1

今日は朝から調子が悪い。何と言うか……うん、これは二日酔いだ。
そんな高校生とは思えぬ失態の残滓を噛み締めながら受けた授業が身に入るわけでもなく、ただ刻々と時は過ぎ、あっという間に放課後になってしまった。
「……今日は何しに来たんだろ?」
響く頭を押さえ、そう呟きながら、新橋は狩穂高校部活動掲示板までやって来た。

2

狩穂高校は、大きく分けて四棟の建物があり、普通に授業を受ける一般教室棟で一つ、音楽やら家庭科やらを受ける特別教室棟で一つ、後は体育館と部室棟で合計四つ。
今、新橋が居るのは、部室棟の一角にある部活動掲示板である。
そこには、それぞれの部活動の連絡事項や活動予定が明記されている。
部活動の盛んな狩穂高校の部活動の数は、約五十。公式なものを含めない同好会や愛好会を含めると、その数は倍になると言われている。
それ故、まだ不慣れな新橋にとっては、新聞部の項目を見つけることすらままならない。
仕方なく、一つ一つの項目を目で追っていると、一際目立つ流麗な文字で書かれている箇所を見つけた。
「(へぇ、綺麗な字だな。一体何処の部だ?)」
……と、感心したのも束の間、項目を見ると、何と<新聞部>のものではないか!

『本日、午後四時から部室にて、緊急の会議を行う』

「……」
新橋は、昨日の事をはっきりと覚えていなかった。
かろうじて覚えていることと言えば、藤枝がやたら酒豪なこと、活動内容は緊急時以外常に掲示板にて行うこと、ここは<新聞部>ではなく<裏新聞部>であること。
新橋は、千葉の<裏新聞部>と言うセリフが気になっていた。
普通<裏>と言うと、限りなく悪いイメージと香りがする。身の危険さえ感じる。逃げようか。今ならまだ引き返せる。そうだ、幸いまだ入部届けは出していない……

「あ、あれ?」
新橋は、入部届けを入れておいたはずの制服の胸ポケットを探ってみたのだが、何故かその紙の感触がない。
落としたのか?持ってくるのを忘れたのか?それとも……新橋の脳裏に嫌な予感が走った。

3

「これでどうだ?」
「うん。相変わらず達筆だね。さすが書道の有段者」

部活動掲示板に居るのは、藤枝と南町田だ。
藤枝は、その見た目から判断できないくらいに、字が上手い。だが、当の本人は決して納得することはなく、常に自問自答を繰り返している。
「新橋君は正式にウチの部に?」
チョークを置き、汚れた指先をハンカチで拭いながら藤枝は答えた。
「うむ。新橋の入部届けは今日付けをもって正式に受理されたらしい」
藤枝は眉間に皺を寄せて続けた。
「……と、言っても千葉が泥酔した新橋の胸ポケットから掏ったらしいがな。全く、毛ほどの油断も許されぬ女だ」

4

「孝太郎君は今日来るの?」
千葉は頬杖をつきながら宮本に問うた。
新聞部の部室には、新橋以外の五人が、それぞれ椅子に座って本を読んだり、資料を作成していたりしている。
「ええ、先ほど部活動掲示板の前に佇んでいましたから、連絡事項は認識していると思います」
宮元は黒い手帳をペラペラとめくりながら言った。
「アンタ……気付いているなら声ぐらい掛けてあげなさいよ」
「この部内では、あくまで私はデータ管理担当……それを実行する必要も義理もありません」
「まぁ……そうだけどさぁ」

「ねぇ、亜佐美ちゃん。もう四時になるよ」
勝己はペーパーバックを閉じ、千葉に向かって言った。
「ま、来るにしろ来ないにしろ、こっちには入部届けがあるからね。実質的、彼の放課後を拘束したと言っても過言じゃないわ」
「亜佐美ちゃん、気合い入っているねぇ」
「そりゃ、そうよ。なんてったって、もうすぐ中間考査!数少ない利益のチャンスじゃない!!」
千葉は席を立ち、握り拳を上げながら、叫んだ。
「そのためには、一人でも良いから人数が必要なんだよね?」
「そうそう!良く判っているじゃない?時雨ちゃん」
「いつも聞いてるからねぇ」
勝己は肩をすくめながら言った。
「そうだったっけ?」

