【お越し下さい電波】と麻法子ちゃんの【待ち人遅く来るの魔法】を合わせて田畑さんを呼ぶ事・・・ね。』
睦月:『それはグッド・アイデアだね!ならやっとくれ。』

麻法子は、【魔法大全】の156ページ【待ち人遅く来るの魔法】を開く。
正直な話、麻法子は魔法が使えない。
しかし、日頃から訓練に訓練を重ねているのでそろそろ使えれば良いなぁ・・・とは思っているのだが。

美琴:『麻法子ちゃん、行くよー!』
麻法子:『は、はいっ。』

二人は願った。月に、神に、そして田畑に。
睦月も一緒に祈りのポーズをとった。
蒼葉はただ見ているだけだった。

そこへ・・・。

チリンチリン。

田畑:『こんにちは。お邪魔するよ。』

奇跡は起こった・・・それは偶然なのか?それとも必然なのか?それは誰にも判らない。

美琴:『田畑さん!』
睦月:『田畑のじいさん!』
蒼葉:『ぐらんどまざ〜。』

田畑:『いや、ご無沙汰。やっと体調が良くなってきたんだよ。そしたら、ここのお茶が飲みたくなってね〜良くなったから欲が出たって感じかな。』
美琴:『ふふふ・・・田畑さん、面白いー。』
田畑:『それに皆に会えるしねぇ・・・。そう言えば、円香ちゃんはどうしたんだい?』

田畑は円香をえらく気に入っている。孫に似ている・・・とか、何か理由があるようだが、ここでは語らない。

睦月:『あ、そうだ!じいさん、こっちに来てくれ!!』
田畑:『どうしたんだい?』

睦月は田畑の腕を取り、鬼がいる場所へと導いた。

その頃・・・従業員更衣室内にて

さや:『鷹羽チャン・・・どうするの?円香っちがどんどん近づいてるよ!!』
鷹羽:『大丈夫・・・きっと奇跡が起きますわ・・・。』
さや:『そ、そんなこと言ったってー!!(あせあせ)』

円香(鬼):『逃げても無駄よー。ウフフフ・・・。』

円香は、更衣室のドアノブに手をかけた!その瞬間。背後から誰かの声が聞こえた。

田畑:『円香ちゃん、ご無沙汰だね。元気だったかい?』

それは田畑であった。
その言葉を聞いて、円香の鬼としての表情は消え去り、普段の飛びきり美しい営業スマイルへと変貌を遂げた。

円香:『田畑さん!ご無沙汰しておりますっ!!』
田畑:『どうしたんだい?何か怒っていたようだったけど?』
円香:『そ、そんなことありませんよっ!へへへ。』
田畑:『そうかい?それじゃあ、いつもの玉露を頼むよ!』
円香:『は、はいっ!すでに千穂もスタンバイしているみたいですから、田畑さん、こっちへどうぞっ!』

田畑は円香に手を引かれ、店内の方へ戻っていった。
(ちなみに、鬼の円香を知っている者はお客にはいない)

麻法子:『や、やれやれですね・・・。』
睦月:『危機一髪だったねぇ・・・。それにしても、美琴さんも麻法子もお疲れ様。』
蒼葉:『わたしは〜?』
美琴&麻法子&睦月:『あんたは何もやってない!』
蒼葉:『うにゅ〜ぅ。』

ガチャ。
更衣室のドアが開いた。
鷹羽:『あら?皆さんお揃いで。』
さや:『ふぅ〜、危なかったぁ・・・。』
睦月:『ちょ、ちょっとアンタ達、なんでそんな所に隠れていたんだい!?』
鷹羽:『例によりさやをからかってたら、突然円香が怒り出したのよ。私達にはどうにもならないからアソコに隠れていたんですわ。』
麻法子:『じゃ、じゃあ、今回の騒動の発端って・・・。』
鷹羽:『ト・ウ・ゼ・ン・私ですわ〜。オーッホッホッホッ!!』
睦月:『つ、ついて行けん・・・。』
美琴:『だね。』

さや:『これにて一件落着!でも何か忘れているような気がするけど・・・まぁいっか。』

かくして【巫女喫茶かるた】の崩壊は免れたわけだが、本来の目的を忘れている事に鷹羽もさやも気付いていない。
・・・と、言うことで【巫女コンテスト2】へ飛んでください!!


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