コンコン

ふいに、扉をノックする音が聞こえた。
無論、千葉にはその主の正体が予想できていたが、あえてこう答えた。
「誰ですか〜?」
「新橋です。ちょ、ちょっとお話が……」
さっそく来なすったか。本当は勝手に入部届けを掏って、もうちょっと怒っているかと思ったら、声に抑揚感がない。
意地悪な千葉は、あることを見抜き、ちょっと虐めてみようと思った。
「はい、は〜い。鍵は開いてるからどうぞ」

数秒して、<新聞部>の扉が開け放たれる。

「こ、こんにちは」
「いらっしゃい、孝太郎君。我が<新聞部>へようこそ♪」
満面の笑みで迎える千葉一行。しかし、藤枝に限っては下を向いて黙々と何かの作業を進めている。
そんな皆の姿に圧倒されつつ、新橋は何とかこれだけ口にした。
「あ、あの入部のことなんですけど……」
「え、入部?だって君はもうすでにここの部員よ」
「……えーと、入部届けをまだ正式に出した覚えがないんですが……」
どこかに落とした、または持ってきていないと言う方に期待を託していたのだが、いつも話は悪い方向へと進んで行くものである。

「入部届け?それなら……はい」

千葉は青いスクラップブックを取り出し、一枚の入部届けを取り出した。
「それはっ!」
たしかに、自分の字であった。偽装なら何とでも出来るかもしれないが、文字を極端に丸く見せる癖を持っている新橋の文字そのものであった。
ご丁寧に教員提出用の半分は切り取られており、学生保管用の、もう半分を見せてくれる。
と、言う事は、教員側に正式に受理されてしまったと言うことか!
「勘違いしないでね、孝太郎君。これは君が受け取ってくれと懇願するから受け取っただけのもの。こちらから強制はさせなかったし、頼んでもいなかったわ」
「それなら……それはなかったものとしても宜しい……ですか?」
一縷の望みをかけ、新橋は問うた。
そんな質問に、微笑を浮かべながら千葉は答える。
「孝太郎君……入部届けは受理された時点から入部が確定する。入部した部活には最低一年間在籍しなければならない……だったよね?蓮華」
「はい……狩穂高校の校則ではそうなっています」
宮元は、いつもの黒い手帳ではなく、自分の生徒手帳をめくりながら答えた。

「そ、そんな!……で、でもやっぱり記憶が!!」
あたふたする新橋の後ろに、南町田がスっと背後に回り、こう耳打ちする。
「孝太郎君。千葉さんを怒らせるのは止めた方が良い……今は同意しておいた方が君の為だと思うけどね」
敵か味方か、南町田はそう囁く。
新橋の喉を唾が通り抜ける。
「怒らせるも何も、僕は怒らせることなんてしてな……」
「孝太郎君?」
新橋の独り言を制し、千葉は脅迫染みた言動で、新橋の名前を呼ぶ。
その言葉に射抜かれ、最後にはこう言わざるを得なかった。

「よ、宜しくお願いいたします……」
その言葉に、千葉は改心の笑みを浮かべたように思えたのは気のせいだろうか?

5

「はぁ〜、何でこんなことになっちゃったんだろ。<新聞部>とは形ばかりで、実際の活動は意味不明な犯罪行為じゃないか」
新橋は、夕景の差し掛かった家路の途中に、すでに七回の嘆息を漏らしている。
千葉は、新橋自ら入部届けの受理を頼んだと言っていたが、どうも納得できない。本当は千葉が勝手に持ち去ったのではないか?と考えていたのだが、昨日のことはもう覚えていない。
「やっぱり、渡しちゃったのかなぁ……」
八回目は、天を仰いで溜息を漏らした。
まあ、それは百歩譲って良いとしても、本当の問題は、その活動内容だ。

6

観念した新橋は、勝己から手渡されたパイプ椅子に腰掛ける。
「よ〜し、ほいじゃあ役者も揃ったことだし、会議を始めようか」
「そうですね。私、待ちくたびれました」
「あたしも〜」
千葉と新橋のやり取りに、小閑の時を過ごしていた宮元と勝己にも、ようやく気合いが入る。
「うむ。俺の方も区切りがついたぞ」
今の今まで机に噛り付いていた藤枝は、大きく体を伸ばし、肩をならす。
「お疲れ、貴一君」
「すまんな」
そんな藤枝に、南町田はスポーツドリンクを笑顔で差し出した。
まるでCMの一コマを見ているような気分になった。だが、共演者のせいで全てが台無しになっているような気もした。

「まず、これを回してちょうだい」
千葉が皆に差し出したのは、約六枚程からなるリポート用紙の束である。
配られたリポート用紙の表紙に目を向けると、大きな赤い文字で<秘>とだけ書かれている。
「(何だこれは)」
そう心で呟いた新橋の心理を読み取ったかのように、千葉はこう切り出す。
「孝太郎君。君は新入部員だから説明しておくけど、このリポートは無断転載、複製の禁止。および紛失も一切認められないわ。でももし、無くしたとかなんとか言った場合には……」

こ、と言う形の口をした千葉を、藤枝が制す。

殺す?

「止めろ、千葉。世の中には言って良いことと悪い事がある。今、お前が口にしようとしていた言葉は限りなく後者に当たる」
「はいはい。まったく藤枝は相変わらずカタイわねぇ……冗談に決まっているじゃない」
いや、そうは見えなかった。むしろ本気だった。
とは、とても新橋の口からは言えなかった。
「安心しろ、新橋。幸いこの部室には金庫があってな。もし管理に自信がない場合には、そこで預かってやろう」
「は、はぁ……」
部活動によっては、金庫があること自体珍しくないかもしれないが、この雰囲気はなんだ。明らかに変じゃないか?
……と言う疑問はよそに、会議は刻々と進められる。
「じゃあ、一枚目をめくってみて」
言われて、皆がめくるのを真似て新橋もめくる。
そこには、スケジュール表みたいなものが書かれていた。
五月十五日(初日)数学、化学、公民。五月十六日(二日目)国語、英語、家庭科。五月十七日(最終日)保健体育、物理、地理……

なんだ、見るとこれは中間考査の予定じゃないか。いや、それ以前に<新聞部>にこのような情報が必要あるのか?
「あの…何ですか?これは」
「質問は後で一斉に受け付けようと思ったけど……まぁ良いわ。見ての通り、これは中間考査の予定よ」
「いや、そうではなく……」
その先が知りたいのだと、態度で示唆していると、千葉はそのまま続ける。
「今日は五月の八日。つまり中間考査の一週間前。明日からテスト勉強期間と言うことで、部活動は一切禁止となるわ」
「……じゃあ、<新聞部>もお休みになるんですか?」
「ちっちっち。孝太郎君、それは違うな。<新聞部>の今回の活動は、このテスト前一週間が本番なのよ」
千葉は立ち上がり、両手を机に叩きつけながら力説した。
「そう……明日からここは<裏新聞部>となるのよ!」
昨日の飲み会の時も言っていた<裏新聞部>と言う言葉……それは一体何なのだろうか?

7

「蓮華、周りに誰か居る?」
椅子に座りなおした千葉は、宮元の方を向き、尋ねる。
「ええと、右隣のラグビー部はグラウンドで練習中。左隣の現代ライトノベル研究会は、本日はお休みです。生徒会の邪魔もこの時間なら入らないかと」
「そう、ありがと」
とは言え、先ほどよりもずっとトーンダウンした声で語る。
「……じゃあ、二枚目をめくって」
言われた通りにすると、二枚目には三人の教師の個人データと顔写真が明記、貼付されていた。

数学教師、陣内武時(じんないたけとき)。四十八歳、妻子持ち、性格は几帳面。癖は鼻歌。テスト用紙はパソコンのデータ上にある。
化学教師、伊達京一郎(だてきょういちろう)。三十六歳、独身、性格はネチネチ。掃除が苦手。テスト用紙は自分の机の鍵のかかっている引き出しの中にある。
公民教師、川本司(かわもとつかさ)。年齢不詳、妻子持ち、性格はアバウト。いつも笑顔を絶やさない。テスト用紙は教師用個人ロッカーの赤いスクラップブックに閉じてある。

三枚目、四枚目……と、同じように各教師のデータが並んでいるようだ。
気になる点と言えば、これらの教師が全て三学年担当であること。何故か家庭科と保健体育の教師の名前がないこと。最後にテスト用紙の在りかが記載されていることだが……

「どう?何か気付いた事ない?」
千葉が新橋に向かって聞いてくる。
嘘をついても仕様がないし、新橋は思った通りに答えた。
「え……テスト用紙がどうこうってことですか?」
「うん!そうそう。良く気付いたわね」

次に千葉の発しようとする言葉が大体予想できた。つまり……
「テスト用紙を盗み出すことが今回の仕事よ!」

「……」
呆気に取られた。もはや<新聞部>の活動ではないではないか!
「ちょ……ちょっと、新聞の製作はどうするんですか!僕はそれが楽しみでここに入ってきたのに……」
新橋は声を思わず震わせて語った。
「ん?それなら……藤枝?」
千葉は視線だけを向け、説明しろ、と言わんばかりに藤枝を睨みつける。
「うむ。これを見ろ」
そう言われて藤枝が掲げて見せたのは、狩高新聞の原稿であった。
「えっ!」
「孝太郎君、昨日私はこう言ったよね?ここは<新聞部>じゃなく<裏新聞部>だって。無論、私もちょくちょく取材には行くわよ?ねぇ蓮華」
「そうですね……以前取材した<美味しいコーヒーの出す喫茶店>の記事は良い反響を得ています」
とは言え、勝己が一言。
「でも、それぐらいだよねぇ。他の記事や写植、実質的な本当の活動はほとんど貴一君が担っているよね?」
「はいそこ。よけいなこと言わない」
千葉がピシリと冗談めいた叱声で勝己を制す。
「ま、孝太郎君がどうしても新聞を作りたいって言うのなら、藤枝を手伝ってちょうだいな。新聞なんて、生徒会から部費を頂戴するために出してるようなもんだしね」

ははは、と笑いがこぼれる<裏新聞部>の部室。
新橋は冷静になって今の現況を整理してみる事にした……。
つまり、ここは学校内における部活動と言う言葉を悪用した軽犯罪組織であること、新聞作成はあくまでオマケであること、そしてこんな部に入ろうとした自分がバカだったということだ!
逃げたい!逃げたいが……
「あ、そうそう……孝太郎君。判っているとは思うけど……このことは決して他言しちゃだめだからね♪」
悪い子を正すような口調と笑顔で、新橋に語りかける。
その横で、宮元がタイミングを見計らって手帳をめくる。
「そうですね……以前にここの部活動の行動を暴露しようとした生徒は……」
想像を絶する内容であった。改めて、<裏新聞部>の面子を見直す。こ、この温和そうな人がそんな酷い事を……
「……と言う件もありました。つまり、この学校に居れなくなるのは必然ですし、下手をすればこの町にも居れなくなるでしょう」
こ、この宮元と言う先輩は、いとも簡単にそんな卑劣なことをペラペラと……
思わず身震いした。

「そんな不安そうな顔をしないで孝太郎君。上手くやればそれなりの報酬は出すんだから。オカネが稼げるような部活動って、そうないんじゃないかな」
お金?何故お金の話が出てくるんだ?
「お金って……どういうことですか?」
消沈しつつある新橋は、蚊の鳴くような声で問うた。
「さっきのリポート内の教師のデータが、全部三学年の担当となっているでしょう?」
「ええ……」
「つまり、三学年の生徒は大学受験のために必死な一年になる。出来るだけ推薦を獲得したいがために、内申書の高評価は十分なツールになる……その高評価の源を如実に表したのが、中間考査と期末考査。良い点を取るためには、大枚はたいてでもテスト用紙は欲しいと思うけどね。そうそう、付け足しておくけど、家庭科と保健体育に至っては平均点が高いと予想されるから今回のターゲットには入ってないわよ。誰でも良い点数が取れる科目のテスト用紙は高値で売れないからね」
千葉は得意顔で語った。

「…………」
ぐうの音も出ない。この千葉と言う女性の本質を知ってしまったような気がする。

「蓮華。今回の仕事の予想利益はどれくらい?」
「ええとですね……」
なんと、その手帳には小型の計算機まで付いているのか。
「単純計算ですけど、三学年の生徒約四百人かける七教科、一部千円で売りさばいた場合は……これぐらいですか」
宮元は計算済みの計算機を千葉に見せる。
「う〜ん……ちょっと足りなくない?四百人の生徒のうちにも、不正行為はダメって駄々をこねる困った君がいるじゃない?四百人じゃなくて三百五十人を見積もったとしても、一部千円は安い。むしろ、テスト用紙を分割、もしくは一題ごとにするとか……」
「そうすれば、たしかに利益は倍増するね!」
「倍増どころじゃないわ。四倍五倍を狙うわよ!!」

トレジャーハンティング顔負けの千葉の瞳は、そう結論付ける。

「……と、もうこんな時間か。質問もないなら、私、これからスタジオで練習があるんだ。明日も今日と同じ時間で会議をするからね。南町田、時雨ちゃん、資料お願いね」
「判っていますよ」
「あたしも了解」
その答えに満足しつつ、千葉は背を向け、手をヒラヒラながら部室から出て行った。
ん?何だあれは。
右手を挙げて、制服から手首があらわになった千葉の手に巻かれているのは、赤い色をしたリストバンドであった。

8

「さて、俺も一仕事終えたことだし、帰るかな。新橋、そのリポートはどうする?金庫に預けておくか?」
「え?あ……家でもうちょっとじっくり見たいので、持って帰ります」
「そうか。それなら無くさないように気をつけてな」
藤枝は十分に念を押して、部室から出て行った。

「じゃあ、僕も帰るとするかな。時雨ちゃん、帰りにどっか寄って行かない?」
「いいねー!じゃあ、ついでに本屋さんにも行っていい?」
「勿論。それじゃあ、行こう。宮本さん、新橋君。それじゃ、また明日」
「ばいば〜い!」
そう言って、南町田と勝己も共に帰っていった。

そして、この部室に残ったのは、宮元と新橋。
短い沈黙の後、最初に切り出したのは、宮元の方であった。
「新橋君。びっくりしたでしょう」
「そりゃそうですよ!だって、これから犯罪の片棒を担がされるのでしょう?」
「それはそうだけど……世の中は、流れに逆らうよりも、その流れに乗った方が頭の良い生き方なのよ」
宮元は窓の外を眺めながら、呟き加減に喋った。
「み、宮元……さん」

「あ……っと、ちょっとお喋りが過ぎたようね、私としたことが。じゃあ、私は部室の鍵を返しに行くから、先に帰って良いわよ」
半ば強制的に外に放り出された新橋は、宮元の言動に少々納得がいかない感じがした。
「(流れに逆らうよりも、乗った方が……か)」
新橋の帰路は、<裏新聞部>の活動に対しての怒りと、宮元の言動の反芻で頭が一杯であった。
沈んでゆく夕日に、いくつもの不安要素を抱え、一つ溜息を漏らしていた。